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乙女の胸キュンを蘇らせる柚香光の道明寺司が輝く、宝塚版『花より男子』上演中!

1992年の連載開始以来爆発的な人気を博し、多彩なメディアミックスの展開で、日本のみならず近隣諸国も魅了し続けている累計発行部数6100万部を越える少女漫画界の金字塔のひとつ『花より男子』。その宝塚歌劇版である、宝塚歌劇花組公演 TAKARAZUKA MUSICAL ROMANCE『花より男子』─原作 神尾葉子「花より男子」(集英社マーガレットコミックス刊)─ が、TBS赤坂ACTシアターで上演中だ(7月2日まで)。

「花より男子」は1992年から集英社「マーガレット」で連載が開始された神尾葉子の代表作。桁違いのセレブのご子息、ご令嬢が集まる名門校「英徳学園」を舞台に、学園を牛耳る男子生徒四人組「F4」=「Flour four(花の四人組)」に雑草魂で立ち向かうヒロインとのバトルの中で、様々な恋模様がスピーディに展開される作品だ。

日本では「嵐」の松本潤が道明寺司を演じて一躍トップアイドルとして君臨するに至ったTBS放映の連続ドラマをはじめ、シアタークリエでの舞台化、アニメ化と様々なメディアミックスが続き、台湾、韓国、中国でも映像化され、いずれも社会現象と呼ばれるほどの人気を誇っている。今回の公演はそんな作品の待望の宝塚歌劇バージョンで、主演の柚香光、城妃美伶以下、花組の若手スターたちが躍動する舞台となっている。

【STORY】
日本屈指のセレブの子女が集う名門校「英徳学園」。この学園では「F4」=「Flour four(花の四人組)」と呼ばれる眉目秀麗な男子生徒──世界的な大財閥の御曹司で俺様キャラの道明寺司(柚香光)、花沢物産の跡取り息子で常にクールでミステリアスな花沢類(聖乃あすか)、日本一の茶道家の御曹司でプレイボーイの西門総二郎(希波らいと)、美作商事の後継者でマダムキラーの美作あきら(優波慧)──に支配されていた。セレブ集団の学内にあっても桁違いの財力を誇る四人の家からは、学園に莫大な寄付がなされており、教師と言えども彼らの行動を止めることはできず、四人は気に入らない生徒がいれば「赤札」と呼ばれる指令カードをロッカーに貼り、学園中の攻撃の的にするなど権勢を誇っていた。
この英徳学園に一般庶民でありながら、両親のたっての願いで通っている牧野つくし(城妃美伶)は、「F4」の横暴に内心では反発しながら、卒業まで目立たずにいるよう努めて日々を送っていたが、そんな庶民のつくしに声をかけてきてくれた三条桜子(音くり寿)をかばったが為に「F4」に目をつけられ、赤札の対象になってしまう。
それでも持ち前の正義感と“雑草魂”で果敢に「F4」に立ち向かうつくしに、「F4」のリーダー司はいつしか心惹かれるものを感じ、何かとつくしの気を引こうとするが、恋に不器用なばかりでなく、自分の美貌や財力になびいてこない女子に出会った経験のない司の作戦は空回りだらけ。一方つくしは、学園の生徒たちからつま弾きに合っていた自分の危機を救ってくれた類のことが気になりはじめる。だが類の心には慕い続ける至高の女性・藤堂静(華雅りりか)の存在があって……。

伝家の宝刀『ベルサイユのばら』が宝塚歌劇の代名詞ともなっていることを振り返れば当然にも思えるが、宝塚歌劇と少女漫画の親和性の高さには揺るぎないものがある。両者の間には乙女が(現でも、元でも、精神としてでも)現実をひと時忘れて理想の世界に飛翔できる、夢を仮託できる世界という堂々たる共通項があって、それが数々の少女漫画の宝塚化を可能にしてきた根幹だった。

そんなひとつとして、この『花より男子』も、かねてから宝塚での上演が期待されてきたものだった。だが、1992年に連載が開始されている作品の中にある、学園の中でヒロインが他の生徒全員から標的にされる描写や、格差社会がすでに階級社会にまで悪化しているのでは?と囁かれる貧富の差など、作品のカリカチュアを、日に日にフィクションとして笑い飛ばせなくなってしまった現実が、悲しいかな日本にはあった。その軋みが、宝塚化の実現を或いは遠ざけてしまったかな?と危惧した時期もある。
だが、時代が「令和」として新たになった2019年、遂に『花より男子』の宝塚バージョンが登場し、そこに徹頭徹尾の乙女の胸キュンが立ち現れた様には、むしろ清々しいまでの輝きがあった。

