初コメディ作品『おかしな二人』に臨む!花總まりインタビュー
ブロードウェイ随一の喜劇作家ニール・サイモンの代表的コメディ『おかしな二人』(1965年)。映画化・ドラマ化等、数々のメディア化で大ヒットを博したこの作品が、満を持して1985年に『おかしな二人・女性版』として登場。ブロードウェイの初演は、8ヶ月を超えるロングランを記録した。
この名作が、演劇界きってのコメディエンヌ大地真央と、『エリザベート』のタイトルロールを宝塚初演から務める花總まりの初共演という豪華キャストで、10月8日~25日日比谷のシアタークリエで上演される(11月5日~8日大阪・梅田芸術劇場シアタードラマシティでも上演)。
“無精者”のオリーブ役に大地、“病的なまでに几帳面”なフローレンス役に花總という、対照的なキャラクターを宝塚歌劇団の先輩、後輩でもある二人がどう演じるのかに、今、大きな注目が集まっている。
そんなフローレンス役で、初コメディ作品に挑戦する花總まりが、稽古たけなわの中、LIVE配信も映像化もない、劇場でしか観ることのできない作品に、稽古場はもちろん、公演でも1列目を空けて検温を行うなど、感染対策を徹底して行いながら取り組む思いを語ってくれた。
台詞の持つ面白さを如何に伝えるか
──宝塚時代を通じて初コメディ作品への出演ということですが、今実際に稽古が進んでいる中いかがですか?
やっていてすごく楽しいのですが、それと同時に難しさも同じくらい感じています。私は今までミュージカル作品への出演が多かったので、今回はまず、膨大な台詞量に立ち向かうことがありました。覚えなければいけないのももちろんなのですが、台詞の持つ面白さを観ている方に的確に伝えられることが最低条件としてあると思いますので、とても単純で、シンプルなことの難しさを感じています。台詞をこれだけ話すことに慣れていないので、今、懸命にお稽古している最中です。
──その中で、大地真央さんは花總さんにとって初共演となる、宝塚の先輩でもありますが、稽古を共にする中でどんな発見が?
稽古を重ね、自分にとっての壁と言いますか、技術的な台詞の活舌ですとか、間の取り方や、伝え方に日々向き合い、取り組んでいる中で、大地さんの演じられている姿を見て、たくさん勉強させて頂いています。大地さんのテンポ感、台詞の間を的確に「ここ!」というところにハメていかれているお姿と、自然にお芝居されていつつ、今、何をされているのかがきちんと伝わってくるのが、本当にさすがだなと思いますし、学ばせて頂くことばかりです。
──世界が新型コロナ禍に見舞われ、自粛期間等を経て今、こうした楽しいお話を皆さんに届ける訳ですが、お客様に伝えたいことは?
やはり私は舞台の魅力はLIVEにあると思っておりますし、それはお客様がいらして下さるからこそ伝わる良さでもあって。今回もお稽古場で皆さんと一生懸命創っていますが、最後はその日、その日の『おかしな二人』をお客様と一緒に創っていきたいので、是非お客様にも生のLIVEに参加して頂けたらと。新型コロナによって難しいこと、大変なこともたくさんあり、窮屈な時期もあったと思いますから、そうした想いの分もこの作品を楽しんで頂けたらと思っています。
──また、本編に続いてスペシャルカーテンコールも用意されているとのことですが。
振付はまだこれからなのですが、何よりも楽しく終われるのがすごく良いなと思っています。今回カンパニーの人数も少なくアットホームなので、全体がとても希望を感じられる、明日に向かっていく終わり方になっていて。ですからスペシャルカーテンコールも、お客様も一緒にノッていって頂ける楽しい時間になると思っています。
フローレンスと自分に近いところがあると感じる
──演じるフローレンス役についてはどうですか?
フローレンスって綺麗好きだったり、お料理が得意だったり、とても用心深く、慎重派といった色々な面が、最初は少し極端かな?と思っていました。でも演じていくうちに、日常の自分自身の行動に「これフローレンスっぽいかも…」と思うことが増えていて、意外と自分にもこういう面があるのかな?と感じるところがたくさんあって!自分で掃除をしていても「今のフローレンスみたい」と思ってクスクス笑ってしまう時もあります。もちろんフローレンスほどではありませんが、意外なところで細かかったりするんです。それは元々自分が持っていたものなのか、フローレンスにだんだん感化されているからなのか?と、今こうしてお話していて、自分でもどちらなんだろうと思っていますが(笑)、確かにフローレンスに近いところはあると感じています。
──花總さんと言えば知らぬ人とてない「姫役者」ですが、今まで演じてきたそうした役柄と、フローレンスとではどちらが演じやすいですか?
