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愛希れいか主演で伝説の映画が舞台に蘇る!ミュージカル『フラッシュダンス』開幕!

1983年に公開され、世界中で大ヒットを記録した伝説の映画の舞台化であるミュージカル『フラッシュダンス』が、9月12日東京・日本青年館ホールで開幕した(26日まで。のち10月3日&4日愛知・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール、8日~11日大阪・梅田芸術劇場 シアタードラマシティでも上演)。

ミュージカル『フラッシュダンス』は、オリジナル映画版の脚本・原案を務めたトム・へドリーを舞台版脚本に迎え、映画版の遺伝子を受け継ぎながら、よりダンスと音楽をフィーチャーしたミュージカル作品。宝塚歌劇団月組トップ娘役として活躍したのち、退団後も『エリザベート』『ファントム』と大作ミュージカルのヒロインを演じている愛希れいかの、初単独主演作品であり、愛希のダンス力はもちろん、カンパニーの多彩な魅力が詰め込まれた舞台となっている。

【STORY】
1983年、アメリカペンシルベニア州ピッツバーグ。昼は製鉄所の溶接工、夜はハリー(なだぎ武)の経営するバー「ハリーズ」のフロアダンサーとして働くアレックス(愛希れいか)は、いつかプロのダンサーになりたいと夢みながら日々懸命に過ごしていた。そんな彼女に製鉄所の合理化を託されて赴任した御曹司、ニック・ハーレイ(廣瀬友祐)は一目惚れするが、自分とニックとでは住む世界が違うと感じるアレックスは、彼のアプローチを拒み続ける。
一方、アレックスの親友で同じくプロのダンサーを目指しているグロリア(桜井玲香)は、自分よりも遥かに才能があると感じるアレックスに、ダンスの名門学校「シプリーアカデミー」のオーディションを受けるよう勧める。ダンスの恩師であるハンナ(春風ひとみ)からも背中を押されたアレックスは、意を決してオーディション会場を訪れるが、周りの熟練ダンサーたちの経歴に、独学でダンスを学んだ自分が太刀打ちできるはずがないと自信を失う。更に、審査員のミス・ワイルド(秋園美緒)から、今日のオーディションは書類選考通過者による第一次審査に過ぎず、ほんの数名だけが第二次審査に進めると聞き、自分が目指す道のりの遠さに打ちのめされる。
折から工場にはリストラの噂が飛び交い、「ハリーズ」も経営不振で賃金カットと、街には暗雲が垂れ込める。そんな現状を打破しようと、コメディアンを目指す恋人のジミー(福田悠太)が武者修行に出てしまったことを嘆いたグロリアは、ダンサー仲間のキキ(Dream Shizuka)やテス(石田ニコル)が案じる中、街で唯一台頭しているストリップクラブのオーナーC.C.(植原卓也)のスカウトに惹かれていく。そうとは知らないアレックスは、ニックの熱烈な求愛に心を開いていくが、ある出来事をきっかけに二人は衝突して……

「フラッシュダンス…ホワット・ア・フィーリング」「Manhunt」「Gloria 」等々、多くのヒット曲を生み出した映画『フラッシユダンス』は、80年代を代表するダンス映画として一世を風靡した作品だ。これらのヒット曲に乗せて劇中で踊られるダンスシーンが、ミュージックビデオ的な作りだったこと。アレックスが自らのダンスに取り入れていく、街角で少年たちが繰り広げるパフォーマンスが「ブレイクダンス」と認知されるよりも以前の映画、つまりハリウッド映画としてはじめて「ブレイクダンス」を取り上げた作品だったことも含めて、のちの映画界に与えた影響も非常に大きく、ダンスを中心に据えた青春映画として一時代を画してきた。

その数々のダンスシーン、ミュージックシーンがあまりにも印象的だった為に、実はあくまでもミュージカル映画ではなかった、ということさえがピンとこないほどの作品だから、『フラッシュダンス』がミュージカルとして舞台化され、2020年本邦初演を果たすという情報に期待が高まったのも当然だった。中でもやはりヒロイン・アレックスを愛希れいかが演じるというキャスティングの妙味が、大きな興趣を生んでいた。と言うのも愛希は、近年の宝塚歌劇団の中では非常に稀な6年7ヶ月という長期に渡って、月組トップ娘役を務めた人だし、当時からそのダンス力には定評があって、ショー作品などでは愛希を中心に踊りまくる大ダンスナンバーが、当時の月組のアピールポイントになっていたほどだ。彼女が踊る「ホワット・ア・フィーリング」と聞いただけで、これは観たい!と思わせる効果は絶大だった。

