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美しい湖を背景に家族をテーマに描く名作『黄昏』 高橋惠子・瀬奈じゅん インタビュー 

高橋惠子主演で、大自然を舞台に「家族の絆」を描く舞台『黄昏』が、6月4日のプレビュー公演を皮切りに大阪、兵庫、石川、愛知を巡演中だ。6月21日~26日には東京・紀伊國屋ホールで公演、最終地は7月9日の長野となっている。

『黄昏』はアーネスト・トンプソンによる戯曲で1978年にNYで初演。1981 年にはヘンリー・フォンダ、ジェーン・フォンダ、キャサリン・ヘプバーンの共演で映画化され、翌年のアカデミー賞やゴールデングローブ賞など数多くの部門で受賞。以来、世界 20 か国以上で上演され続け、不朽不滅の名作として知られている。

今回の舞台は、2018年からの鵜山仁の演出によるもので、 2020年に高橋惠子が主演し、好評を博した。そのキャストが再集結しての2年ぶりの再演となる。

《あらすじ》
物語の舞台は、アメリカ・メイン州、美しい湖ゴールデン・ポンドの岸辺。ひと夏をこの湖畔の別荘で過ごすためにやってきた老夫婦、ノーマン(石田圭祐)とエセル(高橋惠子)のもとへ、長年疎遠だった娘(瀬奈じゅん)が13歳になる息子(林蓮音)と恋人(松村雄基)を連れて訪れる。老夫婦と13歳の少年が美しい自然の中で過ごす日々、父娘の確執と歩み寄り、ゆっくりと…けれど確かに忍び寄る老い──。

この名作舞台で母と娘として共演する高橋惠子と瀬奈じゅんに、本作への取り組みなどを聞いた。

瀬奈じゅん 高橋惠子

それぞれの2年間の経験が作品にリアルに生きる

──この作品の再演が決まったときの気持ちから聞かせてください。

高橋 まず嬉しかったです。またこの作品ができるということ、それも前回の公演で一緒だった方たちとご一緒にということがなによりも嬉しかったです。今回はさらに家族の絆が深まっていくと思いますし、それぞれが過ごした2年間という月日も加わって、また新しいものも生まれてくるのではないか思っています。

瀬奈 私も再演が決まったとき、「あ、皆さんにまた会える!」という気持ちでした。前回の子役の方は成長したので、今回は新しい方になりますが、ほとんど同じメンバーでの再演というのはめったにないことなので、とても嬉しいです。ちょうど初演の千秋楽の頃にコロナ禍が始まり、千秋楽も公演できるかどうかという状態でしたが無事に終えられて。でもそこから皆さんとまったくお会いできないままでしたから、こうして再会できて本当に嬉しいです。

──2年ぶりの再演ということで関係性などにも変化がありそうですか?

高橋 それはたぶん稽古や本番の中で感じるのではないかと。でもコロナ禍で今まで当たり前だったことができなくなるということを体感して、家族と会うこととか一緒に暮らすことの素晴らしさは改めて感じていますので、それぞれの2年間の経験は今回の舞台にも生かされると思います。

瀬奈 会えなかった2年分の思いは、きっと舞台での関係性に出てきますよね。

高橋 役の設定自体が親子が会うのは久しぶりということですからね。

瀬奈 そう!リアルですよね。

大自然を舞台に描かれる親子の関係や老いというテーマ

──親子、老い、そして自然など、いろいろなテーマが込められている作品ですが、お二人が演じていて一番感じたことは?

高橋 まず感じたのは親子のことで、エセルは、娘のチェルシーが子どもの頃にどんな思いをしていたのかということに気づかなかった。そしてそれを何年も経った今になって言われる。現実にそういうことは意外とあるようで、最近聞いた話ですが、既に結婚して子どもまである娘さんから「あのときお母さんにこんなふうにされてすごいショックだった」と言われたそうです。でもこの物語では親が生きている間にそういう誤解が解けた、チェルシーもちゃんと思いを言えたというのは良かったなと思います。それはあの場所、ゴールデン・ポンドという湖がある自然豊かな場所だったからで。鳥のアビとか蜘蛛とかいろんな生き物もいるんですが(笑)。

