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熱海五郎一座の新作『Jazzy(じゃじぃ)なさくらは裏切りのハーモニー ~日米爆笑保障条約~』で退団後の初舞台に挑む!紅ゆずるインタビュー 

東京の喜劇を追求している「熱海五郎一座」新橋演舞場シリーズ第7弾、東京喜劇『Jazzy(じゃじぃ)なさくらは裏切りのハーモニー ~日米爆笑保障条約~』が、5月30日~6月27日新橋演舞場で上演される。

「熱海五郎一座」は、練り込まれた台本を喜劇役者がきちんと演じることによって生まれる“表現としての笑い”を追求して、2004年に伊東四朗座長のもと旗揚げした「伊東四朗一座」が、伊東のスケジュールがどうしても合わない中、三宅裕司が座長として継承し、「伊東ならぬ熱海」「四朗ならぬ五郎」という洒落で命名、2006年に旗揚げされた劇団。東京の喜劇・軽演劇をベースに、音楽もふんだんに取り入れた最高のエンターテインメントとして、毎年多彩なゲストを交えて好評を博してきた。2014年にはついに伝統ある新橋演舞場に進出。1ヶ月で5万人を動員する大成功をおさめ、以降、新橋演舞場のシリーズ演目として定着している。

この度上演される第7弾、東京喜劇『Jazzy(じゃじぃ)なさくらは裏切りのハーモニー ~日米爆笑保障条約~』は、2020年6月に上演予定だったが、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、全公演が中止に。そして1年後の2021年、ついに同じメンバーでの上演が決定した。太平洋戦争で日本が勝っていたら?という逆転の発想で描かれる、歌・ダンス・アクションが多彩に盛り込まれた捧腹絶倒の喜劇になっている。

そんな作品にゲスト出演するのが、元宝塚歌劇団星組トップスターで、本作で退団後の初舞台を踏む紅ゆずる。宝塚歌劇団時代から優れたコメディエンヌとして高い評価を得てきた紅が、東京の喜劇にどう挑むのかに大きな注目が集まる中、公演への抱負やこの1年間で感じた多くのことを語ってくれた。

人に笑ってもらえることが本当に好き

──待望の上演決定ということで、いまのお気持ちはいかがですか?

コメディ作品に対しては宝塚歌劇団在団中からずっと興味があったんです。私は人に笑ってもらえることが本当に好きでしたし、観劇した方に「楽しかった」と言ってもらえることが、舞台を務める充実感にもつながっていたんですね。ですからアドリブなどによる瞬発的な笑いではなく、練りに練った芸術としてひとつの作品を仕上げて「どうですか?面白いでしょう?」と持っていく。笑いに対する超プロフェッショナルな方々とご一緒できることは、私にとっても大きな財産になると思うので、心して舞台に立ちたいです。

──当初予定の2020年の上演から、1年が経過した心境は?

このポスタービジュアルも宝塚を退団してすぐに撮影したもので、軍服と言っても男役時代には避けていたAラインの衣裳なので、その時の自分としては女性の軍人のつもりだったのですが「背中を踏んでいる設定で」と言われてこのポーズになりまして。元男役でなければ絶対にすぐには出ないポーズだと思うので、1年を経た今撮影したとしたら、また全く違うものになったのかなとは思いますね(笑)。ただ、女優になったからには男役を払拭しなければならないという気持ちがずっとあって、意識的にスカートを履くことからはじまって、色々とやってきたのですが、ある時、男役経験があるからこその女優、むしろその蓄積をプラスに考えていいんだ、この個性を自分の強みだと考えないともったいないと思ったんです。自分としてはひとつの世界でやりきったという想いもありますし、宝塚にも男役にも強いリスペクトを感じているからこそ、自分の経験を生かしていきたいと思えるようになりました。ですから、いまはこの公演でもう一度軍服が着られることがとても嬉しいです。

宝塚で過ごした日々があったからこそ、いまの紅ゆずるがいる

──そう伺うと、紅さんにとって、ある意味でとても良い時期の上演になったのかな?と思いますが、役柄についてはいかがですか?「元星久美」という役名から、非常に攻めているなと感じますが。

