お芝居観るならまずはココ!雑誌『えんぶ』の情報サイト。

宝塚星組で再演!『1789─バスティーユの恋人たち─』制作発表会見レポート!

2015年に宝塚歌劇団が日本初演を果たした傑作ミュージカル三井住友VISAカードシアター スペクタクル・ミュージカル『1789─バスティーユの恋人たち─』が、6月2日~7月2日まで兵庫・宝塚大劇場、7月22日~8月27日まで東京・東京宝塚劇場で、星組公演として待望の再演を果たすことになった。

『1789─バスティーユの恋人たち─』は、様々な話題作を生み出し続けるドーヴ・アチアとアルベール・コーエンにより2012年にフランスで初演され、大ヒットを記録した作品。2015年に小池修一郎の潤色・演出で宝塚歌劇月組公演として初演され、のち東宝ミュージカルとしても二度の上演を重ねている、フランス人の視点で描かれたフランス革命の物語を、小池が日本人にも親和しやすい、革命期を生きた様々な階級の人々の群像劇として構築した作品だ。

そんなフレンチ・ロック満載で紡がれるミュージカルの宝塚版が8年ぶりに宝塚星組で再演されることになり、4月18日都内で制作発表会が行われ、公演を協賛する三井住友カード株式会社代表取締役社長・大西幸彦、宝塚歌劇団理事長・木場健之、演出家・小池修一郎、革命に身を投じる主人公ロナン・マズリエ役の礼真琴、王太子の養育係オランプ役の舞空瞳の星組トップコンビが登壇。公演への抱負を語った。

制作発表会見はまず歌唱披露からスタート。革命を志向するロナンと王太子の養育係であるオランプが、それぞれの立場の違いから恋をしてはいけないと葛藤しながら、互いに惹かれていく心情を歌ったデュエット曲「この愛の先に」を切々と歌いあう。歌唱力抜群で宝塚ではロックミュージカルの申し子ともいえるフランス産ミュージカルに数多く出演している礼と、力強くハーモニーを紡ぐことができる舞空の歌声が切なくも美しい。

1人残った礼が、今回の星組上演版のためにドーヴ・アチアが書き下ろした新曲「愛しあう自由」をソロでたっぷりと歌う。どんなに愛し合っても結ばれない恋もあるというオランプが残した言葉に対して、愛し合う自由を自分は絶対にあきらめない、どんな生まれでも、どんな育ちだとしても、神のもと愛し合う自由はあると高らかに歌い上げる礼の豊かな歌声が、会場中を新たな『1789─バスティーユの恋人たち─』の世界で包み込んだ。

その熱気も冷めやらぬなか、舞台は会見場となり、三井住友カード株式会社大西幸彦代表取締役社長、宝塚歌劇団木場健之理事長、演出家小池修一郎に、パフォーマンスを終えたばかりの礼真琴、舞空瞳が揃い、それぞれの挨拶、そして質疑応答へと引き継がれた。

【登壇者挨拶】

木場 星組公演『1789─バスティーユの恋人たち』は、三井住友カード様並びにVJAグループご融資各社様にご協賛を賜り、三井住友VISAカードシアターとして上演いたします。1988年の花組公演『キス・ミー・ケイト』にはじまり、35年にわたりご協賛を賜り今回が51公演目となります。いつも温かいご理解ご支援をいただいております大西社長に心よりこ御礼申し上げます。この『1789』は、2012年にフランスで初演され絶賛を博した作品で2015年に小池修一郎の潤色・演出で月組が日本初演を果たしました。以来、再演が待ち望まれていた作品でございますが、この度礼真琴、舞空瞳を中心とする星組で8年ぶりに再演することとなりました。星組はフレンチミュージカルとの縁が大変深く、このトップコンビのスタートとなりました2019年の『ロックオペラモーツァルト』『ロミオとジュリエット』そして先日まで上演しておりました『Le Rouge et le Noir~赤と黒~』などフレンチミュージカルの豊富な経験を生かし、先ほどパフォーマンスでご覧いただきました新曲も加え、さらにグレードアップした『1789』をお届けできると思います。皆様どうぞご期待ください。

