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『ホロー荘の殺人』間もなく開幕! 凰稀かなめ・紅ゆずる インタビュー

人間模様を描くミステリーで13年ぶりに共演!

「ミステリーの女王」と呼ばれ、その作品の数々が、全世界で10億部以上出版されているアガサ・クリスティー。小説だけでなく世界最長の上演記録を持つ『ねずみとり』をはじめ、傑作戯曲も多く残している。その1つ『ホロー荘の殺人』が、演出家・野坂実が主宰するノサカラボによって5月に三越劇場で上演される。

秋の週末。ロンドンから離れた景勝地にあるホロー荘に集ったアンカテル一族とその親しいひとたち。彼らはそれぞれに抱えている思いがあり、ある日ついに殺人事件が起きる。複雑な人間模様が二転三転して物語を運んでいく作品だ。そんな舞台で、アンカテル一族の一人ヘンリエッタを演じる凰稀かなめと、宿泊客の一人ガーダを演じる紅ゆずるが、宝塚歌劇団卒業以来13年ぶりに共演する。このミステリアスな作品に臨む思いと、宝塚星組で共に過ごした熱い季節を振り返って語り合ってもらった「えんぶ4月号」のインタビューを別バージョンの写真とともにご紹介する。

紅ゆずる 凰稀かなめ

どこで歯車が狂ったのかに謎がある

──宝塚時代は星組でご一緒だったお二人ですが、久しぶりの共演になりますね。

凰稀 本当に久しぶりで、こうして女性同士として会うと、ちょっと不思議な気持ちよね(笑)、最後に一緒に舞台に立ったのは何年前?

 星組公演の『愛と青春の旅立ち』以来で、2010年でしたから13年ぶりでしょうか?

凰稀 そんなに経つ!?

 私が星組のトップになったお披露目公演(2016年)を観にいらしてくださったので、そこではお会いしてますけれど、共演させていただくのは2010年以来です。

凰稀 わー、すごく楽しみ。私ストレートプレイ大好きなのよ!

 私は初めてなんです。

凰稀 そうなの? おめでとう! でもこれ、難しい台本だよね。

 かなめさん(凰稀の愛称)もそう思われましたか?

凰稀 そう、久しぶりに難しい台本に出会ったなって。海外の作品は話法が日本語と逆だから、まずそこが難しいと感じることが多いのだけど、今回は小田島恒志先生がとても自然に面白く訳してくださっていて。でも、ひとつの部屋の中に入れ替わり立ち代わりたくさんの人が登場してきて、決して単純に友人たちが集まったというのではなくそれぞれの関係性がとても複雑で。特に1幕はごく普通の会話がずっと続くでしょう? その会話劇の中から、「えっ? ここ伏線?」というようなものが、少しずつ少しずつ現れてきて、お互いの人間模様が見えてきた時にパっと事件が起こる。でもそこに至るまでが結構長いから、役者の演技力で相当変わってくる作品だと思うし、そこに芝居一本で挑戦しなければいけないから、かなり大変な台本だと思う。

 アガサ・クリスティーの作品ですし、タイトルからしてもミステリーなのは明白なんですけど、緻密な計算のトリックを暴いていくというところだけに力点が置かれているわけではないんですよね。むしろかなめさんがおっしゃったように、登場人物たちの人間模様の、どこで歯車が狂ったのかに最も大きな謎があるというか。ですから私も台本を読ませていただいていて、「ここがポイントですよ!」と芝居のなかで提示するのが正解なのか、それともラストシーンで真相がわかったあとの、ご観劇後に「あぁ、あそこが重要だったのか!」とお客様に気づいていただくのがいいのか、どっちなんだろうと考えています。

凰稀 その辺りは演出の野坂実さんとお稽古を通じて作っていくことになると思うけど、三越劇場だから話していないところでの目線の交わし方もお客様に観ていただけるし、それが次の展開につながっていったりもすると思う。

 私、三越劇場に立たせていただくのも初めてなんです!

凰稀 そうなんだね! すごく濃密な空間だから、この作品にはピッタリだと思う。

──著名な戯曲なのでご存じの方もいらっしゃるとは思いますが、そうでない方も、結末を知ってからもう一度ご覧になるとまた面白いでしょうね。

凰稀 それは本当に面白く観ていただけると思います。私は彫刻家のヘンリエッタ役で自分の感情や感性に正直に生きている人で、まだ舞台でどのように提示されるかはわからないのですが、私が作る彫刻の変化も、全てを知ってからご覧になると気づきがたくさんあると思うので、そこにも注目していただきたいです。

 私は医師の妻のガーダ役で、子供も二人いるのですが、ひたすら旦那さんが誇りで、全てが素晴らしいと思っている。客観的に見ると買いかぶり過ぎ? と思うくらいなんですが、自分に都合の悪いことはいっさい見ないようにしているのかな? と思ったりもします。ヘンリエッタとガーダって真逆の性格なのに、仲が良いのもちょっと不思議というか。

凰稀 わかるわかる。そこも色々話したいけど、ミステリーはネタばれしてはいけないので(笑)。

 そうですね。でもとにかく彫刻は大事ですよね!(笑)

凰稀 そうそう(笑)。

気がつくといつも近くにいてくれた

──宝塚で男役同士としてご一緒だった時、お互いの印象はいかがでしたか?

