【池谷のぶえの「人生相談の館」】第58回 秋草瑠衣子さん(演出家・俳優・作家・PUNKBANK主宰)
むしろこっちが人生相談したい気持ち満々のコラム、「池谷のぶえの人生相談の館」です。
2022年になりましたね。みなさま今年もよろしくお願いいたします。
ナイロン100℃「イモンドの勝負」も無事全公演を完走することができました。ということで、しばらく会えていなかった方々と年末年始の集いでも…と思ってたら、またまた日々大変な人数の感染者数になってしまいましたね。
実家にだって帰りたかったし、居酒屋のびえもたくさん開催したかったし、生ガキだって食べに行きたかったし…公演期間中は日常に戻りつつある街の様子を羨ましく思い、終わったら終わったで、また日常に戻れない…いつよ! 演劇人はいつ日常感を味わえんのよ!
あ! 劇団「日常」を旗揚げして、舞台上でただただ日常を過ごせばいいんじゃない? いや、でもお稽古中は日常を羨ましく思いながら我慢して過ごさなければならないのか…。
もはや、なんなのお稽古って!? 必要なの!?
必要じゃよ…
あ! 演劇の神様!
生ガキの神様じゃよ…
生ガキの神様が、なぜ演劇のお稽古のことなんかわかるんですか!
演劇をやっている人間たちの念のうちの60%は、「公演終わったら生ガキが食べたい」というものなんじゃ…だから、わしらも演劇のことはいつも気にかけているんじゃ…
そうなんですね…見守って下さってありがとうございます。それで、なぜお稽古が必要なんですか?
生ガキのことしかわからんのじゃ…
え、さっき必要じゃよ…って
気にかけとるんじゃ…
それはありがたいと思っています。必要な意味を教えていただけませんか。
意味は必要なのかな…?
…え
意味を知ったところで、稽古はなくならないのじゃ。稽古をしたくなければ、生ガキをたくさん食べればいいのじゃ。
劇団「日常」旗揚げ公演、「老☆婆(オイスターバー)」のオープニングから抜粋いたしました。この後5時間、押し問答が続きます。
やらないわよ! そんなの! つまんなそうな劇団名とタイトル!
さて今回は、演劇のことよりも生ガキのことばかり考えている私が答える資格などないご相談です。
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この度は、こんなペーぺーにお声がけ頂きありがとうございます! 恐縮です。
のびさんには、5年ほど前に舞台でご一緒させて頂いて以来、なにかと気にかけて頂きお世話になっております。いつもありがとうございます。私も好き嫌いがハッキリしてる性格だし、多分それがモロに外面に出ていたのでのび先輩は心配して下さったのかな…なんて思っています。(ちがったらすみません)楽屋に呼んでくださったり、お家に呼んでくださったり、甘えさせて頂いております。ラブです。
では、相談させて頂きます!!
“甘えさせて頂いております”と書いたように、私は甘えん坊です。家族の中でも末っ子だし、9人いるイトコ達の中でも末っ子だし、みんなに甘やかされて育ってしまったんです。お仕事でも、のびさんとお話しする時みたいに先輩たちと一緒にいるほうが楽しいし好きです。プライベートでも目上の方と話す時間は楽しいと感じます。しかし、年齢や仕事の役割的にも最近は若い人たちと関わることが増えてきて、どうやって人生の先輩として振舞ったらいいのか全然分かりません。彼らに何かを教えてあげられるほどまともに生きてきた瞬間が全然なくて、どうしたらいいかわかりません。
私にとって“素敵な先輩”であるのびさん、こんな甘ったれた奴がどうしたら素敵な先輩になれるでしょう…。何か良いアドバイスをよろしくお願いします。
秋草瑠衣子さん(演出家・俳優・作家・PUNKBANK主宰)
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るいちゃんとは、数年前の野田地図でお知り合いになりましたが、元は宝塚歌劇団出身という経歴も持ち、女優業がメインなのかと思いきや、自分たちで活動の場も産み出したり、外国に滞在してみたり、若い方たちの演技指導などもしている…と思いきや、SNSではマグマのようなものを常に抱えていて、いろんなことに憤りつつも希望を見出そうとしている…という、いろんな種類の花火セットのような女性だなぁと感じます。
るいちゃんは自覚しているかしていないかはわかりませんが、るいちゃんの中には情熱がたくさんあるのですね。
情熱のほとんどない私的には、情熱を持っている方のことが気になって仕方ないので、きっといまもご縁が続いているのでしょう。
そんな私ですから、もしるいちゃんが私のことを“素敵な先輩”と思ってくれてたとして、その“素敵な先輩”は数十行前にも書いたように、主に生ガキのことを考えていたりします。
もちろん、生ガキのことをほとんど考えず、常にお芝居のことや世の中のことや周りの人々のことを丁寧に考えている素敵な先輩方もたくさんいるとは思うのですが、残念ながら私はそうした部類ではないので、私の範囲でお答えさせていただきますね。
まずは、甘えることができるというのは素晴らしい才能であり、財産であるということ。
これはセンスと似ていると思います。後から補おうと思っても、なかなか大変な部類の才能。
そして、甘えるということは、特に目上の方だけにそうしなくてもいいのではないか…と思うのです。
私も50歳になり、必然的に先輩としての立場も多くなってきていますが、できなかったり、知らなかったり、頼りたかったりといったことを、自分よりも若い人たちに寄りかかることが楽しくなってきました。
甘えることを、ひとつのコミュニケーションとしているところがあります。
とはいえ、元来私は「甘えたら嫌われる」という信条の持ち主なので、センスではなく無理やり甘えているところもあります。
るいちゃんの場合は、既にそのセンスがあるわけですから、若い方々にもあえて甘えてみてはどうでしょうか。
どんなに先輩だとしても、尊敬できない部分があればそれは尊敬できませんし、どんなに若い方だとしても、尊敬できる部分があればその部分は立派な先輩なのだと思います。
私からしたら年齢的には年下のるいちゃんですが、またなにはじめたの!? という尊敬がその都度あります。
一人ひとりの中に何人もの先輩や後輩がいる…みたいに思って、甘えたり、甘えたり、甘えたりしてください。
るいちゃんより少しだけ長く生きている先輩として言えることは、いろんなことはバレたり、滲み出たりするものだと思うので、いまの自分で勝負していくしかありません。
そしてそうした姿は外からみると、「素敵」に思ってくれる人がいるのだと思います。
■ラッキー待ち受け
95年と記されているので24歳の頃でしょうか。数少ない、会社での一枚です。
私の横にあるのはパソコンではありません、忘れもしない、富士通のオアシスというワープロです。時代!!
