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現代能楽集X『幸福論』に出演! 瀬奈じゅんインタビュー

撮影:ヤン・ブース

世田谷パブリックシアターの芸術監督・野村萬斎が、能・狂言を土台に現代演劇を創作するシリーズ企画「現代能楽集」の最新作となる、現代能楽集X『幸福論』~能「道成寺」「隅田川」より、が2020年11月29日~12月20日、シアタートラムで上演される。

古典の知恵と洗練を現代に還元し、現在の私たちの舞台創造に活かしていきたいと考え、⽣まれたこのシリーズの第10弾となる今回は、作・演出に近年、演劇賞を⽴て続けに受賞している気鋭の劇作家・演出家の瀬⼾⼭美咲と、たぐいまれな筆⼒をもつ劇作家・⻑⽥育恵が担当。今を⽣きる私たちのための現代演劇を創作する。

「道成寺」では、父・母・息子の幸福な家族がさらなる幸福を激しく求めた結果の悲劇を描き、「隅田川」では、運命的に出逢う3世代の女たちが、誰の目も届かない社会の片隅でありえるかもしれない物語が紡がれる。

出演は瀬奈じゅん、相葉裕樹、清水くるみ、明星真由美、高橋和也、鷲尾真知子という6人の俳優だけで、「道成寺」「隅田川」でそれぞれ異なる役を演じ、それぞれの幸福論を立ち上げる。

「道成寺」では安藤というカルチャースクールの講師、「隅田川」では真鍋夏帆というカウンセラーとして、それぞれ異なる役を演じる瀬奈じゅんが、本作への思いと俳優としての今などを語ってくれた。

本当の人の幸せとは何か、観に来られた方と一緒に考えたい

──今回、参加するにあたって、世田谷パブリックシアターの「現代能楽集」シリーズについて知っていたことや、参加の決め手になったのはどんなことですか?

「現代能楽集」のことは、野村萬斎さんの手がける創作シリーズということで存じ上げていました。世田谷パブリックシアターの作品は、私の好きなものが多いので、出られることをとても嬉しく思いましたし、私の中でしっかりとしたお芝居をしたいという思いも強くあったのでお受けしました。

──作・演出を手がける二人の女性作家、長田育恵さんと瀬戸山美咲さんについてはいかがですか?

お二人の作品はこれまで拝見したことがなくて、今回初めてご一緒するのですが、お二人とも私より少し年下なのですが、同年代なので嬉しいです。私の舞台も観に来てくださって、その時に改めてご挨拶させていただきました。女性の演出家は鈴木裕美さん、小川絵梨子さんとご一緒したことがあるのですが、今回の瀬戸山美咲さんがどんな演出をされるのかすごく楽しみですし、戯曲も演出も、女性ならではの感性というものはきっとあると思いますので、演じる側としてもそれを作品に生かしていけたらいいなと思っています。

──今回の2作品の原作、「隅田川」と「道成寺」についてはどんな感想を抱いていますか。

私は「能」に関わったことがほとんどなくて。宝塚時代に狂言の会で『二人袴』を演じたり、日舞にも触れていたのですが、能には直接触れる機会がなかったんです。野村萬斎さんがNHK『にほんごであそぼ』に出ていらっしゃいますよね。あの番組は息子と一緒によく見ていて、能ではないですけれど、こういう世界観かなと思いながら。それからコロナ禍の自粛で家にいるときYouTubeで能を見ました。
個々の作品については、「道成寺」は、日本舞踊の「京鹿子娘道成寺」を宝塚の大先輩である松本悠里さんが踊られたのを観ていますし、日本舞踊の会などでも何度か拝見しています。「隅田川」はお話が切なすぎて…一児の母としてはたまらないですね。

──『幸福論』というタイトルですが、瀬奈さんの考える「幸福」とは?

ある資料で、能で「狂女」が出てくる物語はたいてい最後は丸く収まるけれど、この作品だけは浮かばれないというか悲しい話になっているというのを読んで、どうしてなのかなぁと。そこから能というものにすごく興味が湧きました。そして『幸福論』というタイトルでありながら、「道成寺」も「隅田川」も幸福なストーリーではない。そこを突き詰めていって、本当の人の幸せとは何なのかということを、観に来てくださった皆様とともに考えていくことがこの公演のテーマなのかなと。
たまたまなのですが、10月7日にアップしたインスタグラムで息子の知育について投稿して、そのハッシュタグに「#幸せは人それぞれ」と書いたんです。何をもってして人は幸せになれるのだろうと。私もこの作品を通して、役者としての幸せや一人の人間としての幸せとは何かを考える機会になると思います。そういう意味では自粛生活をしていた期間に、自分にとって何が必要で、何が必要でないかがすごくはっきりした気がするので、色々なものを削ぎ落としてこの作品に挑みたいと思います。