瀬奈 出て来ますね(笑)。

高橋 人間だけが生きているんじゃないという、そういう自然についてもとても良く描かれていると思います。そしてやはり大きなテーマとして、「死」というものをどう迎えていくかということがあって、目の前で夫がこのまま死んでしまうのではないかという状況になったとき、エセルはどれだけ自分が夫を愛していたか、そして2人の間にある歴史ということについても改めて考えるんです。でも同時に「死」というものに関しては、そんなに恐いものではないと。目の前に近づいてくる「黄昏」、それは誰にでも訪れるものですし、学校も卒業があるようにこの世を卒業して次の世に行く、それも自然のあり方という、この戯曲にはそういう大きな捉え方があって、そこがいいなと思います。

瀬奈 そのお話で言うと、前回の公演の半年後に私の父が他界したんです。公演しているときはちょうど闘病中で、ですから作品の内容についてもいろいろ思うことがありましたし、この作品に出演したことで、私も父親に対して素直になろうと思ったです。ちょうどコロナ禍で、病院ではなく自宅で看取ることができたのですが、この作品のおかげでちゃんと送り出せた気がします。ですから今回の再演が決まったとき、そういう経験や父親への思いなどによって自分にどんな変化があるか、それは逆に楽しみです。「死」は必ず誰にでも訪れるものなので、それを忘れずに日々成長していければと思いますし、そういう意味もあって私にはとても大きな作品になっています。

──ご自分の役については、どういうところを大事に演じたいと?

高橋 エセルは本当に快活で、いろいろなことを受け入れる人で、年齢は69歳ですが気持ちは若くていろんな事に好奇心を持っている。そしてシニカルなジョークを言う夫をちゃんと受け止める知性もあると思います。たぶん誰にでもあると思いますが少女のような気持ち、子どもの頃の思いを忘れないような、そういう人でもある気がします。自然が好きで元気で、誰に対してもウエルカムで。

瀬奈 港のような人ですよね。

高橋 そういうところを大事にしたいですね。

瀬奈 チェルシーは子どもの頃からの父親との確執の積み重ねがあって、でもそれをずっと胸にしまっていたわけですが、今になってこのタイミングで、「なんであのとき助けてくれなかったの?」と母親に言うんですよね。たぶん精神的にはまだ成長途中の、大人になりきっていない、でも子どもでもないという複雑なところにいる女性なのかなと。でも結婚する相手に子どもがいるということで、自分も親にならなくてはという思いが、チェルシーに今それを言わせたのかなという気がします。不思議なんですけど、今回の再演で台本を読みながら、「こんな台詞あった?」と思うことが多いんです。この2年間、私の中で何があったのだろうと思いますし、そういう意味ではほとんど同じメンバーですが、また新しく作る気持ちになっています。

高橋 そう! 前のをなぞるのではなくて、新鮮な気持ちで作り上げていきたいですね。

信頼関係ができたから、舞台でも飛び込むことができる

──前回共演したからこそのお互いへの思いはいかがですか?

高橋 気持ちを動かしてくれる人、形でやってないというのが一緒にやっていてすごく嬉しいです。その時その時の気持ちでこちらにボールをちゃんと渡してくれるので、受け取る側も楽しいんです。前回が初共演だったんですけど、新鮮にこちらの気持ちを動かしてくれる素敵な女優さんだなと。とても楽しかったです。

瀬奈 私も楽しかったです。公演先の楽屋で2人部屋になることが多くて、たくさんお話をさせていただきました。何にでも挑戦しようとされるその気持ちにとても感銘を受けましたし、なんて素敵なんだろうと。私は舞台での惠子さんを初めて拝見したのは明治座公演の『仮縫』(2018年)で、黒のスーツで出ていらっしゃったんですが、そのお姿が「THE女優」で、「これこそ女優!」と感動したんです。そのイメージがあったのですが、ご一緒したらとてもフラットで、いい意味でごく普通の感覚を持っていらっしゃる。私もわりと普通の感覚で生きている人間なので、一緒にお話ししていても話題がつきないし、どんどん発展していくのがすごく心地いいし楽しいんです。よく覚えているのが、チェルシーが挨拶として「ハウ!」と言うんですが、それが何故なのか一緒に調べたり(笑)。たぶん気になることとか追求したくなることが似ているのかなと。

高橋 そうなのよね(笑)。

瀬奈 これは?と思うこととか、すぐ調べたくなるところとか、いろんなことに興味があることなど共通しているなと思います。

高橋 ちょっと友だちみたいな感じで喋っちゃうのよね(笑)。

瀬奈 年下なのに生意気なんですけど(笑)。でもそういう信頼関係ができたから、舞台でも飛び込むことができて、娘として自分をさらけ出すことができたんだと思います。それは惠子さんに感謝しているんです。