その期待に違わず、アレックスとして舞台で躍動する愛希が素晴らしい。溶接工の作業着であるオールインワンもチャーミングだが、長い手足が際立つステージ衣装や、レオタード姿がなんとも美しく、踊りまくる様が魅力にあふれている。同じようにプロダンサーになりたいと夢見ているグロリアが、アレックスの才能は別格と認めることも素直に納得させられた。原典映画の95分間に比して、上演時間が25分休憩込み3時間強と長尺なこともあって、アレックスの逡巡がやや長く感じられる部分もあるが、その憂いも全て吹き飛ばすダンスシーンが爽快。映画版で最も有名な「ウォーターシーン」のシルエットも完璧で、アレックスの抱える屈折と夢が現在でも全く色あせていないことを実感させる、「女優・愛希れいか」の代表作のひとつになることは間違いない熱演だった。

そのアレックスに一目惚れするニックの廣瀬友祐が、名門の家柄に生まれついた幸運と、だからこその重荷を担っている青年を純粋に見せている。元々のビジュアルに王道の王子様感があるし、家族や会社の期待通りに人員削減をするのではなく、雇用を守りながらなんとか工場を維持したいと願う青年の心根が真摯に表われていて、アレックスに度々フラれながらも、求め続ける恋模様を応援したくなる。廣瀬の舞台には、作品を重ねる毎に、観る度に若返っていく印象さえあって、役幅が日増しに広がっていると感じられるのも嬉しい。

グロリアの桜井玲香は、長身揃いのキャスト陣に入っているだけに、頭のてっぺんから足の先までがキュート。今の自分と理想の自分とのギャップに悩む、青春真っただ中の役柄がピッタリで、どこか危なっかしい行動までもが愛らしい。際どい展開になりかかるダンスシーンを映像で象徴したのも良い配慮で、桜井ならではのグロリア像になった。

ジミーの福田悠太は、やはり夢を追い求めるあまりの不器用な行動を嫌味に見せなかったのが、福田の愛すべき持ち味あってこそ。グロリアが怒るのも無理はない…というある意味の身勝手さを、やはり青春期の輝きに変換していて、ホロリとさせられる。

一方、舞台版で役柄の妖しさが全開になったC.C.の植原卓也が、強いアクセントになっている。『ダンス オヴ ヴァンパイア』で見せた突き抜けた魅力を更に増幅させていて、色濃い役柄を自在に演じ、一部回収しきれていない伏線も自らねじ伏せた格好。着実に力をつけていることを改めて感じさせた。

アレックスのダンサー仲間、キキのDream Shizukaは、E-girlsなどを中心としたユニット活動を経て、ソロ歌手としてまた女優として活躍している人だけに、そのパッショネイトな歌声が群を抜く。『フラッシュダンス』の世界観に声質が見事にはまっていて、この舞台にとって貴重な存在になった。
もう一人のダンサー仲間テスの石田ニコルは、適度に肉感的な舞台姿がなんともセクシー。それでいてサバサバとした健康美も感じさせるのが石田の個性故で、アレックス、グロリア、キキ、テスの四人、それぞれのキャラクターを立たせることに大きく寄与していた。

アレックスを導くダンスの師であるハンナの春風ひとみは、主に車椅子に乗っての登場だが、リタイアしたバレエダンサーで、アレックスの才能を見抜いている人物としての背景がしっかりと見えて、芝居巧者の春風ここにあり!を感じさせる。宝塚歌劇団時代には愛希と同じ月組を代表する娘役でもあった人だけに、時を超えた二人の師弟関係にも大きな感慨があった。ミュージカルが身体に入っている人が、こういう要の役柄を演じてくれる強みが舞台を支えている。

そのハンナを見守るルイーズと、「シプリーアカデミー」のミス・ワイルドを二役で演じ分けた秋園美緒も、ヒロイン役も多く務めた元宝塚歌劇団娘役の出自を持つ。『エリザベート』『ロミオ&ジュリエット』等大作ミュージカルでも着実に活躍していて、実はかなりの早替わりもある二役をくっきりと演じ分けている。特にクライマックス近く、アレックスのダンスをジャッジしていく際の表情変化がストーリーを伝えて見事だった。

ハリーのなだぎ武は「ハリーズ」のオーナーとしてシビアな顔も見せつつ、根底に優しさのある役柄を自在に表現していて、ジミーとの関係が滋味深い。アンディの松田凌も工場での複雑な想いを爆発させるシーンの熱量の高さをはじめ、どこにいても目を引く華やかさで躍動。振付家としても大活躍中の大村俊介(SHUN)演じるジョーの、ニックと工員たちの間を取り持とうとする気配りの細かさが、ダイナミックなダンスと好対照をなしていて面白い。

他にも、原田治、飯田一徳、穴沢裕介、HILOMU、杉山真梨佳、井出恵理子、美麗、織里織、輝生かなでの面々が、八面六臂の大活躍。日本版脚本・訳詞・演出を担当した岸谷五朗がディレクションする舞台に常にある、メインキャストとアンサンブルという概念を取り払った、等しく全員が舞台の貴重な担い手という美意識が貫かれていて、全員になんらかの形で見せ場が用意されているからやり甲斐も大きいことと思う。愛希と同時期に宝塚月組の男役として活躍していた美麗、輝生かなでのスペシャルなボディやダンス力も存分に活かされ、目が足りないほど。その分どうしても舞台にいる人数が多く、上演時間が長くなる為にストーリーの流れがゆったりになる部分は散見されるものの、個々繰り広げられる圧巻のパフォーマンスが潤沢。特に新型コロナ禍から立ち上がろうとしている演劇界にとっても、今の時代の空気にとっても、こうした観劇後の幸福感が大きな物語は貴重で、舞台から笑顔とパワーを受け取れる作品になっている。

