ウィーンの大ヒットミュージカル日本初演!宝塚歌劇月組『I AM FROM AUSTRIA─故郷は甘き調べ─』制作発表会レポート!
創立105周年を迎えた宝塚歌劇団が、『エリザベート』本邦初演以来長い親交を結んでいろウィーン劇場協会プロダクション作品として、大ヒットを飛ばしたウィーン産ミュージカルに挑む、宝塚月組公演 日本オーストリア友好150周年記念UCCミュージカル『I AM FROM AUSTRIA─故郷は甘き調べ─』が10月4日~11月11日兵庫・宝塚大劇場、11月29日~12月28日東京宝塚劇場で上演される。の制作発表会が8月20日都内で開催された。
『I AM FROM AUSTRIA─故郷は甘き調べ─』(以下『I AM FROM AUSTRIA』)は、『エリザベート』『モーツァルト!』など数々の大ヒットミュージカルを生み出したウィーン劇場協会が、2017年にオーストリアそのものを題材として制作した作品。オーストリアの国民的シンガーソングライター、ラインハルト・フェンドリッヒが綴った名曲に乗せて、ウィーンの老舗ホテルの跡取り息子と、オーストリア出身の人気ハリウッド女優が惹かれ合い、オーストリアの美しい街並みや自然の中で、自分の居場所を見つけていくまで「故郷」や「家族」など、誰しもに通じるテーマをハートフルに、時にコミカルに、華やかなレビュー要素満載で描いた物語となっている。
そんな期待の海外ミュージカルの制作発表会が、8月20日都内で開催され宝塚歌劇団の小川友次理事長、作品の協賛会社であるUCC珈琲株式会社上島達司会長、ウィーン劇場協会フランツ・パタイCEO、脚本・クリエイティブデベロップメントのクリスティアン・シュトゥルペック芸術監督、脚本・アイディアのティトゥス・ホフマン、宝塚版の潤色・演出を担当する齋藤吉正、そして出演者を代表して月組トップスター・珠城りょう、トップ娘役・美園さくらが登壇。華やかな大人数での会見で、それぞれが作品と公演への思いを語った。
会見はまず月組トップコンビ珠城りょうと美園さくらによるパフォーマンス披露からスタート。
暗転になったステージに、「Nix is fix」と迫力のコーラスが流れると、老舗ホテル・エードラ―の御曹司ジョージ・エードラ―に扮した珠城が照明のカットインで颯爽と登場。老舗ホテルの跡継ぎの立場でも、知恵の力で思うように人生を切り拓いて生きていく!飼い犬のように指図された人生を送るなんてまっぴら!自由に生きるんだ、Nix is fix(縛られることを拒む)、と歌う珠城が躍動。曲調自体が宝塚作品、またウィーンミュージカルのクラシカルなイメージとは一線を画す、現代的でリズミックなものだけに、珠城がステージを一人歌い踊る姿も新鮮で、一気に場は『I AM FROM AUSTRIA』への期待で膨らんでいった。
照明と曲調が変わり、珠城がその場に佇む中、人気ハリウッド女優エマ・カーターに扮した美園さくらが登場。オーストリアの第二の国歌と称され、本作品の主題歌である名曲「I AM FROM AUSTRIA」がデュエットされる。故郷を離れ、華やかな世界に身をおいて忘れてまったもの、どんなに傷ついた心も故郷が癒してくれる。私達はオーストリアの人間です、と歌い上げ、作品のテーマを伝える時間になった。
そこからステージは会見場となり、出席者全員の挨拶から、質疑応答へと引き継がれた。
【登壇者挨拶】
小川 歌劇団の小川でございます。本日はありがとうございます。まず最初に上島会長に御礼申し上げたいと思います。UCC上島珈琲様には1987年剣幸さん主演の『ミー&マイ・ガール』で冠協賛を頂き、その後天海祐希さん、瀬奈じゅんさん、そして三年前明日海りおの『ミー&マイ・ガール』でも冠を頂き、そして今回105周年の宝塚歌劇にご協賛頂きました。宝塚を愛して下さり、文化をご後援賜ることに心から御礼申し上げます。そして今回ウィーン劇場協会CEOのパタイ氏、そして芸術監督で今回の脚本の著作者でもあるシュトゥルペック氏、アイディアと脚本も書いていらっしゃいますホフマン氏のお三方がウィーンからわざわざ来て下さいました。本当にありがとうございます。