高橋 お父さんとのやりとりの場面も、私は袖でずっと見ているの。すごくいいなと思って。本当に気持ちで動いているから。

瀬奈 変化とかにいち早く気がついてくださるんです。今日はこうだったわねとか。

高橋 だってずっと見ているんですもん(笑)。面白くて、見逃しちゃいけないと思って。

瀬奈 嬉しいです。

──そんな素敵な家族を描いた舞台を全国の方々に観ていただくわけですが、改めてアピールをいただけますか。

高橋 まず、この状況の中で劇場に足を運んでいただけることをありがたいなと思っています。お客様がそこに居て感動してくださる、それが演じる私にとっては唯一の喜びと言ってもいいぐらいで、幕が開いてそこにお客様がいらっしゃるだけで作品に集中できるんです。その2時間なら2時間をともに生きているという感覚は特別なもので、それはお客様がいなくては作り出せないものなんです。ですからぜひ劇場に足をお運びいただければ嬉しいです。

瀬奈 本当に来てくださるだけでありがたいですし、来てくださったからには何かしらを感じていただけるようなお芝居にしていきたいです。この『黄昏』は、さまざまなテーマが描かれている作品ですから、観る方が何をフィーチャーされるかで、きっと感じることも違ってくると思います。ですから何度でも観ていただきたいですし、どの角度から観ても面白い作品に仕上げていきたいです。

瀬奈じゅん 高橋惠子

たかはしけいこ○北海道出身。15歳で映画『高校生ブルース』でデビュー。『おさな妻』でゴールデンアロー賞新人賞受賞。以来、映像と舞台で活躍中。舞台は『雁の寺』『藪の中』で読売演劇大賞優秀女優賞を、『山ほととぎすほしいまま』『藪原検校』『ハムレット』で朝日舞台芸術賞秋元松代賞を受賞している。近年の主な舞台は『マイ・フェア・レディ』『危険な関係』『仮縫』『マクガワン・トリロジー』『日本橋』『黒白珠』『オリエント急行の殺人』『キネマの天地』『HOPE』『サザエさん』。

せなじゅん○東京都出身。1992 年宝塚歌劇団入団。2005 年月組男役トップスターに就任、2009 年に退団。同年『エリザベート』のエリザベート役で女優活動を開始。以来、舞台やドラマで活躍中。2012 年に菊田一夫演劇賞演劇賞、岩谷時子賞奨励賞を W 受賞。近年の主な舞台は、『FUN HOME ファン・ホーム ある家族の喜悲劇』『シティ・オブ・エンジェルズ』『サムシング・ロッテン!』『細雪』『ラ・マンチャの男』「現代能楽集Ⅹ『幸福論』~能「道成寺」「隅田川」より」『ブロードウェイと銃弾』『検察側の証人』『カーテンズ』。

【公演情報】
『黄昏』
作:アーネスト・トンプソン
翻訳:青井陽治
演出:鵜山 仁
音楽:藤原道山
出演:高橋惠子/瀬奈じゅん 松村雄基/石橋徹郎 林 蓮音(Jr.SP/ジャニーズJr.)/石田圭祐
●6/21~26◎東京公演 紀伊國屋ホール
〈料金〉8,800円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈お問い合わせ〉チケットスペース03-3234-9999(平日10:00-12:00/13:00-15:00)
〈公式サイト〉
https://www.stagegate.jp/stagegate/performance/2022/tasogare_2022/

《ツアースケジュール》
●6/8・9◎大阪公演 枚方市総合文化芸術センター 関西医大 小ホール
〈料金〉8,800円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈お問い合わせ〉チケットデスク0570-008-310(ナビダイヤル/受付時間10:00~17:00)
●6/11・12兵庫公演 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
〈料金〉A席6,000円 B席4,000円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈お問い合わせ〉芸術文化センターチケットオフィス0798-68-0255 (10~17時 月曜休/祝日の場合翌日)
●6/14・15◎石川公演  北國新聞赤羽ホール
〈料金〉8,800円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈お問い合わせ〉北國新聞赤羽ホール076-260-3555 (平日・10~18時)
●6/18・19◎愛知公演  穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
〈料金〉8,800円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈お問い合わせ〉キョードー東海 052-972-7466 (平日12:00~18:00、土10:00~13:00)
●7/9◎長野公演 長野市芸術館 メインホール
〈料金〉S席8,800円 A席7,700円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈お問い合わせ〉NBS長野放送事業部 026-227-3000

 

【取材・文/榊原和子 撮影/中村嘉昭】

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