全てがプロフェッショナルな圧巻のエンターティメント!望海風斗 20th Anniversary ドラマティックコンサート『Look at Me』
当代一の歌唱力を誇り、宝塚歌劇団雪組トップスターとして一時代を画した望海風斗が贈る20周年を彩る新たなショータイム望海風斗 20th Anniversary ドラマティックコンサート『Look at Me』が、東京国際フォーラムホールCで上演中だ(27日まで。のち11月3日~6日愛知・ウインクあいち、 10日~13日大阪・梅田芸術劇場 メインホール、23日~24日福岡・キャナルシティ劇場でも上演))
望海風斗 20th Anniversary ドラマティックコンサート『Look at Me』は、宝塚歌劇団卒業後も、高い歌唱力と表現力でミュージカルの舞台を中心に、活躍の場を広げ続けている望海風斗が、宝塚歌劇団での初舞台から20年を記念して行われる1年ぶりとなるコンサートツアー。構成に放送作家・脚本家として、『サ道』、『タモリ倶楽部』、『義経のスマホ』、『山田孝之の東京都北区赤羽』などを手がける新時代のヒットメーカー・竹村武司。演出に俳優の身体性を重視した演出や、マッピング等を駆使した映像演出に定評があり、ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」シリーズや東京2020パラリンピック開会式の演出で国内外から注目を集めるウォーリー木下。音楽監督に松任谷由実コンサートツアー、CX 系「MUSIC FAIR」「FNS 歌謡祭」の音楽監督の担当や、数多くのアーティストを手掛けるほか、ドラマ「ビーチボーイズ」「人にやさしく」、スタジオジブリ「コクリコ坂から」などの音楽も手掛ける武部聡志氏という、各ジャンルを牽引するスタッフ陣が集結。ミュージカルとコンサートを融合させた、これぞプロフェッショナルの、特別なショータイムとなっている。
ドラマティックコンサートの名にふさわしく、ステージはストーリー仕立てで進行。
望海が扮する、視聴率の低迷により打ち切りが決定した音楽番組の演出家、ひかりは、最終回の収録が終わったスタジオで、片付けられていくステージセットを一人寂しそうに眺めながら「こんな番組にするつもりじゃなかったのに…」と忸怩たる思いに浸っていた。自分の立場や損得を優先する番組プロデューサーの意見に従わざるを得なかった結果が、番組内容も、その成果も到底ひかりが納得いくものにならなかったのだ。そんなひかりの気持ちに気づいていたADの御子柴(石川新太)から、ある提案を持ちかけられたひかりは……
という凝った設定からはじまるコンサートに相応しく、テレビディレクターひかりとしての扮装で登場した望海風斗が、まず会見でステージへの思いを語った。
【囲み取材】
──芸能生活20周年記念のコンサートを迎えるいまのお気持ちから教えてください。
20周年と言っても宝塚歌劇団に18年いて、退団して2年目、初舞台を踏んで20年目の年なのですが、宝塚を退めて2年目という新鮮な気持ちの方がすごく強いので、20周年という言葉がしっくりこないな(笑)という気持ちがしていて。お客様と一緒にコンサートをしながら20年経つんだということを噛みしめられたらいいなと思います。ただ20周年を噛みしめる間もない、始まったらノンストップのコンサートになっているので、いまはただただ無事に幕が開いて、下りることを願っています。
──望海さんは進化し続けているという印象の方ですが、去年のコンサートと比べて今回どんな進化を見せられるとお考えですか?
去年のコンサートはこれから自分がどうなっていくのだろうという、第一歩を踏み出す瞬間を皆様と一緒に経験していきたい、というコンサートだったと思うのですが、今回はこの1年ちょっとで色々な舞台に立たせていただいたのをはじめ、様々な経験をさせてもらっていて。もちろん進化していく部分、宝塚のときとは違うものを感じつつ、でもやっぱり舞台に立つことは変わらないなとも感じていて。今まではがむしゃらに前を向いて走ってきましたが、いまは宝塚時代にやってきたものも、ひとつの自分の経てきたものなんだ、ということをこの1年で感じたので、ここまでは宝塚、ここからは宝塚ではないというような垣根なく、ひとつの望海風斗という人間として織り交ぜてできたらいいな、と思ってこういうコンサートにしました。
──非常に多岐に渡る選曲になっていますね。
ミュージカルの曲が多いのですが、皆さまのお馴染みの曲も入れたり、自分で歌ってみたい曲もミュージカルではたくさん入れています。実はセットリストに入りきらなかった曲がたくさんあって、そこから絞りに絞って最後に選ばれた曲たちで、どれも本当に私自身も歌っていて詰め込み過ぎたなと思うくらい(笑)1曲1曲もボリュームがありますし、通してみるとびっくりするくらいの曲を歌うので、きっと皆さまには楽しんでもらえるのではないかと思っています。
──なかでも特にこだわった部分はありますか?