よく考えられますよね、この役名ね。すごいと思いました!「もとほし・くみ」「元星組」ですから!(笑)。「元花久美」でも、「元月久美」でもいける、何組の出身者でも大丈夫ですね!(笑)。でもだからこそ、私というよりは、この役柄には「宝塚歌劇団のトップスターだった」という出自が、喜劇として大きく関わってくるんだと思うんです。紅ゆずる個人をご存知ない方でも「宝塚歌劇団星組でトップスターだった人なんだ」という経歴を聞かれたら、「あの羽根を背負っていた人」という漠然としたイメージは持たれると思うんです。ですから、その求められるイメージをきちんと踏まえた上で、如何に自分の個性を出していくか。初めて私をご覧になる方に「紅ゆずるってこういう人なんだ」と思ってもらえるように、皆様とのセッションを繰り返していきたいです。まだ、構成・演出の三宅裕司さんと役柄について深くお話する機会はないのですが、とにかく台本が本当に面白いんです! 台本を読んでいるだけの段階で、こんなにも面白いと思えるのは素晴らしいと思いますし、しかもこの1年の間にその本を更に練り直されていて。ここにもギャグを入れられると思うところには全部書き加えられたとおっしゃっていました。それを実際のお稽古期間で精査して、厳選していくということなので、どこまでも貪欲な座長の率いる「熱海五郎一座」に入れていただけたのは本当に光栄なことだなと思います。私もしっかりついていきたいです。

──いま、男役経験を生かさないともったいない、というお話がありましたが、そういう心境に至るきっかけのようなものはあったのですか?

宝塚の男役って、ほんの少しでも女性要素が覗いたらダメなんです。中性的、フェアリー的であればOKなのですが、女性っぽいなとお客様に思わせてしまうのはNGでした。そこを十何年間も突き詰めてきた人間が、いくら退団したからと言って、「全然女性的じゃないですね」と言われるのは当然だろうと。それを払拭しないといけないとただ必死になっているのでは、自分が可哀想だし、宝塚歌劇団という一流の劇団で学んだこと、この角度で座った方が美しく見えるとか、こう振り返った方が絶対に綺麗だななど、宝塚でしか会得できなかったものが私の中にはたくさんあるんです。それを全てゼロにしようとするのでは、私の宝塚人生はなかったものと同然になってしまう。でも宝塚で過ごした日々があったからこそ、いまの「紅ゆずる」がいるわけで、その土台となる、自分の青春を全て懸けてきたところで得たものを大切に女優というお仕事をしていきたいと思いました。
具体的にお名前をあげさせていただくとすると、例えば天海祐希さんは「カッコイイな」と思える女優さんですよね。もちろん天海さんはとても美しい方ですが、「美しい」「綺麗」「カワイイ」だけではなく、まず「カッコイイ」と思える女優さんだからこそ「理想の上司」のイメージを皆様から持たれているんだと思います。また真矢ミキさんのとてもスカッとしたところなども、宝塚の先輩が築かれた素敵な女優像として憧れます。特に私は黒木瞳さんと、ありがたいことに様々なご縁をいただけているのですが、黒木さんも宝塚の話をとてもよくしてくださって、やっぱり宝塚が「原点」として生きていらっしゃるんだと思えて。それはきっと宝塚出身の方々皆さんに共通していて、だからこそ○○周年の時には皆が集まってくる。ですから私もその「原点」を大切に、男役で学んだことを生かしていきたいんです。だからと言って、男役っぽい役をやっていきたいという気持ちは全くないですし、そういう方向性を求めているのではないのですが、培ってきたものを大切に、私の個性として捉えていただければと思っています。

360度どこから見ても面白いものを追求したい

──「東京喜劇」ということですが、東京の笑いについてはどうですか?

関西の笑いってどこかで力業なところがあります。この手段で笑わせるんだ!というひとつの方向性をとことん推し進めていく。でも東京の笑いには、あの手この手で色々な方向から攻めていく感覚があります。その土地ならではの笑いというものが確実にありますし、私は関西の人間で、共演する横山由依さんもそうなので、関西の血が流れている二人が「東京喜劇」に出ることで、どういうものが出来上がるのかが私も楽しみです。

──宝塚では同じ作品を東西で上演していますが、その時にも関西と関東の笑いの違いは感じていましたか?

それは全然違います。関西の方々は爆笑して下さるんです。劇場にきて、ましてそれが喜劇なら「笑わな損」という感覚があります(笑)。「チケット代のもと取らな損」とお客様ご自身が積極的に笑ってくださるというか。それが東京公演になると、もちろん笑ってはくださるのですが、品が良い笑い方なんです。「ふふふ」というくらいの。ですから喜劇作品の時には「東京公演になったらここで大きな笑いは起きないからね」と、関西での上演の時よりは台詞と台詞の間を詰める、という計算をして作っていたほど笑いの質が違いますので、東京での笑いを追求していきたいです。これだけ笑いに対してエキスパートな方々と「東京喜劇」と銘打った舞台に共に立たせていただいて、私のところでだけ笑いが起きないなんてことになったら申し訳なさすぎるので。私が「東京喜劇」を壊すわけにはいかない!というプレッシャーを感じています。

──天下一品のコメディを披露していた紅さんがですか?