その成功を導いたひとつには、単行本にして37巻に及ぶ長大な原作世界の、12巻までの展開に物語を絞った脚本・演出の野口幸作の、非常に巧みな目配りがある。「赤札」を貼られたつくしが学園で受ける仕打ちの描写を、物語展開を支えるギリギリのラインでマイルドにし、感情の昂ぶりや怒り、混乱などもダンスナンバーに変換して、宝塚ミュージカルならではの良い意味の非現実感を加えることで、作品の描写からざらつくものを取り去った様がまず実に見事。更に、映像効果を駆使した現代の処理がなされていつつも「F4」のメンバーが、原作のビジュアルの扉を開いて登場してくる、まさに『ベルサイユのばら』1974年の初演時に使われた手法が踏襲されているなど、宝塚伝統のアナログ感との融合も巧みだ。しかも徹頭徹尾に闘うヒロインの現代性も加味しながら「極普通の女の子のシンデレラストーリー」にテーマを凝縮し、原作で有名な、胸がキュンとする見たいシーンを2時間半の上演時間の中にほぼ全て入れ込んだ手腕には驚かされたほどだった。大の宝塚ファンを公言するだけのことはある、野口の宝塚愛が原作世界と宝塚世界の見事な着地点を演出していて素晴らしい。

更に、この『花より男子』宝塚バージョンを、ひと際高みに押し上げたのが主演の柚香光の存在だ。元々とびっきりの華やかさを持ち合わせ、「花の四人組」ならぬ「花の95期」の代表格の一人として早くから注目を集めてきた人だし、『はいからさんが通る』主演時にも感じたことだが、主演として舞台のセンターに位置した時の、この人が放つ眩さにはちょっと比類のないものがある。今回もこれだけパネル映像が輝く舞台を、更に明るくするその効果が如何なく発揮されていて、道明寺司という、ともすれば鼻持ちならないにも通じかねない俺様キャラを、なんとも愛おしい、愛すべき存在として表出したのに目を瞠る。過去多くのスターがこの役柄を演じてきているが、そのカリカチュアに徹したある種のバカさ加減も含めて、ここまで可愛らしさが前に出た司は、柚香が屈指だと思う。それほど柚香の司は表情豊かで、俺様キャラになるのにも、その行動の歪んだ部分にも、司が育った、傍から見れば申し分のない境遇故の孤独があることが伝わってくる。だからこそ、いびつな寂しさを抱えている司の不器用さを応援したくなる、舞台を観ていて自然に「司、頑張れ」という気持ちにさせるのは、宝塚スターとしての柚香の高い資質故だ。特に「踊る柚香」が最強なことを、演出の野口がきちんと織り込んで作劇に活かしていることも美点になり、時代が動くことが発表されている花組の未来に、一点の曇りも感じさせない見事な主演ぶりだった。

ヒロイン牧野つくしの城妃美伶は、その身体能力の高さを存分に活かし、舞台でのつくしの動きがまるで原作漫画から抜け出してきたかのよう。生きて動いているつくしに説得力があり、バイタリティ抜群。美しい歌声も作品を支える要になり、庶民代表で取り立てて美人でもないヒロインが、夢の王子様によって磨かれ、人も羨むプリンセスになっていく。という設定の斬新さの中にも実はきちんと押さえている、この作品が、つまりは少女漫画が描き続けてきた王道のシンデレラストーリーのヒロインとして、舞台に躍動していた。トップ娘役という称号を現時点では有していない娘役が、こうして適材適所でヒロイン役を担えるのは素晴らしいことで、城妃はもちろん実力や多くの美点を兼ね備えた娘役に、今後も光を当てていく機会が多くあることを願う。

そのつくしの初恋の人になる花沢類の聖乃あすかは、「F4」の中でも特に人気の高いキャラクターを、持ち前の美貌を生かしてミステリアスに表現している。柚香の押し出しに対して個性に静けさがあるのも非常に良い対比になっていて、三角関係のバランスが上々。大役の責任を果たしていた。その上で聖乃の場合は、本人の美貌がまだ舞台では十全に発揮されていない面があるが、それはつまりまだまだ伸びしろがあるということ。男役としての表現を一層獲得していくと、とびっきりの男装の麗人になる資質十分な人が、ここで大きな役柄を経験できたことは宝塚にとっても貴重なものになるだろう。更なる飛躍を期待したい。