こだわったと言えば全部こだわったのですが、歌ったことのない曲に挑戦するのももちろんですし、歌ったことのある曲もコンサートで歌うとまた違う色合いになります。ただ作品を振り返って歌うということだけではなくて、コンサートの中でこの曲を歌う時にどうなるのか?にはすごくこだわりました。また演出のウォーリー木下さんが、今回ちょっと芝居仕立てにしてくださっていて、「ひかり」という一人の人間のドラマが入っていて、そのなかにうまく今まで歌った曲たちが入り込んでいるので、そこには少しひかりさんの心情も入っていますし、望海さんの(笑)の心情も入っていて、さらに役の心情も入っているので、このコンサートでしか歌えないというところにはこだわりました。
──お芝居仕立てということで、いまお召しになっているのもお衣裳なんですよね?
そうなんです(笑)コンサートだから、もっとコンサートっぽい衣裳なのかな?と思われたと思うのですが、これが一番ナチュラルな姿です。ただ、ステージでは七変化どころか十変化くらいの色々なお衣裳を着させてもらっています。歌うか着替えるかなんですよ(笑)。ですからきっと一着、一着があっという間に過ぎていってしまうと思うので、皆さまに是非衣裳も楽しんでいただきたいです。本当に今まで着たことがないタイプの色々なお衣裳をデザインしていただけたので、そこも挑戦ですから着こなせるようになりたいです。
──「ディレクター ひかり」という細かい小道具までしっかり作られているんですね。
(ネームタグを見せて)テレビクルーってね。このストラップはグッズにも使用されているのですが、本当にこだわって作ってくださっているので、そういう細かいところにも注目していただきたいです。
──「Look at Me」というタイトルにちなんで、ここは是非見て欲しいというところは?
ファンの方はきっとオペラグラスでご覧になられる方が多いと思うのですが、今回映像も本当に作りこんでくださっていて、映像のなかでしか見られない顔もあると思うので、引きでも観ていただきたいですし、寄りでも観ていただきたい。難しいですけれども、どちらも観て欲しい!という気持ちがあります。
──では楽しみにされているファンの方にメッセージをお願いします。
舞台を通して応援してくださっている方々に元気な姿、舞台を楽しんでいる姿をお見せするのが一番の感謝の気持ちだなと思って、この1ヶ月少し必死の思いで作ってきたコンサートです。是非皆様に楽しんでもらえたらいいなと思いますし、皆様の活力になったら、それが一番の皆様への恩返しだなと思っています。客席と舞台には距離があるかもしれませんが、それでも皆様にお会いできることが私は本当に楽しみなので、できるだけその日、その時にしか出せないものを舞台上で皆様にお届けしたいと思っています。是非いらしてください!