【キャスト・スタッフ初日コメント】

愛希れいか(アレックス役)
今こうしてこの作品を届けられるということ、チケットを買って劇場に来て下さるお客様がいて下さるということがなによりも幸せですし、感謝の気持ちでいっぱいです。今回、いつもより制限があるお稽古の中でも、とてもストイックに、そして本当に楽しくお稽古できたのは、思いやりに溢れた愉快な個性的なキャストの皆様のおかげです。この状況で、みんなで作り上げたこの舞台はいつも以上にたくさんの想いが詰まっています。
エンターテイメントのもつ力を少しでも感じて頂き、観終わった後には、前に向かって一歩踏み出す勇気を持ってもらえるような、明日への活力になる……誰かの背中を押せる……そんな舞台にしたいと思っています。私が今できる全てを懸けて挑みます!どうぞ、よろしくお願い致します。

廣瀬友祐(ニック役)
自分の中で止まってしまったものが、また凄まじいエネルギーで動き出そうとしています。当たり前じゃない一瞬一瞬に命を注ぎたい。危険は常に隣合わせかもしれません。でもだからこその興奮がこの作品には間違いなくあると思います。すでに心が震えてます。このパワーがこの先の未来を照らせるように魂込めたいと思います。よろしくお願いします。

桜井玲香(グロリア役)
無事に初日を迎えることができて、先ずはホッとしています。どこか不安を拭えないまま、それでもカンパニーみんなで初日を迎えられると信じて、日々頑張ってきました。色々な想いが詰まったこの作品を、お客様の心にしっかりと伝えたいと思います。

福田悠太(ジミー役)
ミュージカル『フラッシュダンス』。一流のプロの方達ばかりの舞台上に、ジャニーズの一般人の僕がどこまで馴染めるのかお楽しみ下さい。馴染めてなかったらどうしよう。緊張するなあ。33歳にもなってこんなに緊張させてくれるミュージカル『フラッシュダンス』。最高です。この大変な時期に会場に集まって下さるお客様、皆様に少しでも夢と感動を与えられるよう頑張ります。

岸谷五朗(日本版脚本・訳詞・演出)
三月、四月、五月コロナによって主催する『地球ゴージャス』の大切な25周年記念公演のほとんどが吹き飛ばされた!何処にもぶつけられないエンターテイメントの浮かばれない魂の憤りは沸々と熱を帯び、その時をずっと待っている。この瞬間(とき)に初日を迎える公演は私達だけではなく演劇関係者皆の期待を背負う。他の公演の千穐楽までの完走を我々が祈るように『FLASHDANCE』は繊細に毎日の稽古を重ね周りからも愛されて来た。初日の産声をこれほど未来の可能性だと感じる公演は初めてだ。リスクを背負い劇場に足をお運び下さるお客様!徹底した対策を講じてお待ちしております。

【公演情報】
ミュージカル『フラッシュダンス』
原作◇トム・へドリー&ジョー・エスターハス作 パラマウント・ピクチャーズ映画「FLASHDANCE」
脚本◇トム・へドリー(映画「FLASHDANCE」)&ロバート・ケイリー
音楽◇ロビー・ロス
作詞◇ロバート・ケイリー&ロビー・ロス
日本版脚本・訳詞・演出:岸谷五朗
出演◇愛希れいか 廣瀬友祐 桜井玲香 福田悠太(ふぉ~ゆ~)植原卓也 Dream Shizuka 石田ニコル/春風ひとみ
なだぎ武 秋園美緒 松田凌 大村俊介(SHUN)
原田治 飯田一徳 穴沢裕介 HILOMU 杉山真梨佳 井出恵理子 美麗 織里織 輝生かなで
●9/12~26◎東京・日本青年館ホール
〈料金〉S席12.500円 A席8.500円 B席6.000円(全席指定・税込)
見切れS席12.500円追加販売決定(舞台の一部が見え辛い可能性あり)
※貸切公演以外の全公演日本青年館当日券売り場にて、当日券販売あり。各公演開演1時間前より販売。
〈お問い合わせ〉チケットスペース 03-3234-9999(平日10時~12時、13時~15時)
●10/3~4◎愛知・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
〈料金〉S席12.500円 A席8.500円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉サンデーフォークプロモーション 052-2-320-9100(全日10時~18時)
●10/8~11◎大阪・梅田芸術劇場 シアタードラマシティ
〈料金〉S席12.500円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場 シアタードラマシティ 06-6377-3888(10時~18時)
〈公式サイト〉http://flashdancethemusical-jp.com/

 

【取材・文/橘涼香】

 

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