大西 今回星組の『1789─バスティーユの恋人たち』を冠協賛させていただくということで、今理事長からもお話がございましたけれども51作品目の協賛でございます。星組さんとご一緒しますのは2021年の『ロミオとジュリエット』以来で、こちらも礼さんと舞空さんの主演でございました。振り返りますとコロナが猛威を奮っていて、延期されたりなどもありながらも本当に素晴らしい舞台で、お二人の歌をいまもしっかり覚えておりますし、大変な時にみんなを元気にしていただいたと思っております。今回の作品はフランス革命を描いているということで、フランス革命というと、『ベルサイユのばら』など宝塚歌劇を代表する作品が多数あって、私どもも協賛をさせていただいておりますけれども、この作品は若者の目線ということで少し趣が違っていて、「パレ・ロワイヤル」や「バスティーユ」など歴史の舞台がしっかりと出てくるということで、別の視点の物語としても楽しみにしております。コロナも出口に向かっておりますし、街には活気が戻ってきました。ちょうど新緑の若葉の季節で、心躍ると言いますか、新しい時代の息吹を感じる、そんな明るい雰囲気を星組さんの素晴らしい舞台でさらに活気づけていただきたいと思っております。今後とも宝塚歌劇、三井住友カード、VJAグループにご支援賜りますようよろしくお願いいたします。『1789─バスティーユの恋人たち』の大成功を祈念して、ご挨拶とさせていただきます。

小池 8年ぶりの再演ということでございますけれども、その間に東宝で2回ほど上演致しました。宝塚初演の時もフランス版に比べて少しずつ宝塚用のアダプテーションをしていたのですが、さらに東宝版でもまた、よりドラマとして盛り上がるように手を加えております。そして今回、日本に於いて三つ目のバージョンということになりますが、最もロナンとオランプの二人に焦点を合わせた公演になると思います。『1789─バスティーユの恋人たち』はそもそも群像劇として作られておりますので、オリジナルの方では色々な人たちの描き方が均等に流れているのですが、宝塚はトップスターシステムということもありますし、このドラマはやはりロナンの物語として一本に見るものであろう、その方が感動も深いものだと改めて実感いたしましたので、今日お聞きいただいた新曲をドーヴ・アチアさんに書き下ろしていただき、ロナンが二幕で歌うソロナンバーとなっております。8年前にはその時の月組の組構成を軸に宝塚版を作りましたけれども、今回は今の星組のメンバー、座組のヒエラルキーに対してナンバーの再構成をいたしております。ですから月組版をご覧になった方は、「あ、違うんだな」とお感じになるところも何か所かあると思いますが、この『1789』は宝塚としては非常に珍しく主人公が農民の青年です。そして彼は革命に加わるのだけれども、革命が終わったら故郷に帰ってそこを立て直すことをしようとしている男だと思っています。おそらくは政治家になったりするのではなくて、故郷を見直しながら村起こし的なことをやったのではないかと。とは言え彼はバスティーユで命を落としてしまうのですが、そういう志を持った青年の物語として、お客様の心に残るものになればと思っております。8年前と比べると世界の情勢が、色々と安定していないと思います。それから日本の環境にも推移があり、結論は何も出ていないと思うのですが、そういった中で、この物語のように揺れる時代に人が何を求めていくのか、そしてその中から何を見出してどう生きていくのかということを、庶民の、農民の青年が学び取り、時代を切り拓いていく物語ですから、今日本を取り巻く、そして世界全体の情勢と時代の中で、改めて命をもっていることをすごく感じます。もちろん宝塚歌劇は夢を描くところですから、そういったことを大上段に振りかざして語ろうとは思いませんけれども、ご覧いただいた方の中でどこか、自分たちが今生きている時代との接点を、何か感じていただけたらいいなと思っております。よろしくお願い致します。