【公演レポート】
そんな会見ののちにはじまったステージには、開幕前に流れている音楽にも実は小粋な仕掛けがあるので、是非余裕を持って客席に座ることをおススメしたいが、ここから舞台は怒涛の展開を見せていく。
※以下、公演内容に触れております。ご観劇前に情報を入れたくない方は、ご観劇後の閲覧をおススメ致します。
STAGEはノンストップに駆け抜ける約90分。と聞くとコンパクトにまとまったコンサートと感じるかもしれないが、これが冒頭からアンコールまで、歌いまくる望海風斗その人をはじめ、キャスト、演奏者、スタッフの全てがプロフェッショナルの輝きに満ちたエンターティメントショーになっていて、見応えの体感としては120分も、それ以上もあったように感じた。それほど物語はしっかりと構成されていて、多彩な選曲に加え、この物語の為に書かれたいくつかのオリジナル曲も、こうしたコンサートの定番になりつつある、主演者が自ら作詞していまの自分の心情を綴った…というものではなく、この作品のために必要な曲でありつつ、ちゃんと根底に「望海風斗」というアーティストの思いも感じられる『Look at Me』のミュージカルナンバーと言えるもので、全てが一部の隙もないプロの仕事を感じさせることが、大きな感動を届けてくれる。
全体は、打ち切りが決まってしまった番組は「ひかりさんが本当に作りたかったものなんですか?プロデューサーやスポンサーの意見や、予算を全く考えなかったとしたら、ひかりさんはどんな番組を作りたかったんですか?」という趣旨の御子柴の問いかけに触発されたひかりが、本当に作りたかったものを自ら実践していくという構成。そのいちいちに、また御子柴がダメ出しをしていくという流れが、ややシニカルなだけに新鮮で、じゃあこれならどう?とひかりが様々なアイディアの詰まったコーナーが展開していくのが実に自然。必然的に全ては望海オンステージになるから、歌っているか着替えているかのどちらか、という本人の言葉がまさしくその通りで、出ずっぱり、歌いっぱなし、踊りっぱなしの望海ワールドが贅沢だ。
しかもこういう主演者の名前を冠したステージの場合、本人が着替える時間をどうつなぐか?がひとつの大きな課題になるのだが、そこは様々な驚きと粋の詰まったウォーリー木下の演出で、シルエットのひかりと御子柴が会話をしているにはじまる、こんなやり方があるのか、という絶妙なつなぎがなんとも滑らか。特にウォーリー演出の大きな特徴として、これだけ多くの映像をカラフルに大胆に用いながら、映像が人間を凌駕しない。あくまでも人が主体で、映像がその魅力を増幅していくという、謂わばウォーリーマジックが舞台を見事に展開していく様が美しい。中でも望海の衣裳にも映像が映りこんで一体になっていく場面は、ことさら幻想的で印象深かった。他にも映像で大切なことを伝えたり、望海の意外な表情も観られたりと、確かに寄りでも引きでも観たいと思うし、観る度に発見があるだろう様々な趣向が楽しい。
そうしたプロが知力を絞って作り上げたステージで、更に心に届くのが、望海その人の枯れることを全く知らないと思わせる、芳醇な歌声だという事実は、感嘆するを通り越して全身の細胞が喜んでいるという感覚に浸らせてくれる。
ひかりが本当に作りたかった番組は【#原点のニューヨーク~#ブロードウェイメロディ】からはじまる。大定番のナンバーから、ここに挑戦してきたか!というナンバーもあり、いつか望海がこの役を演じているのを観たいなという気持ちが募る。特に自身がアデレイド役で出演した『ガイズ&ドールズ』の主人公であるギャンブラー・スカイのビッグナンバー「Luck be a lady」は、サラ役を演じた明日海りおもいつかは…と夢を語っていたように、宝塚歌劇団の元男役なら、誰しもが歌ってみたいと思うナンバーだろう。望海は鮮やかな早変わりのバンツスタイルでちょっとニヒルな色合いも込めての披露だったが、宝塚の男役のままでは決してなく、けれどももちろんアデレイドを演じていた望海でもないという、まさにいまの望海風斗が歌う「Luck be a lady」になっていたのが印象的。囲み取材で述べた「ここまでは宝塚、ここからは宝塚ではないというような垣根なく、ひとつの望海風斗という人間として織り交ぜてできたらいいな」を言葉通り実践しているのが素晴らしかった。
そこから【#日本の歌~#プレイバックソング】へ。日本の歌謡曲、Jポップの懐かしい曲が次々と続く。パワフルな「君は薔薇より美しい」もいいし、作詞・作曲家も歌い手にも強固なイメージが残っていて、なかなか上手なカラオケ以上の効果をあげるのが難しい有名曲も、ちゃんと望海が歌う楽曲になっているのが嬉しい驚き。前述の映像効果の美しさと共に、選曲の緩急も快調だ。
