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笑いと涙の紅ワールド永遠に!宝塚星組公演『GOD OF STAR─食聖─』『Éclair Brillant』!

2017年より宝塚歌劇団星組を牽引し、2018年には第三回宝塚歌劇台湾公演を大成功に導いた星組トップスター紅ゆずると、トップ娘役綺咲愛里の退団公演である、宝塚歌劇星組公演ミュージカル・フルコース『GOD OF STAR─食聖─』と、スペース・レビュー・ファンタジア『Éclair Brillant』が東京宝塚劇場で上演中だ(13日まで)。

ミュージカル・フルコース『GOD OF STAR─食聖─』は現代のアジアを舞台に、上海の総合料理チェーンの看板シェフとして名声を馳せていた青年が、ある事件からすべてを失い、屋台を切り盛りしている娘と出会ったことで、真の料理の聖人─食聖─に成長していく姿を描いた小柳奈穂子の作品。原色が賑やかに氾濫するアジアン・クッキング・コメディ―となっている。

【STORY】
現代のシンガポール。世界一の料理の聖人を決定する「食聖コンテスト」が開催されている会場に、悠然と登場したのは上海総合料理長チェーン「大金星(ゴールデンスター)」で総料理長を務めるホン・シンシン(紅ゆずる)だ。天才料理人として熱い注目を集め続けるホンは、自らプロデュースした食のテーマパーク建設を予定し、飛ぶ鳥落とす勢いで自信満々に生きていた。そこにホンのテーマパークの建設予定地に組み込まれていた「パラダイスマーケット」で屋台を経営する娘アイリーン・チョウ(綺咲愛里)が怒鳴り込んでくる。先祖が苦労して作ったホーカーズ(屋台街)を手放すつもりはない!と訴えるアイリーンの言葉に、ホンは耳を貸さなかったばかりか、気分を害してどうせ優勝するのは自分に決まっているのだからと、コンテストを延期させてしまう。ホンの傲慢な態度に業を煮やした「大金星」のCEOエリック(華形ひかる)は、ホンの首を切ることを決断。弟子のリー・ロンロン(礼真琴)にホンの仕事を引き継がせるよう策を練る。
数日後、アイリーンは自分の店の前で行き倒れているホンを見つけて驚く。エリックの策略にハマり身に覚えのない罪で逮捕されたホンはすべてを失い、食うや食わずで偶然アイリーンの店の前に行きついたのだ。
敵に食べさせることはないと反対する仲間たちに、お腹が空いている人を放ってはおけないとホンに食事をさせたアイリーンだったが、相変わらず傲慢な態度のホンに呆れ果て代金を請求する。ところが無一文のホンは支払いの代わりにこのホーカーズをアジア一のグルメスポットに変えてみせると宣言。自分を陥れたエリックを見返す為にも、アイリーンたちと協力して、ホーカーズの立て直しに乗り出した。
気の強い二人は度々反発し合いながらも力を合わせて店を盛り立てていき、グルメ番組が取材にくるまでに店は大繁盛。いよいよホンはエリックたちを見返す為、3ヶ月後の「食聖コンテスト」で勝負を挑むと宣言。だが、気の弱かったリーは「大金星グループ」のイメージキャラクターとなったアジアを代表するスーパーアーティスト、クリスティーナ・チャン(舞空瞳)に一目惚れしたパワーで、リー・ドラゴンと改名し、二人が対決する料理は秘伝の「満漢全席」(フルコース)で、ホンが負ければ「パラダイスマーケット」の所有権はリーの手に渡る、という条件をつけてきた。
驚くアイリーンを他所に、その挑戦を受けたホンは、幻の「満漢全席」を求めて中華料理学院を訪れるが……

原色の洪水で賑やかに繰り広げられる舞台では、まるでアニメーションか、アメリカンコミックのような、徹底的に創り込んだ世界観が展開されていく。己の才能に溺れて高慢になっていた青年が、どんな山海の珍味よりも大切なのは温かな家庭の味だ、と気づくという流れは王道中の王道だし、気が強く猪突猛進だが、幼い頃に両親と別れた心の傷を密かに抱えているヒロインや、メガネを外すと突然性格が変わるライバルなど、設定の数々も言ってしまえばかなりベタなものだ。しかもさすがにこれは飛躍し過ぎでは?というぶっ飛び展開もない訳ではない。

けれどもそれらがすべて、紅ゆずるという近年の宝塚歌劇では稀な個性派であり、徹底的なサービス精神と宝塚愛に溢れた型破りなスターを活かす為の道具立てと考えると、もうすべてを許容する気持ちにさせられるのが宝塚歌劇というところの温かなマジックだ。一時代を築いて退団していくスターを見送るのに、スターの個性よりも作品をきっちりと構築する為の隙のなさを取るか、スター本人はもちろん、何よりも去りゆくスターを愛した観客たちが、宝塚でしか観られない最後の男役姿を堪能し、その思い出に浸る為に少々のつじつまの合わなさを取るか?と言えば、一も二もなく優先されるべきは舞台と客席とに愛と涙の交感ができる作品の方だろう。