ウィーン劇場協会様と宝塚歌劇は皆様ご存知の通り、1996年の『エリザベート』以来のご縁で、本当に我々がリスペクトすべき作品を輩出されております。私個人と致しましても、梅田芸術劇場時代の2007年にウィーンから『エリザベート』の来日公演を招聘させて頂いておりまして、今日の会場にも関係者の方々がいらっしゃいますが、当時からお世話になっております。今回、オーストリアと日本の友好150周年、また宝塚の105周年の時にこの月組で宝塚大劇場では秋の一番良いシーズンに、また東京宝塚劇場では105周年の掉尾を飾る公演として『I AM FROM AUSTRIA』を上演させて頂くのは、本当に光栄なことだと思っております。ちょうど2年半前くらいに、我々が宝塚歌劇団105周年の目玉公演と言えるようなものを、秋にやりたいなと考えておりました頃、ウィーンからこの作品が上演されるというご案内を頂きました。私もすぐに観に参りまして、これは素晴らしい作品だと直感しました。明るく、素晴らしい音楽があり、そして何よりもウィ―ンの山々のシーンが見えた時に、故郷というテーマが宝塚に合う作品だと思い、是非ともと思ってウィーンのCEOにお願いしましたところ「是非宝塚で」とご快諾を頂き感動致しました。それを今回珠城りょう率いる月組で、齋藤吉正先生でやって頂きます。内容につきましては後で斉藤先生の方から、まぁどこまで語れるか「ネタバレしないように」と思っているのですが(笑)、日本で、宝塚でやる限りは珠城主演というアダプテーションがありますので、その辺りのことも質疑応答で訊いて頂けたらと思います。105周年に残る、ウィーンと宝塚歌劇のコラボレーションを楽しみにして頂けたらと思います。今日は本当にありがとうございました。
上島 UCC珈琲の上島でございます。今壇上にはウィンナーコーヒーがございますが、いきなりネタバレになってしまうかもしれないので申し訳ないのですが、劇中に出てくるのがショートケーキなんですね。私もウィーンに観に行きまして「ザッハ・トルテとは違うのですか?」と言いまして。やはりウィーンと言えばザッハ・トルテというイメージがありましたし、更に「ウィンナーコーヒーは出ないのですか?」と言いましたが全然出てこなくて(笑)。先ほど控室でCEOに次は是非ともウィンナーコーヒーをテーマに作品を創ってくださいとお願いしました(笑)。先ほど理事長からご紹介がありましたが、我々が冠公演をさせて頂くのはこれが5回目なのですが、これまでは『ミー&マイ・ガール』でさせて頂いてきて、今回『I AM FROM AUSTRIA』でさせて頂くことを光栄に思っております。特に今年はオーストリアと日本の友好150周年ということで、この春には大統領が来日されまして、この公演を観て頂けたら友好の最たるものになったのではないかなと思っておりましたが、とっくの昔に帰られてしまったので(笑)残念に思っています。あまり内容について喋ると怒られますので話しませんが、『ミー&マイ・ガール』はロンドンの作品でしたが、ウィーンは、ロンドン、ブロードウェイと並ぶ、世界三代ミュージカルの発信地ではないかなと思っています。そこを中心に優れた作品が発信されているので、ウィーンミュージカルの今後にも期待をしております。『ミー&マイ・ガール』もそうでしたが、今回の『I AM FROM AUSTRIA』もすごく楽しいですし、音楽的にもとても新しいテンポのものになっています。そういう意味ではこれからの時代に観て頂くのに相応しい作品ではないかと思います。私達のモットーであります「コーヒーから生まれる笑顔のために」と同じように、皆さんに笑顔になって頂ける作品を創りたいなという思いでスポンサーをさせて頂いております。宝塚大劇場では11月9日、東京宝塚劇場では12月14日に、貸切公演を行いまして、ペアチケット総計3,500名様をご招待する大キャンペーンも行っていて、珠城さんにはin the Morningさわやかな朝に、美園さんにはfor Mild Chocolate マイルド系のチョコレートにピッタリの、スペシャルブレンドもお選び頂いております。どうか公演が大成功に終わりますようにと祈念致しまして、ご挨拶とさせて頂きます。