【#回想~#JUST Look at Me ~#LIFE】では宝塚時代の望海の代表曲というよりも、本人のテーマソングに近い「Music is my life」から、退団後に出演したミュージカルや、ガラコンサートでのミュージカルナンバーが続く。『IN TO THE WOODS』『next to normal』『ガイズ&ドールズ』と、作品選定も役柄のチョイスにも抜群の自己分析能力を感じさせる望海が、作品のなかで渾身の思いを込めて歌った楽曲たちが、確かに更に進化している上に、コンサートという形態でピックアップして歌うという形だからこその表現も多く惹きつけられる。
ここからタイトル『Look at Me』の由来、そして続く未来に向かう【#モノローグ】、【#GOING ON】、そして【アンコール】まで『Look at Me』という作品の内容と、望海自身の思い出、未来への希望が怒涛のように流れていく。ファーストコンサートでいきなり美しい高音を響かせて驚かせてくれた『モーツァルト!』からは、待ってました!の「僕こそ音楽」を披露して「私こそ音楽」「Music is my life」の望海そのもの。これらの楽曲と今回のコンサートで書き下ろされた新曲が綺麗なネックレスのようにつながっていく様は、音楽監督・武部聡志の手腕の賜物だろう。ドラマ部分を引っ張り、軽やかなタップも披露した石川新太を筆頭に、伊藤わこ、榎本成志、高倉理子、隼海惺、松島蘭、りんたろう、渡辺崇人も芝居にコーラスにダンスにと八面六臂の活躍でステージを盛り上げ、ドラマティックコンサートという名の、今まで観たことがない完璧なエンターティメントショーは幕を下ろした。あまりにも贅沢で、プロフェッショナルな時間だった。
何よりも、このボリュームたっぷりのステージで、歌い続ける望海がむしろ後半になるに従って、更に声が出てくる感覚には、ただ呆気にとられるような気持ちにもなった。汲めども尽きぬとはまさにこのことで、男役の音域と女性の高音の切り替えに全く苦労のあとを感じさせない稀有な存在というだけでなく、むしろ低い音域は更に深くなめらかに、高い音域はより力強く伸びやかに進化している、歌い手としての望海風斗の無限の可能性を改めて感じることができた。囲み取材によれば今回披露されたのは「セットリストに入りきらなかった曲がたくさんあって、そこから絞りに絞って最後に選ばれた曲たち」だそうだから、その惜しくも今回は見送られた楽曲を是非次の機会に聞きたいと思える、ミュージカルスターとしてだけでなく、アーティストとしての望海風斗に大きな期待が広がるステージだった。彩凪翔(東京)、浦井健治(大阪)と所縁のゲストを迎える公演もあり、配信も決定した『Look at Me』世界の広がりがますます楽しみだ。
【公演情報】
望海風斗 20th Anniversary ドラマティックコンサート『Look at Me』
構成:竹村武司
演出:ウォーリー木下
音楽監督:武部聡志
出演:望海風斗
石川新太 伊藤わこ 榎本成志 高倉理子 隼海惺 松島蘭 りんたろう 渡辺崇人
●10/20〜27◎東京国際フォーラム ホールC
〈料金〉S席 ¥11,000 / A席 ¥7,500(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉サンライズプロモーション東京:0570-00-3337(平日12:00~15:00)
●11/3〜6◎愛知・ウインクあいち
〈料金〉S席 ¥11,000 (全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉中京テレビクリエイション:052-588-4477(平日11:00~17:00)
●11/10〜13◎大阪・梅田芸術劇場 メインホール
〈料金〉¥11,000 / A席 ¥7,500 / B席 ¥5,500(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉キョードーインフォメーション:0570-200-888(平日・土曜 11:00~16:00)
●11/23〜24◎福岡・キャナルシティ劇場
〈料金〉¥11,000(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉キョードー西日本:0570-09-2424 (平日・土曜 11:00-17:00)
〈公式サイト〉https://nozomi210.com/lookatme/
【ゲスト出演情報】
【東京公演】
●10/24 18:00
●10 /25 18:00
ゲスト:彩凪翔
【大阪公演】
●11/10日18:00
●11/11日13:00/18:00
ゲス卜:浦井健治
【配信情報】
●10月26日(水)18:00公演 「Look at Me」レコーディング風景の映像特典付
※配信開始時間は、開演の30分前。アーカイブ配信なし。
【チケット料金】
視聴チケット:3,800円(税込み)
【チケット取り扱い】
PIA LIVE STREAM(チケットぴあ)
https://w.pia.jp/t/nozomifuto-20thanniv/
【取材・文・撮影(囲み)/橘涼香 舞台写真撮影/岩田えり】
Tweet