その意味でこの『GOD OF STAR─食聖─』の在り方は、決して間違っていないし、前述したぶっ飛び展開も含めて、紅がこれまで演じてきた数々の役柄の思い出の欠片が、そこかしこに散りばめられた小ネタ満載なのも、それが仮にわからなくてもストーリーを理解することには何らの支障がないことも含めて、ファンだけがわかる醍醐味として評価できる。何よりも、作品全体がとにかく賑やかで、ハートフルな心根を持ちつつ笑いに溢れているのが、「紅ゆずるの大ファンで伝説の客席案内係“紅子”」という宝塚ファンなら知らぬ人とてない当たりキャラクターを持つ、紅ゆずるというスターの退団公演に似つかわしいものだったことが嬉しい。

そんな舞台のセンターに立つ紅は、もう独壇場以外に言葉が見つからないほど、生き生きと躍動していて目が離せない。はじめ鼻持ちならない自信家として登場するが、その時点でも紅のホンは決して憎々しい奴ではなく、気障にキメた振る舞いもどこかチャーミングで、心根には温かいものがあることがにじみ出る。だからこそ後半の展開に違和感がないし、二枚目男役トップスターとしてはびっくりするほど豊かな表情も、コミカルな動きも、アイリーンの心の内を聞く静かで優しい横顔の、ハッとするほど穏やかな魅力を惹き立てていく。なかなか似合う人がいないと思える、宝塚の舞台にあっても更に派手な色柄の衣装も楽々と着こなして、この人が星組を紅カラーに染め上げた日々を思い起こさせてくれる存在感を発揮していた。

ヒロイン・アイリーンの綺咲愛里は、ピンクの鬘にウェストを露出したパンツスーツでカンフーを繰り出すという、宝塚のトップ娘役としては相当思い切ったヒロイン像を、尚一途で愛らしく造形していて感嘆した。「いつか王子様が」のプリンセスではなく、冒険活劇のヒーローに憧れていた少女という設定もよく活きていて、あまりにも愛らしい小顔と抜群のプロポーションの中に、現代性も秘めていた娘役・綺咲愛里の真骨頂が発揮されている。アイリーンが急激にホンに惹かれてゆく過程のやや唐突な部分も、紅&綺咲の抜群のコンビ感が見事に払しょくしていて、改めてしみじみと良いコンビだったと感じさせていた。

次期トップスターに決定している礼真琴のリー・ロンロンは、メガネ男子の変身という少女漫画の王道パターンの男の子版を、高い身体能力を生かし、立ち姿から激変させ表現していて面白い。紅のホンから星を譲られる、という設定も泣かせるところで、次期トップ娘役となる舞空瞳演じるアジアのスーパーアーティストに、実はメガネの貴方が好き…と言われる流れもよく考えられていた。次期トップコンビのサブストーリーが、無理なく作品の中に描かれているのも巧みだった。

他に全体が群像劇の中で、ホンを育てた「大金星」グループのCEOエリックの華形ひかるは、決して多くはない出番で、物語のキーとなる役柄をきちんと印象的に演じていて目を引く。ワンテールに結んだ髪型もよく似合い、ますます良い役者ぶりに磨きがかかってきた。

アイリーンの父の天寿光希の、コメディ作品の中でちょっとワケあり感を巧みに出す演技力は相変わらず貴重だし、母の音波みのりも、珍しいヒロインの母親でかつキャリアウーマンという役どころを、瑞々しい美しさで活写していて目を引く。アイリーンの従兄弟でご当地アイドルのリーダー的存在ニコラスの瀬央ゆりあは、役柄がさほどには大きくないからこそ、スターとしてのこの人が大きくなっていることを逆に証明して見せていて、天華えま、天希ほまれ、極美慎、天飛華音ら、仲間たちとの掛け合いも楽しい。そのマネージャー、タン・ヤンの有沙瞳も手堅く、芸風に軽やかさが出てきたのも貴重だ。歌える娘役として更なる活路を拓いて欲しい。一方、「大金星」イメージキャラクターのアイドルグループ「エクリプス」には小桜ほのか、桜庭舞、星蘭ひとみ、水乃ゆりと、星組育ちの期待の娘役たちが集っていて、こちらも大変キュートで華やか。この公演を最後に宙組に転出することが決まっているテレビプロデューサーの紫藤りゅうが、押しの効かないテレビマンというファンタジーを、持ち前のプリンス感で支えていて、宙組での活躍が楽しみだ。