パタイ 私の方からも皆様ようこそいらっしゃいました。ここに出席させて頂くことは私にとって大きな栄誉です。ウィーン劇場協会というのは、ウィーン市所属の一番大きな会社になります。我々は四つの劇場を持っておりまして、二つがオペラハウス、あと二つがミュージカル劇場です。1年に約100回のオペラ公演と、500回のミュージカル公演をこの劇場で上演しております。我々はインターナショナルなプロダクションも上演しておりますし、自分達自身で新しい作品も創っております。日本ではすでにおなじみのことと思いますが『エリザベート』『モーツァルト』『ダンス・オブ・バンパイア』『ルドルフ・ザ・ラストキス』『貴婦人の訪問』その他の作品です。我々のそれらの公演は世界21ヶ国で上演されており、今までに6200万人のお客様にこれらの公演をご覧頂きました。この我々のサクセス・ストーリーは23年前にはじまりました。それは宝塚歌劇団さんが23年前にウィーンミュージカルを世界で初めて上演してくれたところにはじまります。そういう訳で、私共と宝塚歌劇団さんには四分の一世紀もの友情関係があります。そしてこの『I AM FROM AUSTRIA』という作品によって、我々の関係がもっと深まっていくことを希望しています。我々の国オーストリアと日本は150年間の友好関係にあります。日本のものでオーストリアでも「寿司」等の食べ物が非常に有名で喜ばれており、皆が価値を見出しております。また、すべてのオーストリア人とおそらく日本人のすべての皆様も「ドナウ河のさざなみ」という曲をご存知だと思いますが、この曲はウィーンフィル・ニューイヤーコンサートの最後に演奏されます。同時に今皆様にお聞き頂いた「I AM FROM AUSTRIA」はオーストリア人でしたら、誰もが知っている楽曲です。今回の宝塚さんのプロダクションによりまして、この曲が日本でも「ドナウ河のさざなみ」と同じように有名になることを願っております。皆様のご成功をお祈り致します。
シュトゥルペック (日本語で)「おはようございます!」この度のご招待に心より感謝致しますと共に、本日ここに参加させて頂けますことを大変嬉しく思います。興行者としての我々にとりまして、オーストリアと強い関係性のある新たなミュージカルを創作するというのは、大変特別なことでした。『I AM FROM AUSTRIA』はオーストリアという国に対する愛情に溢れた作品です。この物語はどこが自分の故郷か、どこが自分の家なのかという非常に重要な問いを扱っております。物語の舞台は主としてウィーンで、ミュージカルの音楽はオーストリアで最も美しく、また最も著名なポップソングの数々で構成されております。作曲家であるラインハルト・フェンドリッヒはオーストリアのレジェンド、つまり伝説と呼べる人です。彼の輝かしく薫り高い歌詞と、ゴージャスで感動的なメロディーを持つ、内容的にも非常に力強い曲の数々は、オーストリアを舞台にするミュージカルに非常に適しておりました。『I AM FROM AUSTRIA』は世界初演以来、芸術的にも興行的にも大きな成果をあげました。ウィーンでは二年間に渡り毎日満席の劇場で上演されました。50万人以上の人たちがこの作品を観劇し、『I AM FROM AUSTRIA』はウィーンで制作したミュージカルの中で最も成功した作品のひとつに数えられます。その作品が日本で歩みを継続することは、我々にとって大きな誇りです。宝塚歌劇団さんが私達に大いなる信頼をお寄せ下さり、『I AM FROM AUSTRIA』をオーストリア以外の世界で初めて、ここ日本で上演してくださることは大きな名誉であります。私は我々のパートナーの皆様、宝塚歌劇団の友人の皆様の共同作業と準備段階での飽くなきご尽力と、大いなるインスピレーションを与えてくださる皆様に対して、心より感謝申し上げます。チーム全員の皆様、出演者の皆様、そして何より我々が心から敬愛する日本の観客の皆様方が、『I AM FROM AUSTRIA』のニュープロダクションで大いなる喜びを見出して頂けますよう、また大いにお楽しみ頂けますよう心より祈念致します。(日本語で)「ありがとうございます」
