橋爪功の主演で、ある父を巡る哀しい喜劇『Le Pere 父』開幕!
フランス演劇賞最高位のモリエール賞最優秀脚本賞ほかを受賞、ブロードウェイのトニー賞、英国のローレンス・オリビエ賞で主演男優賞を受賞した傑作『Le Pere 父』が、2月2日に東京芸術劇場 シアターイーストで初日を迎えた(24日まで。兵庫、上田、高知、名古屋、松本公演あり)
本作は、フランスの気鋭の演出家ラディスラス・ショラーによって2012年にパリで初演され、14年にはフランス最高位の演劇賞・モリエール賞最優秀脚本賞のほか数々の賞を受賞した。英語版に翻訳された後には、ウエストエンドやブロードウェイのほか世界30カ国以上で上演され、トニー賞、ローレンス・オリビエ賞の主演男優賞など各国の主要な賞を受賞、絶賛された。見逃せない注目作がフランスオリジナル版のラディスラス・ショラーの演出で、ついに日本初演となった。
本作の主人公、認知症の症状にある父親・アンドレは、これまでに各国の名だたる俳優たちが演じてきた。日本初演となる今作でアンドレを演じるのは橋爪功。その娘・アンヌを若村麻由美が、また2人の周辺の人々を、元宝塚歌劇団トップスターの壮一帆、進境著しい太田緑ロランス、実力派として定評のある今井朋彦と吉見一豊が演じている。
【ストーリー】
80歳のアンドレが1人で暮らすアパルトマンに、娘のアンヌが駆けつける。若い看護師が泣きながら彼女に電話をしてきたため、父に何らかの異変を感じ、行くはずだった旅行を急きょ取りやめてやって来たのだった。アンドレは看護師を自分の腕時計を盗んだ悪者呼ばわりし、自分は1人でやっていけるから看護師の助けなど必要ないと言いはる。しかし、アンヌに指摘されると、その腕時計はいつもの秘密の場所に隠してあった。なぜアンヌは誰も知らないはずの自分の隠し場所を知っているのか……。
その公演初日を迎えて、演出のラディスラス・ショラー、出演者代表として橋爪功、若村麻由美のコメントが届いた。
【コメント】
演出:ラディスラス・ショラー
私たちの仕事の成果を舞台で見ることに胸躍らせています。同時に、日本の観客がこの作品にどのように反応するのか、非常に興味があります。フランスのように笑うのか?それは同じ個所で?私の演出作品が母国からこんなに遠い場所で上演されるのは初めてなのです…。
稽古は、率直に言って、素晴らしくうまくいきました。言語の違いは、制作側が選んだ優秀な通訳のおかげで障壁とは感じませんでした。フランスと同じリズムで仕事をし、日本の俳優の傾聴力や、フランス人である登場人物を体現する能力に感銘を受けました。そして、橋爪さんと若村麻由美さんは、非常に違う種類の俳優だと思いました。麻由美さんは人の話を聞き、パフォーマンスの完璧さを追求しつつ、役に入り込むのに時間をかけます。橋爪さんは稽古のたび、私の提案の方向性に沿いながらも、何かしら違うことを編み出します。この2人のは俳優の共演は、間違いなくマジカルなものになるでしょう。
フランスの偉才フロリアン・ゼレールの戯曲の公演をぜひ観に来てください。彼のドラマティックな文体が、今回素晴らしいチームによって演じられます。もろく複雑で非常に人間的な登場人物たちに、皆さんは必ず自分自身を見出すことでしょう。時には笑うことでしょう。そして、私自身と同じく、皆さんがこの「父」に心揺さぶられることを願っています。
アンドレ役:橋爪功
日本の多くの俳優さんにラッド(ラディスラス・ショラー氏)の演出を経験してほしいと思うほど、明快で明晰な演出でした。ラッドは俳優への演技指導もとても的確で、演劇への愛に満ち溢れた素敵な演出家です。
ラッドと共演者と共に地道に稽古を積み重ねる事ができました。セリフが完全に入っていない時は共演の皆さんにはご迷惑をおかけしたこともあり、申し訳ありませんでした(なんてね、謙虚です)。
多くの方々に劇場にいらしていただき、この作品をお楽しみいただきたい。何かしらお持ち帰りになれるモノがあると思います。
アンヌ役:若村麻由美
初来日のラッドは、言語の壁を超え、演者の内面を見抜いて次々と具体的に解決する、作品と出演者への愛に溢れた演出家です。全稽古が終了した時、橋爪さんがおっしゃった「イイ稽古だった」の一言に思わず涙ぐんで声をつまらせたラッドを忘れられません。
共演の皆様は、演出家の言葉を即体現出来る実力派揃いで刺激的なお稽古場でした。橋爪さんのアンドレは卓越した技術と魂を刻む圧巻のJAZZ演奏のようです。胸をお借りして、娘アンヌの苦悩と選択を多彩に描きたいと思います。
この作品は、父親の錯綜する記憶の混乱を観客も同じように体験するスリリングな芝居です。人と時系列の辻褄が合わないのは当然なので、安心して笑って頂き涙して頂ければ、大きな物を持ち帰って頂けると思っております。
〈公演情報〉