それは宝塚時代のことで!  確かに宝塚では「次の作品はコメディだけど、皆大丈夫かな…」というような気持ちはありましたよ!  でも今回は、面白いことが当然のプロフェッショナル集団の中にゲストとして出ている訳ですから、これは絶対に外せないという感覚があります。その上で、宝塚はお客様に対して、立ち方ひとつをとっても「如何に美しく見せるか」をとことん追求するところ、360度どこから見ても美しくないといけないところなので、そこで培ってきたものは活かしつつ、360度どこから見ても面白いものを目指していきたいです。笑いに対する期待度が大きいだけに、その期待を裏切らないものにしなければと思っています。

──先ほどもお話に出ました、もう一人のゲストの横山由依さんについてはいかがですか?

すごく可愛らしい方です。AKB48の総監督、あれだけの人数をまとめあげてきたのは本当にすごいなと。一方で私にも80人ほどいる宝塚のひとつの組のトップスターを務めさせていただいた経験がありますから、お互いに相通じるものはあるのかな?とは思っています。しかも同じ関西人ですから、これからの稽古で深く知り合えるのがとても楽しみです。

──そんなお二人がゲストとなる新たな「東京喜劇」に期待が高まりますが、では改めて公演を楽しみにしている方々にメッセージを。

「熱海五郎一座」のファンの方々も多くいらっしゃると思いますし、そこに参加させていただけることを本当に光栄に思います。この舞台を経て「紅さん、もう一回出てくれませんか?」と言っていただける役者でいたいということが自分の目標としてあるので、その気持ちを持って挑みたいです。三宅さんに「紅さん変わってるね~」「面白いね!」と言われるように励んでいきたいです。まだ世の中が平穏に戻ったとはとても言えない状況で、お客様は笑いを求めて劇場にきてくださる訳ですから、「来て良かった!」と必ず言っていただける、人生を豊かにできる爆笑コメディに仕上がるように努力していきますので、どうぞよろしくお願い致します!

 

くれないゆずる○大阪府出身。2002年 宝塚歌劇団に入団。星組に配属。研究科七年(初舞台から七年目)までのメンバーだけで上演する新人公演で主演した『THE SCARLET PINPARNELL』のパーシヴァル・ブレイクニー役で一躍注目を集め、以後スターダムを駆け上がり、2016年星組トップスターに就任。トップ披露公演として再び伝説の『THE SCARLET PINPARNELL』のパーシヴァル・ブレイクニー役を好演したほか、あの世を華やかに描いた『ANOTHER WORLD』など、紅ゆずるでなければ生まれなかった数々の作品で躍動した。2019年『GOD OF STARS─食聖─』『Éclair Brillant(エクレールブリアン)』で惜しまれつつ宝塚歌劇団を退団したのち、女優として活動を開始。8月には明治座からスタートする、ブロードウェイ・ミュージカル『エニシング・ゴーズ』主演が控えている。また、朝日新聞大阪版夕刊『紅ゆずるのお悩み聞いてくれない?』で回答者としてクレバーな魅力を発揮(連載は終了)するなど、活躍の幅を広げている。

【公演情報】
「熱海五郎一座」新橋演舞場シリーズ第7弾
東京喜劇『Jazzy(じゃじぃ)なさくらは裏切りのハーモニー ~日米爆笑保障条約~』
出演・構成・演出:三宅裕司
出演:渡辺正行 ラサール石井 小倉久寛 春風亭昇太
東貴博(交互出演) 深沢邦之(交互出演)
ゲスト出演:紅ゆずる 横山由依(AKB48)
●5/30~6/27◎新橋演舞場
〈料金〉1等席 11,500円 2等席 9,000円 3階A席 6,000円 3階B席 2,800円 桟敷席 12,500円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹 0570-000-489 (10時~17時)
〈公式サイト〉https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/2021_atamigoro/

<取材協力>
ヘアメイク:hanjee(SINGO)
スタイリング:森本美砂子
衣装:ZADIG&VOLTAIRE

【取材・文/橘涼香    撮影/岩田えり】

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