幸せの価値観=幸福論は人それぞれだと

──プロットで書かれている2作品の役柄、安藤と真鍋夏帆について、今の時点でのイメージとそれぞれの役へのアプローチを聞かせてください。

「隅田川」のプロットをいただいて感じたことは、先ほどのハッシュタグ(#幸せは人それぞれ)の話ではないですけど、他人から「幸せそうだな」「順調そうだな」と見られていても、それぞれ思うことや感じることがあるのだなと。私の役(真鍋夏帆)はカウンセラーとしての仕事も順調、結婚もしていて充実したキャリアウーマンに見えるけれど、闇も抱えているなと。この役を通して、幸せの価値観=幸福論は人それぞれなんだということにアプローチしたいですね。
「道成寺」の安藤の方もキャリアを積んでいる女性だと思うんです。ただ、そこに私が積み重ねてきたキャリアを投影せずに演じてみたいと思っています。瀬戸山さんからは「あて書きです」とおっしゃっていただいて、とても素敵な女性像を打ち出してくださったのですが、せっかく演じるからには、皆さんが私にお持ちのイメージ以上のものを表現できるようにアプローチしたいし、頑張りたいと思っています。

──共演の方々への期待について語っていただきたいのですが。

清水くるみさんとは以前ミュージカルでご一緒させていただいて、すごく聡明で、若いけれどとても頭が良くて、落ち着いていて、とても魅力的な女優さんだと思うので、ご一緒できることがすごく嬉しいです。前回のミュージカルでは、楽屋は一緒でしたが舞台上では何の絡みもなくて。今回は一緒にお芝居できるのが楽しみです。
鷲尾真知子さんはシアター風姿花伝で『THE BEAUTY QUEEN OF LEENANE』を拝見した時「なんて素敵な女優さんなんだろう」と。テレビドラマ『大奥』のイメージが強かったのですが、初めて生の舞台で鷲尾さんの姿を拝見して、「うわぁすごいなぁ!」と冒頭から鳥肌が立ちました。いつかこんな素敵な女優さんとご一緒できたらいいなということが一つの目標でもあったので、共演者のお名前を見た時に「鷲尾さんがいらっしゃる!」と。本当に嬉しいです。
相葉裕樹君は、福田雄一さんと井上芳雄さんのWOWOW番組『グリーン&ブラッグス』のコントでご一緒しました。とても爽やかな好青年で、今回、舞台作品としては初めて共演できるので楽しみです。高橋和也さんは、言わずと知れた男闘呼組! 私、全盛期のファンですから(笑)。大好きです! 明星真由美さんは、同じ事務所(シス・カンパニー)にご所属の小野武彦さんと仲良くさせていただいていて、小野さんから「今度一緒にやるんだよね」と。とても個性的な女優さんなので刺激をいただけそうです。

撮影:ヤン・ブース

ミュージカルとストレートプレイの境目がなくなった

──ミュージカル作品でも活躍する瀬奈さんですが、ストレートプレイとミュージカルで、向き合い方など違いますか?

私は全然変わらないですね。『FUN HOME』(2018年)で初めて小川絵梨子さんの演出を受けた時、すごくおもしろかったんです。絵梨子さんは「まずフリーでやってみて」と。私と共演者の吉原光男さんはミュージカル出身なので、いつも通り客席に向けて歌ったんです。そうしたら絵梨子さんが「ねえ、二人ともどうして前を向いて歌うの?」と。「本当にごめん、ただの疑問なんだけど、なぜなの?」と言われて、二人で「なぜなんだろう?」と。その作品は絵梨子さんが初めてミュージカルを演出された公演だったのですが、私たち以外も、音楽の先生や助手、スタッフは皆さんミュージカル畑の人だったので、みんな絵梨子さんからの質問がおもしろくて。「何故、ここで急に歌になるんですか?」とか、「歌詞をこうしたいんですけど」とか、「ここで曲調が変わる意味は?」といった、ミュージカルにとっては当然のことでも、1つ1つ考えることが、私たちにとっては新鮮な経験でした。

──自然にやっていたことの意味を、改めて考える必要があったのですね?

ミュージカルだと音程や歌詞を間違えないようにとか、この音で移動する、といった段取りなどがあって、どうしても気持ちだけではできないんです。冷静な気持ちの自分がここ(頭の上あたりを指して)にいるのですが、絵梨子さんは「本当に台詞をしゃべるように歌ってください」と。今見たものに対しての反応を大事にする。今こうして話していて、「こういう言い方をしよう、こういう言葉尻にしよう」とか考えてはいませんよね。それと同じように台詞も歌もやってくださいと。そのためには、歌詞を間違えたらどうしようとか、そういう思いをなくしてくださいと。怖いけれどそれを舞台でやろうとみんなで円陣を組んで。その経験をしてから、ミュージカルとストレートプレイの境目がなくなりました。

公私ともに同年代の女性に共感していただけるような

──今後、女優として目指すことは?

