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幕末の動乱の中で活躍する五人の白浪!音楽活劇『SHIRANAMI』上演中!

河竹黙阿弥の名作『白浪五人男』を大胆にアレンジした音楽活劇『SHIRANAMI』が、1月11日から新国立劇場 中劇場で上演中だ。(29日まで)
この舞台は歌舞伎の人気演目「青砥稿花紅彩画」に描かれた白浪の世界を、尊皇だ攘夷だと混沌とする幕末の時代に移して、表の顔と裏の顔を持つ五人が出会い、この国を守るために立ち上がるという物語。

出演者は、弁天小僧菊之助を早乙女太一、赤星十三郎には元月組トップスターの龍 真咲、南郷力丸は伊礼彼方、忠信利平はゴールデンボンバーの喜矢武豊、そして日本駄右衛門には松尾貴史と、豪華な顔ぶれが顔を揃えている。脚本・演出はG2、ショー場面の演出はショーデザイナーとして知られる市川訓由が手がけている。音楽活劇と銘打たれているように、殺陣やアクションの面白さに加えて、洋楽のショーもあり、和洋折衷で見どころ満載の一大エンターテインメントに仕上がっている。

【物語】
時は幕末。諸外国との通商条約に反対する武士たちが、尊皇だ、攘夷だと喧しい中、古くから天皇家に仕えていた八瀬童子の菊霧(早乙女太一)は、徳川家茂に嫁ぐことになった和宮のお守役として江戸に下り、弁天小僧と名を変えて「ある密書を手に入れる」という密命を受けていた。そして、奉公所の同心を勤める南郷力丸(伊礼彼方)は、幕府を守るために密書を探している。また同時に、ある事情で姿を消した許嫁、小夜(龍 真咲)の行方も追っていた。
一方、武家屋敷ばかりを狙う泥棒・日本駄右衛門(松尾貴史)もまた、江戸の町を騒がせているが、ひょんなことから家茂の御庭番の忠信利平(喜矢武)と相まみえる。それぞれの忠義、思いを抱えて活動していた五人だが、やがて「この国を盗もうとしている」連中の企みに気づき、阻止するために力を合わせることに・・・。

早乙女太一演じる弁天小僧菊之助は、実は皇女和宮を護りながら江戸にきた八瀬童子の菊霧。女性にも化けられる美剣士として活躍する。華麗な殺陣や鮮やかなアクションはもちろん、短い時間ながら艶やかな花魁姿も見せて、作品のエンターテインメント性に大きな力を発揮している。また菊霧役での抑えた演技の中に和宮に寄せる想いと献身をのぞかせるなど、魅力的な役に作り上げている。

龍 真咲が演じるのは赤星十三郎で、宝塚の男役にも通じる凜々しさで美少年役がよく似合う。実は南郷の許嫁で、安政の大獄に巻き込まれた武家の娘という役どころだけに娘役姿でも登場。そちらでは楚々とした風情を見せる。激しい殺陣シーンも男性陣にまじってエネルギッシュにこなし、確かな実力と華はさすが。

ミュージカルを中心に翻訳劇や洋物舞台を演じてきた伊礼彼方にとって、初めての時代劇となる本作だが、思いがけないほど鬟も着物も似合って、和物にも馴染んでいる。同心・南郷力丸の熱くて真面目な人柄が伝わるだけに、時代に翻弄される許嫁の小夜との恋が切ない。ショー場面では歌とダンスに大活躍、その他にも心情を歌うナンバーなどで聴かせる。

ゴールデンボンバーの喜矢武豊は、神出鬼没な盗人、実はお庭番の忠信利平役。軽いフットワークとクレバーさを持ち合わせた「出来る男」で、華やかな面差しが和物芝居に映え、台詞の声も良く、役者としても活躍しているだけに安定感がある。松尾貴史の日本駄右衛門とは出会いシーンも含めて良いコンビぶり。

五人のまとめ役とも言える日本駄右衛門には、演技派俳優として評価も高い松尾貴史。度胸と気っぷの良さで江戸の町を守る火消しの頭領らしい懐の深さと実直さがある。とくに後半に駄右衛門の誠実さを伝えるエピソードが登場するが、役柄に相応しい人間性が存在の中に滲み出る。

まさにエンターテインメント時代劇というべき本作ならではの和洋折衷の真骨頂は、劇中に登場する横浜のホテルのショータイム。ポピュラーなジャズナンバーが次々に飛び出して、龍 真咲、伊礼彼方、鈴木壮麻がダンサーたちとともに歌い踊る。黒船来航を背景にした横浜の異国情緒あふれる場面は、楽しさ満点だ。