凰稀 すごく仲が良かったんですよ。私、星組には1年10ヶ月しかいなかったんですけど。

 そんなに短かったですか!?

凰稀 そう、しかも人見知りがひどかったから自分から話せる人がいない時に、べにこ(紅の愛称)がどんどん話しかけてきてくれたから、本当にありがたい存在でずっと頼りにしている下級生でした。

 これだけお綺麗でスーッとしていらっしゃるので、はじめは話しかけたらご迷惑かな? と思っていたんです。でもある日、「組替えって大変」というようなことをポロっとおっしゃったので、「私でお役に立てることがあったら何でも言ってください」とお伝えしたら、話してくださるようになって。

凰稀 気づいたらいつも近くにいてくれて。

 かなめさんが星組にいらした頃は、私も急に大きな役をいただくようになった時期で、アクセサリーひとつにしてもどんなものをつけたらいいのかわからなくて、色々とご相談させていただいたり。

凰稀 でもそれは私も同じだったの。雪組から星組に組替え後にいきなり男役二番手になって、ショーで中心の場面をいただいたり、銀橋をひとりで1曲歌いながら渡ったり、なにもかも初めてだったから、髪型やライトの当たり方も実践で覚えていくしかなくて。これが良かった、じゃあこれは? と一緒に研究していった気がする。

 そう言っていただけるのは光栄すぎますけど、だからこそ初めてのストレートプレイの舞台がかなめさんとご一緒でとても心強いです。

凰稀 歌や踊りがあると表現として広がるんだけど、ここで動くとか決められることもすごく多い。でもストレートプレイは芝居ひとつに集中できて、心だけを動かせばいいから無になれるの。それは本当に楽しいと思う。

 お稽古に入るのがとても楽しみです。

凰稀 私も「はじめまして」の方達もたくさんいらっしゃるカンパニーですけど、旺なつきさんや綾凰華さんなど宝塚出身の方も多いので、お互いのやりとりのなかでどんどん膨らんでくるものもあると思います。リピートしても絶対に面白い作品なので、是非何度も観に来てください!

 

■PROFILE■

おうきかなめ〇元宝塚歌劇団宙組トップスター。美貌の男役として注目を集め『風と共に去りぬ』『ベルサイユのばら』など宝塚を代表する名作の数々で主演を務めた。2015年退団後は舞台・ドラマ・映画と幅広い活躍を続けている。18年舞台『さよなら、チャーリー』で「文化庁芸術祭賞」演劇部門新人賞受賞。主な舞台作品は『1789~バスティーユの恋人たち~』『屋根の上のバイオリン弾き』『TARKIE THE STORY』『DOROTHY~オズの魔法使い~』など。

くれないゆずる〇元宝塚歌劇団星組トップスター。日本初演のブロードウェイミュージカル『THE SCARLET PIMPERNEL』の新人公演で主演したパーシヴァル・ブレイクニー役で一躍時の人となり、トップスターとしてのお披露目公演で同役を演じるなど、宝塚に数々の伝説を残した。19年退団後は、舞台、映像と活躍の幅を広げている。近年の主な舞台作品に『熱海五郎一座』『エニシング・ゴーズ』『アンタッチャブル・ビューティー』などがある。

【公演情報】
ノサカラボ『ホロー荘の殺人』
原作:アガサ・クリスティー
翻訳:小田島雄志 小田島恒志
演出:野坂実
出演:凰稀かなめ 紅ゆずる 林翔太 高柳明音 旺なつき
綾凰華 佐々木梅治 河相我聞 細見大輔 松村優  中尾隆聖/
長沢美樹(声の出演)
●5/3~8◎三越劇場
〈料金〉9,800円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈お問い合わせ〉info@nosakalabo.jp
〈公式サイト〉https://nosakalabo.jp/hollow

★インタビュー記事、えんぶ4月号に掲載中!
◎見本ページはコチラ▷http://enbu.co.jp/kangekiyoho/enbu-040/
ご購入はこちらhttp://enbu.shop21.makeshop.jp/shopdetail/000000011113

 

【取材・文/橘涼香 撮影/岩田えり】

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