この頃は、毎朝5時に起きて2時間かけて会社に行き、夜演劇の稽古をして0時半に家に着き、また朝5時に起きて会社に行く…という生活をしていました。50歳の私より26歳も若い後輩になりますが、尊敬です。
都市計画づくりと村おこしの会社でしたが、るいちゃんがいままさに奈良でやっているようなことも遠からずで、とても懐かしいです。
るいちゃんが50歳になった時、きっといまのるいちゃんを尊敬できると思います。
■秋草瑠衣子さんの今後の予定
奈良県奈良町の古民家宿「西村邸」と、東京を拠点に活動するパフォーマンスユニットPUNKBANKのメンバー(秋草瑠衣子と末冨真由)がタッグを組み、スタートさせた新プロジェクト「ココ・デ・テアトル」。
遊休資産などを使って、町に眠る人々の“記憶”と“場所”をお借りして演劇をつくり、その土地だけの新しい表現を目覚めさせるプロジェクトです。
ココ・デ・テアトル
第2回公演「演劇と泊まる」
原作:奈良町のみなさんの体験、記憶
脚本・演出:秋草瑠衣子
演出・運営補佐:末冨真由
出演:上村聡(かみむら文庫)/的場祐太/市田有里佳/橋本沙知/西岡紗那/楠田初名/土肥麻衣子(PUNKBANK)/秋草瑠衣子 (PUNKBANK)/杉本ユウタ (西村邸)/ and more
2022年1/26(水)~30(日)
本編@西村邸
詳細 → Home | COCO de theatre (coco-de-theatre.com)
https://www.coco-de-theatre.com
ディレクター担当
エイベックス・アーティストアカデミー大阪校シアターコース
4月入学希望者対象ワークショップ
2/6(日)開催
詳細 → エイベックス・アーティストアカデミー | シアター総合コース | 大阪 (avex.jp)
https://aaa.avex.jp/theater/osaka/
【筆者プロフィール】
池谷のぶえ
いけたにのぶえ94年より04年の解散まで劇団「猫ニャー」の劇団員として活動。解散後は、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品、NODA・MAP、蜷川幸雄演出作品など数多くの舞台に出演。
[出演情報]
【配信】
岩井秀人(WARE)プロデュース「いきなり本読み! in 東京建物 Brillia HALL」(進行・演出:岩井秀人)
10月に出演させて頂きましたイベントがアーカイブ配信中!
視聴券:¥980(税込)※別途手数料が発生致します
販売期間:販売中 2021年12/9(木)13:00~12/31(金)
12/31(金)23:59まで視聴可!
https://www.ikinarihonyomi.com/movie/index.html
【舞台】
「お勢、断行」(原案:江戸川乱歩、作・演出:倉持裕、音楽:斎藤ネコ)
2022年5月11日(水)〜5月24日(火) 世田谷パブリックシアター ほか、兵庫 ・ 愛知 ・ 長野 ・ 福岡 ・ 島根 にてツアー公演あり
https://setagaya-pt.jp/performances/202205osei.html
【テレビ】
Eテレ アニメ「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」
毎週火曜 18:45~18:54
声:銭天堂の店主・紅子役
https://www.nhk.jp/p/zenitendo/ts/4NX2MRW758/
【インタビュー掲載】
WEBマガジン「CHIRATTO」 第26回特別対談 池谷のぶえ(女優)×ブルー&スカイ(脚本家)
https://chiratto.net
【コラム】
福岡のエンタメ情報誌 シアタービューフクオカ「めずらしく体調のいい日に」
https://tvf-web.com
【DVD】
イキウメ「外の道」(作・演出:前川知大)
2021年6月、シアタートラムで収録された舞台公演DVD
発売中
https://www.ikiume.jp/tuhan.html#sotonomichi
▼▼▼今回より前の連載はこちらよりご覧ください。▼▼▼
★単行本『贋作 女優/池谷のぶえ~涙の数だけ、愛を知る~』えんぶ★ショップにて独占販売中!
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