出演者たちは、白浪五人以外も豪華な顔ぶれが揃っている。開国派商人の瑞帆屋卯三郎役には鈴木壮麻、大奥をとりまとめる天璋院など何役も演じわける加納幸和、老中や年寄・瀧山役の小林大介、老中の安藤信正や土御門藤子役の谷山知宏、攘夷浪人の高杉の安田桃太郎など、実力派が時代劇の重みを支える。また事件を伝える読売(瓦版)では、越塚学と谷水力という生きのいい2人が活躍している。
そして、将軍家茂役は若手俳優の小澤廉、和宮には入来茉里が扮し、政略結婚という形からやがて愛し合う若いカップルの姿を丁寧に演じていて、ある意味ではこの作品の大きなテーマを背負う役どころだけに、この2人の爽やかさは大きなポイントだ。

ダイナミックな映像とジャズを主体にした音楽、スピーディにテンポ良く運ばれていく構成が心地よく、歴史上の事実を挟みながら、想像力をフルに羽ばたかせたストーリーは、痛快でありながらどこかアナーキーな危うさもあって、そこは原典となった「青砥稿花紅彩画」の破滅的な美しさにも通じる世界観と言えるだろう。
エピローグの「稲瀬川勢揃いの場」にあたる場面では、大白浪を背に五人男が居並んで黙阿弥の七五調の口上で見得をきり、大仕事を果たした清々しさのなかで、この先に待つ修羅場へと歩を進めていく。その姿は潔くも晴れやかで、どこまでも格好いい。

【囲みインタビュー】

G2 喜矢武豊 龍 真咲 早乙女太一 伊礼彼方 松尾貴史

初日を前に、囲みインタビューが行われ、脚本・演出のG2、出演者の早乙女太一、龍 真咲、伊礼彼方、喜矢武豊、松尾貴史が登壇した。

──まず驚いたのは音楽がジャズなんですね。
G2 ラテンに影響されているジャズに統一してみようと思いました。五人の盗賊たちがエネルギッシュに活躍するので、しかも時代劇なので、洋楽を取り入れてみようと。今までこういう取り組みはなかったのではないかと。でも悩みまくった結果この形になりました。けっこう面白いシーンができたと思います。特に霧菊の花魁のシーンでジャズをかけたところなど、いい効果が出たと自負しています。
──演じている皆さんは?
喜矢武 基本、僕は音楽には関わりたくないので(笑)、また音楽かい!と思ったんですけど、でもジャズとか面白い試みだと思っています。
龍 とても難しかったんですが、日々、G2さんの愛情だったり、個性的な皆さんと一緒なので。実は全員B型なんですよね。
G2 だから五人が喋ってるとき、誰も人の話聞いてない(笑)。
早乙女 五人揃うシーンは息が合わないんです(笑)。
喜矢武 五人の話なのに五人のシーンが一番ヤバイ(笑)。
G2 その合わなさかげんをお楽しみください(笑)。
龍 私は活劇というのは初めてなんですが、皆さんと一緒に盗賊の物語とその裏側にある人情味とか、その時代とか大切にやれたらと思っています。
──宝塚時代と違って男性陣が沢山いますが。
龍 あまり性別は気にならない。
喜矢武 全員中性的ですからね(笑)。
松尾 いやいやいや。
龍 良い人たちばかりです。
松尾 今、棒読みじゃなかった?(笑)
龍 (笑)毎日楽しくやっております。
早乙女 本当に個性がバラバラで、こんなに異種の人がいっぱい集まってやるという機会はあまりないので、楽しいです。
──早乙女さんは久しぶりの女形はいかがですか?
早乙女 僕は女形では踊りばかりで、お芝居をしたことがあまりないんです。花魁で台詞を発するのも初めてで。
喜矢武 初めてなのにものすごくエロイ声を出すよね。
早乙女 やだ!(笑)
喜矢武 1回乾燥で喉をやられたとき、寂れたスナックのママかと(笑)。
早乙女 ありましたね(笑)。
──色気に参る?
喜矢武 参っちゃってますね~。
早乙女 初めて言われた(笑)。
龍 美しいです。日々美しくなっている。
早乙女 (龍に対して)逆にカッコいいです。
龍 なんか懐かしい感じです。2年ぶりです。
早乙女 そんな前でもなかったんだ。