ホフマン (日本語で)「こんにちは!」私も本日この場に同席させて頂けることを非常に嬉しく思います。『I AM FROM AUSTRIA』は最初のアイディアの頃より軽快でユーモアにあふれ、かつエモーショナルで深く心に触れる、まさにウィーンオペレッタの伝統の中で、しかしモダンなストーリーであることが意図されました。ラインハルト・フェンドリッヒはこのことに即座に賛同し、ウィーン劇場協会がこの作品を舞台化することに対して喜んで参加してくれましたので、私はクリスティアン・シュトゥルペックと共にこの物語を詳細に文章化しはじめました。楽曲の場所を先に決め、謂わば後付けで話の筋を練り上げ構築するというコンセンサスが特殊ではありましたが、非常にエキサイティングな仕事でした。もちろん最終的にはあたかも我々の物語の為に楽曲が作曲され、その逆ではないという効果を得るように意識しました。三年半という歳月を費やし、初演時の国際的なクリエイティブチームと選り抜かれた俳優たちと共に、二回に渡る手間と時間をかけたワークショップで我々の作品を推敲し練り上げた上で、9週間に渡るリハーサル期間を経まして、2017年9月、遂に陶酔的とも言える初日を迎えるに至りました。現実の存在と見せかけの世界を明確に見分けることがますます困難になっているこの時代におきまして、独自のアイデンティティを探求し発見するという物語が、世界的にも有名な宝塚歌劇団において引き続き語られることを、私は大変嬉しく思い名誉とするところです。最後に宝塚の全ての関係者の皆様に対しまして(日本語で)「成功を祈ります!」
齋藤 皆さん本日はお忙しい中お越しくださりありがとうございます。宝塚歌劇105周年、そして我が日本とオーストリアの国交が結ばれまして150年というこの年に『I AM FROM AUSTRIA』という宝塚歌劇の新作ミュージカルを担当させて頂く誇りと責任を痛感しています。このプロジェクトを知ったのは昨年秋でした。小川理事長からこのお話を頂きまして、私の作品も上演されていた宝塚歌劇の台湾公演に帯同していたその足で、オーストリア・ウィーンに渡り観劇させて頂き、ここにおられる皆々様とこのプロジェクトについての日々の打ち合わせをさせて頂きました。この作品については元々知っておりまして、ウィーンの新作が大変な人気を博しているということを伺っておりましたが、まさかこの作品が宝塚105周年に上演されるとは夢にも思っておりませんでしたので、大変光栄に思っております。そして今回の公演ではUCC上島珈琲様に『ミー&マイ・ガール』以来のご協賛を賜りました。このお力添えにも深く感謝申し上げる次第です。宝塚歌劇団の大劇場公演としては『1789─バスティーユの恋人たち─』以来の海外ミュージカルの新作になりますが、月組自体がとてもミュージカルに強い組という印象を持っております。珠城りょうはまだ若いですが、実はトップスターになりましてからのキャリアは十分で、ベテランの風格を増して、宝塚歌劇五組の中でもリーダー格として引っ張ってくれている頼もしいトップスターです。美園さくらはトップ披露公演を経て、先日の『ON THE TOWN』の再演でも成長の跡を残してくれています。先ほども申しました通り、月組にミュージカルに強い組という印象があるルーツは、先ほど理事長からもお話がありましたUCC様からご協賛を頂きました『ミー&マイ・ガール』だと思います。とてもチームワークが良い月組の温かさと、『I AM FROM AUSTRIA』という作品が持つアットホームさと温かさには、非常に共通するものを感じています。このタイトルにもなっております「I AM FROM AUSTRIA」という楽曲は、オーストリアの第二の国歌と謳われております。この曲にはオーストリアそのものの歴史と文化が描かれております。我々は楽曲と作品が持つメッセージ、更に作品を超えて、オーストリアという国が持つカルチャーと歴史をこの作品を通して伝える義務があると思っております。作品の内容については観て頂いてのお楽しみというところがありますが、先ほど珠城と美園が披露させて頂いた、「Nix is fix」「I AM FROM AUSTRIA」の他にもとても素敵な楽曲が、アットホームで心温まるストーリーの中に挿入されていきます。この作品は皆様ご存知の『エリザベート』『モーツァルト!』等々のウィーン劇場協会の作品、ウィーンオペレッタの歴史を模範とする、メロディーに乗せた台詞で綴られているものとは、性格の違うものです。しっかりした楽曲とウィットに富んだ台詞回し。これらの台本がミックスしてとても楽しく、老若男女の方々に楽しんで頂ける作品だと確信しております。今週から我々の稽古がはじまります。10月の初日にご期待頂けるよう我々も稽古に励んで努めて参りたいと思います。どうぞご期待下さい。