他にも牛魔王の汝鳥怜、鉄扇公主の万里柚美、老虎の美稀千種などベテラン勢の適材適所はもちろん、この公演で紅と共に退団する如月蓮と麻央侑希が、その名もレンとマオとして、アイリーンを傍らで支える店員役で、常に目立つ位置にいたのも良い目配りだった。総じて、紅ゆずるでなければ成立しない退団公演になっていたことが嬉しく、泣き笑いしながら降りてくる幕を見届けられるハッピーな作品だった。

そんな賑々しさから一転、これぞ宝塚のエレガンスに満ちたスペース・レビュー・ファンタジア『Éclair Brillant』が続くのが、この公演の最大の美点でもあって、両作品の大きな変化が楽しめる。全体はレビューの大定番である「お国めぐり形式」を取っているが、その幕を開けるのが「宇宙から舞い降りた青年」という設定なのが、星組にも、紅ゆずるにも相応しいスケール感を与えている。

プロローグ、ラテン、スペイン、ボレロと芝居のはっちゃけ感から打って変わった、男役・紅ゆずるの、端正な美しさが様々に表れる大きな場面が連続しているのも良いし、その場面場面で異なる綺咲とのデュエットの多様さも楽しめる。

一方で次期トップコンビの礼と舞空が、風の精と風の少女という一瞬のメルヘンを舞台いっぱいに踊る夢いっぱいのシーンもあり、二人のダンスは星組の次代の呼び物になるだろうことを感じさせていた。

中でも、舞台奥に斜めのスロープを作り、人が無限に登場してくるかに幻惑する「ボレロ」の醍醐味はレビュー作品ならではの見事さ。思えばこれはレビューにはあって当然だったほどの大定番シーンだが、それが新鮮に映ったのは昨今のショー作品の変遷を図らずも浮かび上がらせていて、若央りさの振付と共に、ベテランレビュー作家の酒井澄夫のこの技を、是非若い作家たちが受け継いでいって欲しい。

ここから全く装飾のない、純黒燕尾の紅を中心に繰り広げられる大階段の男役の群舞、そして紅と綺咲のデュエットダンスと、流れるような展開も実に美しく、紅ゆずると綺咲愛里の為に、充実した二作品が用意されたことを、何よりも喜びたいメモリアル公演となっていた。
また、初日を前に通し稽古に引き続いて囲み取材が行われ、星組トップコンビ紅ゆずると綺咲愛里が、記者の質問に応えて公演への抱負を語った。

【囲み取材・挨拶】

 皆様お忙しいところお集まり頂きましてありがとうございます。今回は退団公演ですので、いつも以上に、いえ、いつもと同じくらいだと思いますけれども(笑)頑張ります。

綺咲 本日はお集まり頂きありがとうございます。短い時間ですが、どうぞよろしくお願い致します。

【質疑応答】

──宝塚大劇場公演を終えて、東京公演が始まりますが、改めて宝塚とどのように向き合っていますか?

 限られた時間ですので、一回、一回、一場面、一場面に、劇場を感じながら大切に過ごしています。

綺咲 宝塚大劇場公演中もたくさんの幸せを頂きましたので、気持ちも新たに東京宝塚劇場で最後まで精一杯駆け抜けたいと思います。

──お芝居、ショーの見どころと、好きなシーンを教えてください。

 お芝居とショーのギャップがすごくあるので、そのギャップを楽しんで頂けたらなと思っております。お芝居はコメディなのですが、それだけではなくハートフルなお芝居なので、そのあたりもお楽しみ頂けたら。ショーは、酒井澄夫先生のロマンチックなショーなのですが、いつもと違う現代風な場面もありますので、そこも見どころでございます。

綺咲 紅さんもおっしゃられたように、本当に正反対な二作品に挑戦させていただいているので、この二作品を楽しみながら演じていきたいなと思います。そして好きな場面はデュエットダンスです!

 好きな場面はボレロですね。そこからの黒燕尾、そしてデュエットの流れが好きです。

──黒燕尾の衣装に装飾がついていないのは紅さんの心意気ですか?

 心意気と言いますか(笑)色々なお話を酒井先生ともさせて頂きまして、最後は飾り無しでいきたいと思いました。

尚、この公演のレポート記事が、舞台写真の別カットと共に11月9日発売の「えんぶ」12月号に掲載されます!どうぞお楽しみに!

【公演情報】
宝塚星組公演
ミュージカル・フルコース『GOD OF STAR─食聖─』
脚本・演出◇小柳奈穂子
スペース・レビュー・ファンタジア『Éclair Brillant』
作・演出◇酒井澄夫
出演◇紅ゆずる 綺咲愛里 ほか星組
●9/6~10/13◎東京宝塚劇場
〈料金〉SS席 12,000円 S席 8,800円 A席 5,500円 B席 3,500円 (全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東京宝塚劇場 03-5251-2001
http://kageki.hankyu.co.jp/

【取材・文/橘涼香 撮影/岩村美佳】

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