──久しぶりに男役をやっていかがですか?
龍 男性の中で男役をやるのはどうなんだろう?と思ったんですが、やってみると難しいことはなかったです。
松尾 桜色の着物でお嬢さんの役のときも、舞台の途中まで出るとき男の歩き方をしてるんです。
龍 言わないで!(笑)
松尾 いや、後ろから見てて「かっこいい!」と思いながら。
伊礼 僕らのほうがめめしいですよね。
──伊礼さんはこの舞台はいかがですか。
伊礼 個人的には初の和物で、所作をすべて一から先生に教えていただいて、集まった役者たちも多ジャンルのプロが集まっていて、このデコボコ感がすごく魅力的なので、このデコボコ感を楽しんでいます。
松尾 すごいよね。同じ生物とは思えない(笑)。それはさておき、僕は音楽活劇『SHIRANAMI』に出るのが子どもの頃からの夢だったので(笑)。
全員 ない!ない!
──G2さんは厳しかったですか?
松尾 厳しいです。もともと立ち位置厳守の方なんですが、セリなどもあるし上からも降りてくるし,覚えきれない。
喜矢武 でも松尾さん「危ないから本当に緊張してやらないと」と言った数秒後にめちゃめちゃふざけてました。すぐ稽古場でふざけるんです(笑)。
早乙女 五人で均等に立つところで、俺の目の前に立ってましたからね(笑)。
松尾 後ろから笑い声が聞こえるから、なんだろうと思って振り向いたらかぶってた(笑)。

──楽屋も賑やかですか?
松尾 基本的には楽屋はバラバラなので、劇場に入ってからは会わなくなりました。
G2 稽古中はよく喋ってたよね。
喜矢武 台詞合わせしてる真面目な人もいれば、ゲームしてる人もいました。
──ゲームは誰が?
喜矢武 早乙女太一です。
早乙女 おい!一緒だろ(笑)。今は喜矢武さんの楽屋にずっといます。
喜矢武 自分の楽屋みたいに入ってくるから、僕が集中できないから逃げるんです。僕の楽屋が早乙女太一の楽屋になってます(笑)。
──共演してみていかがですか?
喜矢武 やっぱり勉強になりますね。所作とか教えてくれるし、殺陣がもの凄いんです。僕の悪いところ見つけたりするとすぐ教えてくれる。それがちょっとだけ上から目線で(笑)。いや、1つ1つの動作が全部勉強になります。自分の衣裳すら体の一部みたいに、蹴るときわざわざバサッとやるんです。それがせこいなって(笑)。
早乙女 せこいって(笑)。
喜矢武 衣裳使ってまで派手に見せるという演出ができるので、凄いです。
早乙女 いやいや(笑)。なるべく皆さんに伝えられるものは伝えようと。
──殺陣は慣れていると思いますが、今回とくに大変なことは?
早乙女 五人で一緒に戦うところがけっこうあるのですが、なにせみんな息が合わないから(笑)、そこだけは注意してやりたいなと。千秋楽までにはなんとか(笑)。
G2 猛獣を5匹、檻に飼っているようなものなので、お互いに闘い合う中でなんとかなると思ってます(笑)。
──龍さん紅一点ですが。
龍 でもあまり女性として扱われないんです、G2さんからも皆さんからも。
松尾 いや、美しいですよ。
龍 でもそういうところで気をつかわれたりするのもいやなので。とにかく舞台の一瞬一瞬を楽しんでやりたいなと、今はそれだけです。
──早乙女さんから見て龍さんはいかがですか?
早乙女 いや、素敵です。
龍 噛みそうになってる(笑)。
松尾 ひどい男だな(笑)。
早乙女 素敵です!!(笑)
龍 もういいです(笑)。
──では最後に一言。
早乙女 色んな見せ場や魅力が沢山詰まっています。新年にふさわしく、賑やかに皆さんに元気を持って帰ってもらえるように、エネルギッシュにがんばっていきますので、是非よろしければ観に来て下さい!よろしくお願いします。
全員 観にきてねー!

〈公演情報〉
音楽活劇『SHIRANAMI』
脚本・演出◇G2
ショー演出◇市川訓由
出演◇早乙女太一 龍 真咲 伊礼彼方 喜矢武豊(ゴールデンボンバー) 松尾貴史 
鈴木壮麻 加納幸和 小澤 廉 入来茉里 
小林大介、谷山知宏、谷水力、安田桃太郎、幸田尚子、越塚学、熊倉功、伊藤教人、南誉士広、加藤学、高橋玲 ほか
●1/11~29◎新国立劇場 中劇場
〈料金〉 S席11,000円 A席8,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉 公演事務局 0570-200-114(全日10:00~18:00) 
〈HP〉http://www.shiranami.net

【取材・文/佐藤栄子 撮影/山崎伸康】

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