また、「F4」のメンバー美作あきらの優波慧は、個性豊かな四人の中のまとめ役的な存在感をきちんと発揮したし、西門総二郎の希波らいとは、このメンバーの中で仲間感を出すことがまず大変だったろうほどの大抜擢だが、果敢に四人組として舞台に位置できたことは大収穫。二人の役柄は、司、類に比して、時間の制約の中でどうしても個人のドラマが描かれていないだけに、その中でもちゃんと「ダチ」で、ちゃんとかけがえのない「仲間」を表現した健闘を称えたい。四人が殴り合いになる名シーンがあるが、恋愛とは全く別に、女子が立ち入れない男子の、男子だけの結束もまた乙女の胸キュン要素のひとつで、そこが舞台に自然に出た四人組のわちゃわちゃ感と友情の表出が光った。

娘役では藤堂静の華雅りりかが、類が想い続け、ヒロインが憧れと尊敬を抱く理想の女性を見事に描き出して「花娘」の底力を感じさせれば、三条桜子の音くり寿がひと捻りある役どころを絶妙の匙加減で演じて実力を示している。他にもつくしの両親の高翔みず希、美花梨乃のコミカルさに加え、冴月瑠那、航琉ひびき、羽立光来、紅羽真希、峰果とわ、ら「花男」たちが様々な役柄で、毬花ゆめ、若草萌香、鈴美梛なつ紀、ら「花娘」たちがつくしに敵対する女子たちなどで物語世界を活写。つくしの親友・松岡優紀の朝葉ことの、の真っ直ぐな愛らしさも目を引いた。

何よりも、数多のヒット作品を生んできた原作世界を、宝塚歌劇の魅力を詰め込んだ宝塚バージョンとして仕上げた、華やかさと軽やかさが出色で、大人の中にもある「少女」の感性を刺激する舞台になっている。

初日を明日に控えた6月14日通し舞台稽古が行われ、主演の柚香光と城妃美伶が囲み取材で公演への抱負を語った。

まず柚香が「皆様本日はお忙しい中いらしてくださってありがとうございます。宝塚歌劇花組で本当に皆様に愛されている『花より男子』という作品を舞台化させて頂くということで、皆で心を込めてお稽古して参りました。ですが舞台に来て、お衣装を着て、装置の中で、そして生のバンドの方と上演するとなると、また新たな課題がたくさんありましたので、明日の初日までにまだあと19時間はありますよね?なので、皆で出来た課題に向かって更に突き詰めていきたいと思っております」と、通し舞台稽古を終えたばかりの、心境を含めた挨拶を。

また城妃が「本日はありがとうございます。この作品をお稽古していく中で、どんどん『花より男子』というものが大好きになりました。そして今日初めて舞台でやらせて頂いて、『花より男子』を愛しているたくさんの方々に、愛して頂ける作品になるように、毎公演心をこめて演じていきたいなと思っております」と、意気込みを語った。

更に、数々のメディアミックスがなされている作品の、宝塚版ならではの見どころは?との質問に、柚香が、数々のダンスと歌のナンバーで紡がれる物語世界を挙げ「こんなに急に歌い出し、踊り出す牧野つくしと道明寺司もいないだろう(笑)と思います。私も発作のように踊り出すので(笑)。気分が高まってきたり、自分で整理がつかなくなると踊るというのは、宝塚ならではだなと感じています」と朗らかに語ると、城妃がそれに加えて「やはり男役さんがやられる「F4」は少女漫画の世界そのままで、私もときめきが止まりませんので、客席の皆様に是非牧野つくしになって頂けたら」と娘役らしい視点での見どころを披露。

また、実際に演じて役柄に感じた魅力は?との問いには、柚香が、この作品を舞台化するにあたって改めて作品を読み返し、俺様キャラだと思っていた司を「なんと可愛い奴だ!」と感じ、愛おしくなったと述べると、城妃もつくしの周りの人を巻き込んでいくエネルギーが本当に魅力的だと感じると話し、二人がそれぞれに感じた魅力が役作りに生かされていることを感じさせていた。

尚、囲み取材の詳細は岩村美佳撮影の舞台写真と共に、9月9日発売のえんぶ10月号にも掲載致します!どうぞお楽しみに!

【公演情報】
宝塚歌劇 花組公演  TAKARAZUKA MUSICAL ROMANCE 『花より男子』 ~原作 神尾葉子「花より男子」(集英社マーガレットコミックス刊)~
原作◇神尾葉子
脚本・演出◇野口幸作
出演◇柚香光 城妃美伶  ほか花組
●6/15~7/2◎TBS赤坂ACTシアター
〈料金〉S席 7,800円 A席 5,000円
〈お問い合わせ〉宝塚歌劇インフォメーションセンター 0570-00-5100
〈公式サイト〉https://kageki.hankyu.co.jp/

 

【取材・文・撮影/橘涼香】

 

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