珠城 皆様本日は多数お集まり頂きましてありがとうございます。今回この作品を上演させて頂くにあたり、ウィーン劇場協会のミュージカルというのが宝塚歌劇と致しまして『エリザベート』に続いて二作目ということで、とても身の引き締まる思いでおります。月組と致しましては先日『エリザベート』も上演させて頂きました。今回の『I AM FROM AUSTRIA』は『エリザベート』とは180度世界観も、雰囲気も、楽曲の毛色も違う作品になっておりますので、そういったところにまた月組として新たに挑戦していけることをありがたく思っております。また先日私は実際にウィーンの劇場まで足を運ばせて頂き、ウィーンの皆様から『I AM FROM AUSTRIA』という作品が非常に愛されているということを肌で感じてきました。ですのでそれを実際に私達が日本で上演するというのは、かなり責任のあることだなとプレッシャーにも感じているのですが、ウィーンのキャストの皆様やCEOのパタイさんをはじめ関係者の皆様、観客の皆様がとても温かく迎えてくださったので、それは自分にとって忘れられない思い出ですし、今日またこうやって皆様と再会できたことを非常に嬉しく思います。私の役どころジョージは、ホテルの御曹司という役柄ではあるのですが、両親との確執も抱えた極普通の青年です。両親からの独立というのが、彼の一番大きなテーマなのかなと作品を観て感じました。男女の恋愛だけではなく、友情や祖国愛というものが、皆様がおっしゃられていた通り、素晴らしく美しく様々な音楽に乗せて描かれていく。本当に心温まる、観終わったあとに温かいものが心に残るような作品だなと感じています。日本で上演してもきっと多くの方に共感して頂ける物語になっていると感じますので、大人の方だけではなく、SNSが普及している現代に生きる若い方々にも是非観てもらいたい作品です。そこから家族や友人の大切さ、また自分自身が将来どうなっていきたいのか?を一人ひとりが考えることが如何に大切かを作品から感じ取って頂けるのではないかと思いますので、そういったところを大切に月組の皆と丁寧に、齋藤先生とも色々話し合いながら、ぶつかり合いながら良い作品に仕上げていきたいと思います。最後になりましたがUCC上島珈琲株式会社様に今回ご協賛頂けましたことに厚く御礼申し上げます。皆様本日は本当にありがとうございました。
美園 本日はお忙しいところ制作発表会にお越し頂き誠にありがとうございます。日本とオーストリアの友好150周年という素晴らしい年に、このような作品に携われることを大変光栄に思っておりますし、日本初演ということで身の引き締まる思いでございます。ウィーンでも観劇させて頂きましたが、今まで体感したことがないような本当に華やかで、それでいてスタイリッシュなパフォーマンスに圧倒されました。その感動を余すことなく日本の皆様にもお届けできるように、これから精一杯お稽古を頑張っていきたいと思っております。演じさせて頂くエマ・カーターという人物はハリウッド女優で華やかな世界で生きている分、孤独や苦悩を抱えておりますが、美しい故郷に帰ってきて彼女が感じた心の解放を、本当に美しい音楽に乗せて繊細に表現することができるように精一杯頑張りたいと思います。また今回は『夢幻無双』に続き齋藤先生に演出して頂けるということで、齋藤先生には私の性格や色々なこと全てわかって頂いているので、非常に心強いですし、先生にしっかりとついてお稽古を頑張っていきたいと思います。皆様本日はありかとうございました。
【質疑応答】
──珠城さん、美園さん、今回の作品は故郷を思う気持ちと宝塚とが重なる部分があるのかな?と思いますが、その部分はどのように?
