お芝居観るならまずはココ!雑誌『えんぶ』の情報サイト。

なんでもありのパワーで作る新たな『エニシング・ゴーズ』紅ゆずる×原田諒インタビュー

楽しく陽気なストーリーをジャズのメロディーとダンスで魅せるミュージカル・コメディの傑作『エニシング・ゴーズ』が、8年ぶりに演出・キャストを一新して、8月に明治座で上演される。
数々のミュージカルや映画作品で名曲を残した巨匠コール・ポーター最大のヒット作であり、1934年のブロードウェイ初演から80年以上経つ現在も世界各国で上演され、多くの観客を魅了している作品が、娯楽の殿堂明治座でどう花開くのか。

主演を務める元宝塚歌劇団星組トップスターで現在女優として大活躍中の紅ゆずると、宝塚歌劇団気鋭の演出家として活躍する原田諒が、新たな舞台への意気込みを語り合ってくれた「えんぶ8月号」のインタビューをご紹介する。

リノ・スウィーニーと紅ゆずるを重ね合わせて

──この作品のオファーを聞いた時の気持ちから教えてください。

 『エニシング・ゴーズ』の主演をというお話を頂いた時には本当に驚き「私でいいんでしょうか?」という気持ちでした。でも底抜けに明るいヒロインのリノは紅さんにピッタリの役柄なんです! ととても熱いオファーを頂き、そんなに言って頂けるというのはとても光栄なことですから、挑戦してみようと決心しました。

原田 僕も驚いたのと同時にとても嬉しかったですね。『エニシング・ゴーズ』という作品が大好きでしたし、特にリノ役が紅さんでというお話でしたから、これはとても面白いものになるのではと感じました。

──その紅さん主演の『エニシング・ゴーズ』をどう創ろうと?

原田 日本での上演においては彼女は三代目のリノで、僕は四代目の演出家になりますが、紅さんはじめ今回のキャストの皆さんの魅力を最大限に生かした、新たな潤色・演出での新作として取り組みたいと思っています。1934年にブロードウェイで初演されたこの作品は、丁度、オペラやオペレッタからミュージカルに移り変わっていく時代、いわばミュージカル黎明期の作品です。ですからどのナンバーも、そういったクラシック音楽と当時流行のジャズのテイストが絶妙にブレンドされていて、現代では生み出せないような素晴らしい曲ばかり。それでいて音楽だけに頼った作りではなく、きちんと芝居としても表現しなければならない構成になっているブロードウェイ・ミュージカルの王道のような作品です。そういった良さを決して失う事なく、さらにショーアップして2021年に上演するに相応しい作品にしていきたいと考えています。コメディ作品ですが、いわゆるお笑いの楽屋オチ的なものではなく、エレガントで上質感のあるミュージカルに仕上げたいですね。

──その中でリノ役をどう演じたいですか?

 大地真央さんや瀬奈じゅんさんの上演を覚えていらっしゃる方も多いと思うのですが、原田先生ともご相談の上で、私の感性が生きるリノ役にしていくことが、2021年に私が演じさせて頂く意味だと思っていて。キャストも大変豪華で魅力的な方ばかりですのでいま先生がおっしゃった通り、このメンバーだからこそできる『エニシング・ゴーズ』であり、リノでありたいなと思っています。

原田 そう思います。紅さんが宝塚を退団後、彼女にぴったりの作品で、またこうしてご一緒できることにも不思議な縁を感じます。僕と紅さんは宝塚歌劇団に一年違いで入団しているんですが、生まれ育った場所もとても近くて…。

 子供の時になんで会っていなかったんだろう? と思うくらいなんです。同じ商店街の話が通じる(笑)。

原田 そうそう(笑)。ですからそういう僕から見ると、宝塚屈指のコメディエンヌと言われていた彼女はユニークなだけではなく、とても繊細で情に厚い、すごく思いやりのある人なんですね。特に宝塚の下級生の頃は、決して成績上位の優等生、スター候補生ではなく、むしろ下積みの時期が長かったように思います。ですが、そこで経験したことが、他のスターにはない広い視野を持つことに繋がったのだと思うし、だからこそ人の弱さや痛みもわかるんだと思います。そういった経験が。紅ゆずるというスターの稀有な個性を形成したのではないでしょうか。そんな紅さんが宝塚を卒業し、女優として初めて挑戦するブロードウェイ・ミュージカルですから、彼女の魅力と個性をリノに重ね合わせて、どこまでが紅ゆずるで、どこまでがリノ・スウィーニーかという、これまでにない『エニシング・ゴーズ』になればと思っています。

紅ゆずる=『エニシング・ゴーズ』だと思っている

──紅さんにとって「演出家・原田諒」はどんな存在ですか?

 宝塚の下級生の頃に出演したショー作品で、ラインダンスにさえ入れなくて、プロローグのあとの出番がパレードだけということがあったんですけど。

原田 そんなことあった!?

 一度だけね。その頃原田先生も演出助手として入ってきたはずなのに、いつ見てもコピー機の前でコピーを取っている。そんな頃からずっと一緒にやってきて、私はトップになり、先生は数々の受賞歴を誇る押しも押されもせぬ演出家になられて。

原田 やめて下さい!(笑)

 そんな同じ原風景を見て来た、流れる血が同じだと思える先生と今回初ミュージカルを作れるので、思ったことやアイディアを遠慮なく言える、お互いにセッションしながら創れるのは幸運だと思っています。お互いの相乗効果でどんどん盛り上げていきたいです。

──『エニシング・コーズ』=なんでもあり、ということで、お二人がなんでもありから連想するものはなんですか?