それは国を背負う役柄よりもフローレンスが演じやすいです!(笑)と言いますか、今まで演じてきたのは実在の方々なので、史実に基づいて演じなければなりませんし、マリー・アントワネットにしても、エリザベートにしても、大変人気の高い方々で、その人物に対して皆様がお持ちのイメージもお強いと思います。そうしたイメージを裏切ってはいけないという気持ちが常にありました。でも今回のフローレンスは私なりの役柄として創っていくことができるので、そういう意味では今の方が演じやすいです。
──特にこの作品では、冒頭から大地さん演じるオリーブをはじめ皆さんが集っていて、次第にフローレンスがどこに行ったのか!?を案じて大騒ぎになりますが、お稽古場ではその様子を花總さんはどうご覧になっているのですか?
皆さんが口々にフローレンスのことを話されているのをきちんと見て、そこにフローレンスがどう出ていったらいいのかな?とイメージを膨らませています。今はまだ実際にどう登場するかは試行錯誤している段階で、色々なパターンを試してアプローチをしている最中なので、演出の原田諒さんや、周りの方々のご意見も伺いながら、一番良い感じで出ていけたらと思っています。もしかしたら本番も少しずつ日によって違っていくかも知れませんし、こうだと固め過ぎず、皆さんのそれまでの流れを大切に期待通りの出方をしたいと思っているので、是非そこも楽しみに観にいらして頂けたらと思っています。『おかしな二人』とタイトルについていますが、オリーブもフローレンスも本人たちはいたって普通に生きていますから、私にとって雲の上の方だった大地真央さんと共演させて頂く機会ですので、私もただ一生懸命フローレンスを生きたいと思います。是非皆様劇場にいらして下さい。お待ちしています!
■PROFILE■
はなふさまり○1991年宝塚歌劇団に入団。1994年『風と共に去りぬ』新人公演では、娘役でありながら主演スカーレット・オハラを演じ、同年、雪組娘役トップスターに就任。96年日本初演『エリザベート』のエリザベート役を演じ、自身の代表作の一つとなる。98年新設された宙組へ組替え、『激情─ホセとカルメン─』のカルメン役『ベルサイユのばら』マリー・アントワネット役、日本初演『ファントム』のヒロイン・クリスティーヌなど大役を演じ高い評価を受ける。トップスターを通算12年3カ月続け、歴代最長記録を作ると共に、宝塚100年に1人の娘役との呼び声も高い中、2006年『NEVER SAY GOODBYE』をもって惜しまれつつ退団。5年間のブランクを経て『モンテクリスト伯』ヒロイン・メルセデス役で舞台復帰。以後数々のミュージカルで好演し菊田一夫演劇賞の大賞を史上最年少で受賞するなど日本演劇界のトップランナーとして活躍を続けている。近年の主な出演作品に『レディ・ベス』エリザベス役、『シークレット・ガーデン』リリー役、『マリー・アントワネット』マリー・アントワネット役、『エリザベート』エリザベート役等がある。2021年1月~3月『マリー・アントワネット』マリー・アントワネット役出演が控えている。
【公演情報】
作◇ニール・サイモン
潤色・演出◇原田諒(宝塚歌劇団)
出演◇大地真央 花總まり
シルビア・グラブ 宮地雅子 平田敦子 山崎静代(南海キャンディーズ)渡辺大輔 芋洗坂係長
●10/8~25◎日比谷・シアタークリエ
〈料金〉11,800円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東宝テレザーブ 03-3201-7777(10:00~17:30)
※政府発表の入場者制限緩和方針に基づき、一部の座席について前後左右を空けずに追加販売が決定。
9月27日追加席販売開始
東宝ナビザーブ https://stage.toho-navi.com
東宝テレザーブ 03-3201-7777(10:00~17:30)
〈公式サイト〉https://www.tohostage.com/okashinafutari/
※稽古映像公開中!https://youtu.be/E5aCb-CtLMs
●11/5~8◎大阪・梅田芸術劇場シアタードラマシティ
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場 06-6377-3888(10:00~18:00)
【取材・文・撮影/橘涼香】
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