珠城 宝塚はもちろん私にとって第二の故郷ともいえるところなのですが、宝塚歌劇は組を超えて劇団員一同が皆家族と私達も言っています。月組はいまとても充実していますし、一人ひとりがとても個性を発揮していて温かく、かつ自分のことだけではなく他人のことも思いやれる、そういう組だと思っています。そういったところが宝塚歌劇月組でこの作品をやることに、意味のあるものだったら良いなと思いますし、作品を自分達の普段の生活に照らし合わせて創っていけたらと思いますので、その辺りが共感できる部分です。
美園 「I AM FROM AUSTRIA」はオーストリアを故郷と思って歌わせて頂く歌詞ではございますけれども、珠城さんがおっしゃったように私達にとりましては、月組で上演させて頂くことに誇りを持ちながら、その気持ちを込めながら歌わせて頂きます。そして観て頂くお客様にはそれぞれが置かれている状況、家族や会社等それぞれいらっしゃるところで、気持ちを育てていく過程を大切にという歌詞に共感して頂けると思いますので、大切に歌わせて頂きたいです。
──斎藤先生宝塚ならではのアダプテーションを差し支えのないところで教えてください。あとは「コーヒーは出てくるのか?」というところも。
齋藤 コーヒーはもちろんですよ!(笑)コーヒーは出てきます!宝塚歌劇としての『I AM FROM AUSTRIA』は出演者自体がまず変わってきます。皆様ご存知の通り宝塚歌劇は各組毎公演大所帯で上演させて頂いております。その点でもこの作品が宝塚に非常に似合うなと思うのは、ストーリーばかりでなく先ほどからお話が出ているミュージカルナンバー、各レビューシーンが楽しいもの、抒情的なものと色々なバラエティー豊かなナンバーが用意されていることです。僕はこのお芝居の中でレビュー場面も担当させて頂くのですが、今香盤作り、香盤と言いますのは出演者の出番表ですが、それを作っておりまして、月組生皆の出場場面がとても多くなるミュージカルになっていると思います。そして様々な美術、衣装を色とりどりに皆様にご覧頂けます。ウィーン版のものはLEDを駆使しました大きなケーキ型のセットがベースになっておりますが、宝塚歌劇の舞台は盆が回り、また大きなセリもあります。それらを用いた宝塚の正攻法の転換を使って、ウィーン初演をご覧頂いていた方達には、宝塚歌劇のビジュアルとして「あ、宝塚レビューだな」と思って頂けるような、流麗な流れというものを創り出していきたいなと思っております。そして皆様に楽しいお話をご覧頂いたあとには、華やかな宝塚歌劇ならではのフィナーレレビューをご覧頂きたいと思いますので、皆様どうぞお楽しみになさってください。
──シュトゥルペックさんホフマンさん、今日珠城さんのジョージと美園さんのエマをご覧になってどう感じられましたか?またアドバイスなどあれば是非。
シュトゥルペック 私達はお二人の今日のパフォーマンスを拝見しまして、大変感動致しました。リハーサルも拝見していたのですが、お二人がパーフェクトにこの役柄が要求する非常に重要な部分を表現されているのを観まして感動しております。
ホフマン とても完璧な瞬間でした。ウィーン方言で歌われているこの曲が、日本語で聞いても何の抵抗もなく素晴らしく聞こえてきたのを大変魅力に感じました。このお二人は本当に素晴らしく作品を支えてくださるだろうと確信致しました。
それぞれの挨拶が大変熱のこもったものだっただけに、質疑応答は残念ながらこれで終了となったが、新たな海外ミュージカル上陸への期待が高まる時間となっていた。
【公演情報】
宝塚歌劇月組公演
日本オーストリア友好150周年記念
UCCミュージカル
『I AM FROM AUSTRIA─故郷は甘き調べ─』
作詞・作曲◇ラインハルト・フェンドリッヒ
脚本・アイディア◇ティトゥス・ホフマン
脚本・クリエイティブデベロップメント◇クリスティアン・シュトゥルペック
オリジナル・プロダクション◇ウィーン劇場協会
潤色・演出◇齋藤吉正
出演◇珠城りょう 美園さくら ほか月組
●10/4~11/11◎宝塚大劇場
〈料金〉SS席12,500円 S席8,800円 A席5,500円 B席3,500円
●11/29~12/28◎東京宝塚劇場
〈料金〉SS席12,500円 S席9,500円 A席5,500円 B席3,500円
〈お問い合わせ〉0570-00-5100
【取材・文/橘涼香 撮影/岩村美佳】
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