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《TAKARAZUKA NEWS PICKUP!》その4 SPECIAL MOVIE「OUR FAVORITE TAKARAZUKA」

動画配信シリーズのグランドフィナーレ&幕開きの「OUR FAVORITE TAKARAZUKA」

宝塚歌劇公式ニュースの中から特に注目すべき情報をサイト内で語っていく、《TAKARAZUKA NEWS PICKUP!》の第四回は、宝塚歌劇団がこの休止期間中に取り組みを進めてきた動画配信のグランドフィナーレであり、新たな時代へのはじまりでもある、SPECIAL MOVIE「OUR FAVORITE TAKARAZUKA」から広がる思いについてです。

7月10日、宝塚歌劇団の出演者有志が、宝塚歌劇の公演再開を心待ちにしている観客、ファンに向けて感謝の気持ちを届けたい、という趣旨による合唱動画が配信されました。

これまでにも宝塚歌劇団は、スペシャルムービーとして花組トップスター柚香光をスタートに、専科の轟悠に至る数珠つなぎのスターからのメッセージ動画を日々配信してきました。CS放送の有料専門チャンネル「TAKARAZUKA SKY STAGE」を有する宝塚歌劇は、これまでの歩みの中で、比較的に動画配信には慎重な方向性だったように思います。

けれども、この休止期間中一気に〈おうちでタカラヅカ〉の流れが加速。更に、再開が近づく、トップコンビ柚香光&華優希お披露目の宝塚大劇場花組公演『はいからさんが通る』や、東京宝塚劇場での、同じくトップコンビお披露目となる礼真琴&舞空瞳率いる星組公演『眩耀の谷~舞い降りた新星~』『Ray─星の光線─』、真風涼帆&星風まどか主演の新作、宙組梅田芸術劇場メインホール公演『FLYING SAPA ─フライング サパ─』については、従来も行われていた全国の映画館でのライブ中継と共に、「Rakuten TV」と「U-NEXT」での、全編ライブ配信も決定しました。

おそらくこの動きは今後も広がっていくことでしょう。いま、劇場再開の道筋として、宝塚だけではなく、ほぼすべての劇場が客席を半減させてソーシャルディスタンスを取り、同時にライブ配信もしていくというスタイルが、ひとつの定型になりつつあります。宝塚歌劇もその流れに舵を切っていくことは必定だろうと感じますし、辛いことがとても多かったこの休止期間ですが、エンターテイメントが時と場所を選ばずに、自宅や一人ひとりの手元にまで届けられる時代が進んだのは、ひとつの光明でもあります。

というのも、やはり人にはそれぞれ如何にエンターテイメントを愛していても、劇場に足を運びにくい時期が訪れてしまうことが多々あります。そうした時にエンターテイメントの方から自宅にやってきてくれるのは、決して劇場で観劇する人口を減らすことにはならないと思うのです。むしろせっかくの宝塚愛や、演劇・ミュージカル愛が薄れることを防ぐ力になってくれるに違いありません。もっと言えばそれをきっかけに、これまで劇場には足を運んだことがなかった人に、劇場への興味をもってもらうきっかけにさえなると信じます。

実際、アイドルの方達や人気声優さんが、東京有楽町の帝国劇場の舞台に初めて立たれる時など、ファンの方達から「何を着ていけばいいでしょうか?」と真剣に相談されることはかなりの確率であるのです。「好きな服で大丈夫ですよ!」となんでもないことのように思うのは、こちらが劇場に行き慣れているからなだけで、初めて大劇場に足を踏み入れる時というのは、結構緊張もするし、それなりに敷居の高いことなのだなとわかります。自分が応援している人に恥をかかせてはいけないし…という、とてもいじらしい気持ちを打ち明けられることもあって、こちらまで初心に返る気持ちにさせてもらえます。

ましてや宝塚歌劇の夢の世界ですと「客席もキラキラふわふわしているのかも!?」「男性一人ではとても入れないですよね?」という声も非常に多く、「そんなことはありません!」といくら力説しても、最初の一歩にたどり着くまでにはいくつものハードルがあります。現実的に100周年のカウントダウンがはじまった頃から現在まで、宝塚歌劇のチケットが常にプラチナ状態だったことも、嬉しい悲鳴さながらのハードルになっていました。

その宝塚歌劇が向こうから自宅にやってきてくれるのですから、「自宅で観られるなら一度観てみたい!」と思う方達のファーストステップになってくれることは間違いないでしょう。ただ、何しろ自宅というのは日常の只中ですから、劇場に出向いて客席に座る以上に、3時間のトリップを確保するのが逆に難しい面もあります。ですから、できるなら今後見逃し配信も検討して欲しいと願いますが、それでも〈おうちでタカラヅカ〉が、劇場へ向かう気持ちの後押しをしてくれるといいな、きっとそうなると思えるのです。