原田 紅ゆずるですね。シリアスからコメディまで、表現者としてとても熱いものを持っていて、すべてを「紅色」にしてしまえる。個性のある人が少ない現代において、そういった個性は彼女ならではのものですから、僕は『エニシング・コーズ』=紅ゆずるだと感じます。こんな時代だからこそ心は贅沢に、この世の中の暗い空気を吹き飛ばす底抜けに明るい、楽しい作品にしたいと思っています。劇場はハレの場、パワースポットですから、そこで是非皆さんに観て、感じて頂きたいです。とにかく劇場にいらして元気になって頂ければ嬉しいです。

 私は何かを得る為に行動するのは、人を傷つけない限りにおいて、なんでもありだと思っています。やっぱりすべては気の持ちようから始まりますし、こうありたいと願ってもできないことが多いと思っている方も多いかも知れませんが、それでも思い続ける、信じ続ければ必ずできるんです! ですからこの作品の「なんでもあり」を通じて、皆様にもそんなパワーをお届けしたいし、皆様も「よし今日は私が『エニシング・ゴーズ』をなんでもありパワーで盛り上げてやるぞ!」という気持ちで劇場に来ていただきたいです! 一緒に船に乗って楽しい時間を共有しましょう!

原田諒 紅ゆずる

くれないゆずる○大阪市出身。2002年に宝塚歌劇団に88期生として入団し初舞台を踏む。その後星組に配属され、2016年星組トップスターに就任。幅広い役柄を演じられる男役スターとして魅了した。19年『GOD OF STARS-食聖-』『Eclair Brilliant』東京宝塚劇場千秋楽をもって退団。女優としてスタートを切り、テレビ、舞台を中心に様々な活躍を続けている。近年の主な舞台作品に 『紅ゆずる 1st CONCERT 紅‐ing!!』『「熱海五郎一座」新橋演舞場シリーズ第7弾東京喜劇『Jazzy(じゃじぃ)なさくらは裏切りのハーモニー ~日米爆笑保障条約~』等がある。

はらだりょう○大阪市出身。同志社大学在学中の2003年宝塚歌劇団入団。2010年『Je Chante-終わりなき喝采-』の作・演出でデビュー。『華やかなりし日々』・『ロバート・キャパ 魂の記録』(共に12年)で、第20回読売演劇大賞優秀演出家賞、『For the people-リンカーン 自由を求めた男-』(16年)で第24回読売演劇大賞優秀演出家賞・優秀作品賞、『ベルリン、わが愛』(17年)・『ドクトル・ジバゴ』(18年)で第43回菊田一夫演劇賞、『ピガール狂騒曲』(20年)で第75回文化庁芸術祭賞演劇部門優秀賞・新人賞、第28回読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞。そのほか主な作品に『雪華抄』、『チェ・ゲバラ』、『NICE WORK IF YOU CAN GET IT』など。日本美の粋を魅せた舞踊絵巻から社会派ミュージカル、ブロードウェイ・ミュージカルの潤色・演出まで幅広いジャンルの作品を手掛け成功を収めている。また近年は宝塚歌劇のみならず、『ふるあめりかに袖はぬらさじ』、『おかしな二人』、オペラ『椿姫』など、次々と活躍の場を広げている。

【公演情報】
ブロードウェイ・ミュージカル
『エニシング・ゴーズ』
作詞・作曲:コール・ポーター
オリジナル脚本◇P.G.ウドハウス&ガイ・ボルトン/
ハワード・リンゼイ&ラッセル・クラウス
新脚本:ティモシー・クラウス&ジョン・ワイドマン
演出・潤色:原田諒(宝塚歌劇団)
翻訳・訳詞:青井陽治
出演:紅ゆずる/大野拓朗 廣瀬友祐 愛加あゆ/一路真輝/平野綾 市川猿弥/陣内孝則 ほか
●8/11~29◎明治座
〈料金〉 S席(1・2階席)13,500円  A席(3階席)6,500円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈お問い合わせ〉明治座チケットセンター 03-3666-6666(10:00~17:00)
〈公式サイト〉https://anythinggoes2021.com/index.html
※新型コロナ感染症緊急事態宣言のため8月1日から9日まで公演中止に、また一部夜公演も中止になっています。

【全国公演スケジュール】
●9/4~12◎名古屋・御園座
〈お問い合わせ〉御園座 営業部 052-222-8222
●9/17~26◎大阪・新歌舞伎座
〈お問い合わせ〉新歌舞伎座テレホン予約センター 06-7730-2222
●9/30~10/5◎福岡・博多座
〈お問い合わせ〉博多座電話予約センター 092-263-5555

 

【文◇橘涼香 撮影/中村嘉昭 衣装:MSGM/アオイ 問合せ先/アオイ  tel:03-3239-0341(代)】

記事を検索

宝塚ジャーナルの最新記事

『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』井上芳雄最終日の写真到着&再演発表!
稲垣吾郎主演舞台『多重露光』追加キャスト決定!
まもなく開幕!ミュージカル『アナスタシア』稽古場レポート&写真到着!
ミュージカル・ピカレスク『LUPIN ~カリオストロ伯爵夫人~』のメインビジュアル公開! 
「祭シリーズ」9年ぶりに出演!上口耕平インタビュー

旧ブログを見る

INFORMATION演劇キック概要

LINKえんぶの運営サイト

LINK公演情報