 ロナン・マズリエ役をさせていただきます星組の礼真琴でございます。8年前の月組さんで上演された『1789─バスティーユの恋人たち』を拝見した時、その楽曲の素晴らしさと組全体がひとつになって民衆のパワーを客席に届けている舞台にとても感動いたしました。そしていつしか自分も挑戦してみたいと夢を見るようになった作品でございます。先ほど理事長もおっしゃいましたが、2019年に『ロックオペラモーツアルト』という作品をさせていただいた時に、ドーヴ・アチアさんにお会いして、せっかくの機会なので『1789』の素晴らしさを熱く語らせていただいたんですね。そうしたら「『1789』の曲も是非機会があったらどこかで歌えたらいいね」と、3年半ほど前になりますがお話ししていただけたんです。それが今回こうして実現できたこと、そしてこの作品に挑戦させていただけることに、とても幸せな思いと身の引き締まる思いでございます。今個性がみなぎっている星組生全員で、お客様に勇気と元気を届けられる舞台になればと思っております。ご協賛各社様に御礼申し上げ、精一杯務めさせていただきたいと思います。よろしくお願い致します。

舞空 オランプ役をさせていただきます舞空瞳でございます。この素晴らしいミュージカル作品に出させていただけますこと、心から光栄に思っております。オランプ役をさせていただくにあたり、まだまだ課題はたくさんありますが、小池先生のご指導のもとたくさんのことを学ばせていただき、いつもどんな時でも全身全霊で舞台に向かわれる礼さんに全力でついていき、この世界の中でオランプとして力強く生きていけるように精いっぱいお稽古に取り組んでまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【質疑応答】

──小池先生、2021年にも『ロミオとジュリエット』で星組を担当されていらっしゃいますが、その時から、またその後の礼さんと舞空さんのご活躍をどう御覧になり、それを今回どのように作品に落とし込まれるのでしょうか?

小池 つい先日の『Le Rouge et le Noir~赤と黒~』、これは、舞空さんは出演していませんでしたが、礼真琴は地力も魅力も増していつつ、不思議なことに初々しさも全く失っていないなと思って見ておりました。そういう弾力性、新鮮さを全く失わずに色々な作品をやっているところが魅力だと思います。もちろん基本的に実力があって、歌唱力、特にリズム感のあるロックテイストの歌を歌う能力においては、宝塚史上屈指だと思いますので、このフランスのミュージカルをやっていくことによって、ますます磨かれていくと思いますのでそれを楽しみにして欲しいです。また舞空瞳も、つまりこのコンビの魅力だと思うのですが、初々しさを失わずにずっとやってきている。でも技術はどんどん増していて、今日の礼とのデュエットを聞いていても、しっかりついていくと言いますか、呼応している、成長をしているところですので、この公演の本番の時には改めてお客様も、彼女の成長を認識してくださるのではないかなと思っています。そういう実力がありながらフレッシュさを失わないところが、このコンビの魅力なのではないかと思います。

──礼さん、舞空さんフレンチロックミュージカルの魅力はどんなところにあるとお考えですか?

 本当にお披露目公演から、ありがたくもこれまでフレンチロックミュージカルというものにたくさん触れてきました。前回『Le Rouge et le Noir~赤と黒~』に出演させていただいた時に、音楽の太田先生からたくさんお言葉をいただいた中ですごく衝撃的だったのが「フランスのミュージカルにおいてロックで歌う時に、物語を進めているというよりも、自分自身の感情をただぶつけているだけだ」というもので。そこではジュリアン・ソレルという役を演じていたのですが、確かに彼は「これからどうしていくか」であったり「時代がこうなっていく」と歌っているのではなく、今思っている自分の気持ちをその歌に乗せているのだなと、一つひとつの曲と向き合ってすごく腑に落ちたんです。あとは、同じ音楽の中で同じメロディーが何回も繰り返されていく印象があって、そのなかでどう自分の気持ちを組み立てていくかということを、毎回毎回たくさん考えるきっかけをくれます。きっとお客様もそうだと思うのですが、一度聴いたら虜になる、耳から離れない癖になる音楽ばかりなので、私も心して取り組みたいと思っている楽曲ばかりです。

舞空 私も『1789』の月組さんの上演を客席から観させていただいた時に、素晴らしい楽曲に胸を打たれて、即座にCDを買ってしまった思い出があります。なのでやっぱり聞いていてドキドキ、ワクワクするような気持ちがするのですが、歌わせていただくと本当に難しくて。礼さんがおっしゃっていましたように、気持ちをきちんと楽曲の素晴らしさに乗せて、お客様にお届けできるようにお稽古して参りたいと思っております。

──小池先生、今回ロナンに新曲が加わるということで、先ほどご披露いただきましたが、ほかにも例えば東宝版で加わった新曲が入るなど、今回の上演で新しい部分を教えていただけますか?