その願いを裏打ちしてくれたのが、SPECIAL MOVIE「OUR FAVORITE TAKARAZUKA」の大合唱動画でした。まず専科の轟悠、花組トップコンビ柚香光&華優希、月組トップコンビ珠城りょう&美園さくら、雪組トップコンビ望海風斗&真彩希帆、星組トップコンビ礼真琴&舞空瞳、宙組トップコンビ真風涼帆&星風まどかによる「すみれの花咲く頃」から歌唱がはじまります。宝塚ファンで歌えない人はいない、ある意味団歌よりも著名な宝塚歌劇を代表する楽曲には、やはりあたりを虹色にするような力があります。

続いて、生徒全員で今皆様に伝えたい気持ちを込めて選ばれたというオリジナル楽曲「未来へ」。1998年宙組発足のお披露目公演として上演された『エクスカリバー~美しき騎士たち~』(作・演出 小池修一郎)からの楽曲で、アーサー王伝説を基に、トップスターとして船出した姿月あさとと宙組が向かう、輝かしい未来への祝意と願いがこめられた曲は、今新たに幕を開けようとしている宝塚歌劇に見事にシンクロしていました。

大劇場のステージに、前述の轟以下各組トップコンビが並び、客席には各組の二番手男役、瀬戸かずや、月城かなと、彩風咲奈、愛月ひかる、芹香斗亜を筆頭に、専科から下級生までの面々が居並びます。その姿は、あの劇場空間に再び行きたい!という気持ちをいや増しにするものでした。東西の劇場で通年公演が行われるようになって以来、年に一度の「タカラヅカスペシャル」も、東京公演中の組は不参加になっている現在、宝塚の各組のメンバーが一堂に会する機会は、10年に一度の大運動会くらいかも知れません。それほどスペシャルなメンバーでの大合唱が、劇場空間へと誘ってくれるのです。そこには、ここにこそ希望があるとの象徴にも感じられる、美しい光景が広がっていました。

そして最後は「♪この愛よ永遠に(TAKARAZUKA FOREVER)」。1984年の月組公演『ザ・レビューII ─TAKARAZUKA FOREVER─』(作・演出 小原弘稔)の主題歌で、大地真央が歌った宝塚歌劇70周年記念の「宝塚讃歌」です。現在ではスターの退団千秋楽で歌われることが非常に多く、これもほとんどの人が歌えるでしょう、宝塚よ永遠なれ!の願いが綴られた楽曲です。その思いをひとつに、参加した全員が晴れやかに歌う姿からは、大きな輝きが放たれていました。それは、4ヶ月に及んだ休止期間から宝塚歌劇団が、劇場が再び歩みはじめる瞬間にも感じられるものでした。

実際、新型ウィルスの流行には、未だ終息に向かっているとは言い難い側面もあります。エンターテイメントにとって難しい、模索の日々は続くでしょう。それでもやはり宝塚歌劇団が常打ち小屋を東西に持ち、全員が「劇団員」であるという強みが、この休止期間を経たスケジュールの見直しに早くも現れています。
前述した公演ばかりでなく、所謂外箱公演だった、桜木みなと主演の宙組公演『壮麗帝』、彩風咲奈主演の雪組公演『炎のボレロ』『Music Revolution!─New Spirit─』、望海風斗スペシャルステージである雪組公演『NOW! ZOOM ME!!』などが、宝塚大劇場、東京宝塚劇場、梅田芸術劇場で特別ゲストを除く同じメンバーで上演できます。これは作品ごとにキャストを確保するプロデュース公演では非常に困難なことで、宝塚がひとつのカンパニーであるからこそ実現できたスケジュールに他なりません。

そうした力強い歩みが、休止期間の動画配信シリーズのフィナーレであり、新たな宝塚歌劇の幕開けのプロローグでもある大合唱に結実したことがなんとも尊く、「TAKARAZUKA FOREVER」の道のりが「未来へ」と続くことを確信させてくれる時間が流れていました。つつがない開幕を心待ちにしています。

 

SPECIAL MOVIE「OUR FAVORITE TAKARAZUKA」
https://kageki.hankyu.co.jp/news/20200410_002.html

花組 宝塚大劇場公演『はいからさんが通る』特別番組の放送・ライブ配信・ライブ中継実施のお知らせ
https://kageki.hankyu.co.jp/news/20200627_002.html

星組 東京宝塚劇場公演『眩耀の谷~舞い降りた新星~』『Ray─星の光線─』特別番組の放送・ライブ配信・ライブ中継実施のお知らせ
https://kageki.hankyu.co.jp/news/20200709_003.html

宙組 梅田芸術劇場メインホール公演『FLYING SAPA─フライング サパ─』ライブ中継・ライブ配信実施のお知らせ
https://kageki.hankyu.co.jp/news/20200709_002.html

宝塚歌劇公演の再開ならびに今後のスケジュールについて
https://kageki.hankyu.co.jp/news/20200311_001.html

 

【文/橘涼香】

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