私、ないんです。良いのか悪いのかわからないけれど。コロナの自粛期間中に、仕事面で「私は何になりたいんだろう」「どうなりたいんだろう」ってすごく考えました。人前に出ることが長い間なくなった時、これまでずっと応援してきてくださったファンの方や、舞台を楽しみにしてくださっている方に対して、なんでもいいから発信しなくてはと強く思って。初めてZOOMでお茶会というのをやったんです。そのときその収益の一部を寄付できないかなと思って。今、コロナの影響で医療関係への寄付は多いけれど、その他への寄付が少なくなっているという話を聞いたので、小児がんと闘っている子供たちと、そのご家族をサポートするNPO団体に寄付をしたんです。それを4回続けていて、次回で5回目になります。
私は自分が何をしたいのかと考えたときに、とにかく皆さんが楽しんでくださることがしたい、皆さんが笑顔になれることをしたいのだなと。そのためには、いただいた仕事を全部やろうって。ある意味無欲になって、自分に合うとか合わないとか思わずに、「こんな瀬奈じゅんが見たい」と思ってくださる方がいるのならば、それも私の魅力としてお応えしたいなと思っているんです。

──瀬奈さんは福田雄一さんのコメディ作品などでもたいへん好評です。

福田さんのコメディ作品は、最初に『ヤングフランケンシュタイン』(2017年)に出た時、「大丈夫かな?」と思ったんです。一応宝塚のトップだったというイメージがあるので。でも、すごく楽しくて、これも私だよね、と。よく私のこんな面を引き出してくださったなと福田さんに感謝しています。ただ宝塚で20年間、関西で暮らしていましたので、オチがないと怒られるという経験も大きかったのかもしれないですけれど (笑) 。福田さんも、『ヤングフランケンシュタイン』のプログラムに「宝塚の女優にこんなに笑わされている自分が悔しい」と書いてくださって。そんな一面も私だと思いますし、一方で今回の『現代能楽集』のようなお話もいただける。もしかしたら、「こういう女優になる」というよりも、「求められ続ける自分」でいることが目指す目標なのかもしれません。いつまでも求めていただける、その年齢相応の息の長い女優でいたいなと。今回の役もそうですが、公私ともに同年代の女性に共感していただける女性像でありたい。個人の魅力って舞台にそのまま現れると思っています。だからこそ、本名の自分も充実したものでありたいなと思います。

──コロナ禍の自粛を経て、舞台へ取り組む今の心境と、この作品を観に来られるお客様へのメッセージをぜひ。

こういう時期ですので、両手を広げて「観に来てください!」とは言えなくて、「よかったら、体調に気を付けつつ、三密を避けつついらしてください」という言い方になってしまうもどかしさはあります。ですが、私たちは私たちが生きる場所で生きて、皆様の心の襞のどこかに残るような舞台を創りたいと願っていますので、劇場にお越しいただければ嬉しいです。また、やはりライブならではの良さというものがあると思いますので、それを客席に座って感じていただけたら。公演時にはこの状況がもう少し収まっている世の中であることを祈りつつ、体調に気を付けて稽古に励みたいと思います。

せなじゅん○1992 年宝塚歌劇団入団。2005 年月組男役トップスターとなる。宝塚版『エリザベート』で、ルキーニ、エリザベート、トートの 3役を制覇するなど、様々な色を持つトップスターとして絶大な人気を集める。2009年に宝塚歌劇団を退団、同年『エリザベート』のエリザベート役で女優活動を開始。2010 年以降は舞台のみならずテレビドラマにも出演している。近年の主な出演舞台は、『シスター・アクト~天使にラブ・ソングを~』(2014年)、『ア・フュー・グッドメン』(2015年)、『貴婦人の訪問』(2016年)、『エジソン最後の発明』『ヤングフランケンシュタイン』(2017年)、『FUN HOME ファン・ホーム  ある家族の喜悲劇』『シティ・オブ・エンジェルズ』『サムシング・ロッテン!』(2018年)、『細雪』『ラ・マンチャの男』(2019 年)、『黄昏』(2020 年)など。2012 年に菊田一夫演劇賞 演劇賞、岩谷時子賞 奨励賞を W 受賞。

【公演情報】
現代能楽集X『幸福論』~能「道成寺」「隅田川」より
作◇長田育恵(弐「隅田川」)・瀬戸山美咲(壱「道成寺」)
演出◇瀬戸山美咲
監修◇野村萬斎(世田谷パブリックシアター芸術監督)
出演◇瀬奈じゅん 相葉裕樹 清水くるみ 明星真由美 高橋和也 鷲尾真知子
◎11/29~12/20◎シアタートラム
〈料金〉一般:7,500円 高校生以下:3,750円 U24:3,750円(全席指定・税込・未就学児童入場不可) ※ ほか各種割引あり
〈一般発売日〉 2020 年10 月25 日(日)
〈お問い合わせ〉 世田谷パブリックシアターチケットセンター 03-5432-1515(10:00~19:00)
〈公式サイト〉https://setagaya-pt.jp/performances/202011koufukuron.html

 

【取材・文/榊原和子】

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