小池 東宝版の時に入れましたロナンと革命家たちが仲間になる「革命の兄弟」というナンバーは入れます。あと誤解を招きたくはないのですが、舞空瞳はトップ娘役でございますので、前回はトップ娘役が演じたマリー・アントワネットがフェルゼンと歌いました「許されぬ愛」という曲はオランプが歌います。またロナンとオランプ、マリーとフェルゼンの四重唱でお届けしていた「世界の終わりが来ても」という曲が、先ほどお披露目させていただいたロナンのソロ「愛しあう自由」に変わります。本当は全部歌いたいのですけれども、宝塚はご存知のようにフィナーレがありそこにも時間を割かなくてはなりませんから、どうしても削られる部分もあって、細かい変更はもう少しあるのですが、大きいところでは今申し上げたようなことでございます。

──礼さんと舞空さんから特にお好きな曲をあげていただくとすると?

 今歌わせていただいた「この愛の先に」という曲は、月組さんを拝見した時からすごく好きな曲です。お互い惹かれ合っているのに結ばれてはいけない、という葛藤がありながらもお互いを求めてしまう。そしてこの二人で歌った時の、私はハモリ大好き人間なので二人で、ずっと三度でハモって歌うという心地よさを今日も感じたので、舞台でも歌わせていただけるのが楽しみです。

舞空 どの曲も選びきれないのですけれども、お芝居の一番ラストに皆さんが出てきて歌う「悲しみの報い」のシーンがとても印象深く残っているので、大好きな曲です。

──礼さんと舞空さん、今の時点でロナンとオランプのどんなところを大切に演じたいと思っていらっしゃいますか?

 前回の『Le Rouge et le Noir~赤と黒~』では大工の息子、今回は農夫の息子ということで、ブルジョワに対して強い思いを抱いている雑草魂というところを前回から引き継ぎつつ、強さをパワーに変えていきたいなと思っています。

舞空 この制作発表の歌稽古の時に小池先生から「オランプはすごく芯があって寄り添うだけではなく、強い部分がある」ということを最初に言っていただきまして、色々考えてみた時にやっぱりこの時代の中で楽しく生き抜いて行っている女性の一人なのではないかなと感じたので、礼さんの作られるロナンと共に生きていけるぐらいのパワーを大切に演じたいと思います。

 

【公演情報】
宝塚星組公演
三井住友VISAカード シアター
スペクタクル・ミュージカル
『1789─バスティーユの恋人たち─』
Le Spectacle Musical ≪1789 – Les Amants de la Bastille≫
Produced by NTCA PRODUCTIONS, Dove Attia and Albert Cohen
International Licensing & Booking, G.L.O, Guillaume Lagorce
潤色・演出:小池 修一郎
出演:礼真琴 舞空瞳 ほか星組
●6/2~7/2◎兵庫・宝塚大劇場
〈料金〉SS席12,500円 S席8,800円 A席5,500円 B席3,500円
一般前売:2023年5月13日(土)
●7/22~8/27◎東京・東京宝塚劇場
〈料金〉SS席12,500円 S席9,500円 A席5,500円 B席3,500円
一般前売:2023年6月25日(日)
〈お問い合わせ〉宝塚歌劇インフォメーションセンター 057-00-5100
〈公式ホームページ〉https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2023/1789/index.html

 

【取材・文/橘涼香 撮影/岩村美佳】

記事を検索

宝塚ジャーナルの最新記事

『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』井上芳雄最終日の写真到着&再演発表!
稲垣吾郎主演舞台『多重露光』追加キャスト決定!
まもなく開幕!ミュージカル『アナスタシア』稽古場レポート&写真到着!
ミュージカル・ピカレスク『LUPIN ~カリオストロ伯爵夫人~』のメインビジュアル公開! 
「祭シリーズ」9年ぶりに出演!上口耕平インタビュー

旧ブログを見る

INFORMATION演劇キック概要

LINKえんぶの運営サイト

LINK公演情報