まんが日本昔ばなし 舞台版『伝説・桃太郎~鬼の絆~』大和悠河インタビュー
誕生から50年近く立った今でも幅広い年代に愛され続けている国民的アニメ「まんが日本昔ばなし」が、舞台版『伝説・桃太郎~鬼の絆~』として、明日、6月7日~11日、ヒューリックホール東京にて上演される。
昔ばなしとして代々伝承されてきた物語には、様々な教訓や人として大切にするべきものを次の世代に語り継ぎたい、という先人たちの思いが込められている。
桃太郎の物語に込められた「語り継がれる思い」とは何なのか。鬼子母神・羽衣役として今作に出演する大和悠河に、作品にかける思いを聞いた。
(※インタビュー記事中に、役についてのネタバレあり)
鬼の苦悩も表現したい
──今回のお話が来たときに、最初に抱いた印象を教えてください。
私たちがよく知っている桃太郎ではなくて、物語の元をたどっていくと「古事記」にたどり着くという、非常に興味深い台本でした。鬼子母神は物語のキーポイントになっている役なので、ぜひ演じてみたいなと思いました。
──「桃太郎」という話を掘り下げてみると、人と鬼の関係性や、鬼の視点から見るとどうだったんだろう、など深く考えさせられるテーマを描いた作品だなと今回改めて思いました。
「鬼ってなんだろう」ということも考えさせられますよね。今作を見ていると、勝った方が美化されて、負けた方が悪く言われることが世間的にもよくあると思いますが、鬼は負けた方だから悪く言われてしまったのかな、とも思いました。あとは、人間誰しも、良い部分と悪い部分の両方を持っていると思うのですが、その中でも邪悪な部分を「鬼」と言っているのかな、という気もしました。ひとりの人が、見方によって天使に見えたり鬼に見えたりするんじゃないか、というような観点で今回は演じられたらいいかなと思っています。
──桃太郎側から見れば鬼ヶ島にいるのは「鬼」かもしれないけれども、逆に鬼側からすれば鬼ヶ島に乗り込んでくる桃太郎たちの方が「鬼」に見えたかもしれない、という考え方もできますね。
鬼たち自身は初めから鬼だったわけではなくて、周りが「鬼」と呼んでいるだけで、自分たちのことを鬼だと思っていないんですよね。だから「鬼だから悪い」という一般的なイメージとは違って、そこには鬼と呼ばれてしまう理由、そうならざるを得なかった物語がありますし、それによっての苦悩も出てくるので、そういった鬼の思いも表現したいと思っています。
──大和さんは「まんが日本昔ばなし」が好きでよくご覧になっていたそうですね。
小さい頃にテレビでよく見ていたんですけれども、道徳観というか、「こういうことはしちゃいけないよね」とか、「人には優しくしたいな」という気持ちが養われたと思っています。桃太郎もそうですし、他の昔話も古くからの人の思いというものが込められていて、それを後世に伝えたいという人々の思いが物語になって伝わっていると思います。私たちもこうやって次の世代に語り継ぐことによって、そうした大切なものも伝えているんだな、それってすごいことだな、と改めて思います。
人のことを思いやる心が詰まった物語
──桃太郎役の和田優希さんはジャニーズ所属ということで、大和さんは宝塚時代からジャニーズの方との共演が多くて、4月も松竹座でやはりジャニーズ所属の室龍太さんと共演されたばかりです。
ジャニーズの人たちってすごく純粋で、どんどんいろんなことにチャレンジして飲み込んでいくので、そこが頼もしいです。和田くんはすごくしっかりしていて、落ち着いているところが彼の魅力だと思います。もっとこれから稽古の中で彼のいろんな要素がどんどん出てくるのかなと思うので、楽しみですね。
──個性的で存在感のあるキャスト陣が揃いました。
それぞれいろいろな畑から集まってきているメンバーなので、豊かな味が出るんじゃないかなと思います。ただ、なかなか全員で集まれないので、作品の全体像が見えるのは舞台稽古に入ってからなのかなという気はします。
(※以下、役についてのネタバレあり)
──大和さん演じる鬼子母神・羽衣は物語において重要な鍵を握っています。どのような役か教えてください。
私の役は、実は桃太郎の母なのです。鬼の絆の鬼とは『心』なのです。戦いに負けた側の人間で、追われて逃げている中で自分の子どもを助けるために、桃に託して川に流したんですね。桃は邪気を払うと言われているので、きっと桃が守ってくれて誰かが受け取ってくれるだろう、という母の思いが込められています。それから子どものことをずっと思っていて、川に流したことを後悔する思いと、生きていてほしいという思いを抱えているんです。
──桃太郎が対峙する鬼が、実は親だったという驚きの展開ですね。
鬼の正体もそうですし、物語全体がイザナミ・イザナギが出てきて人と神を作るというところから始まるという、ものすごく大きな話なんです。言葉や態度には出さなくても人のことを思いやって生きていくという、そんな日本ならではの心が桃太郎の物語には詰まっているんじゃないかと思います。
──歌も2曲聞けるということで、そこも楽しみです。
今回歌うのは私だけなんですよ。どちらも子どもを思って歌う曲なので、大事に歌いたいです。最後に歌う「かあさん」という曲は「日本昔ばなし」のエンディングに使われていた曲で、みんな子供時代はこんな気持ちだったよね、と温かくなれる歌なので、ほっこりしていただけるように歌いたいです。
──今回は大和さんのいろんな魅力がギュっと詰まった作品になりそうですね。
一つの役の中で母親の部分と鬼の部分、と違った顔をお見せできるかなと思います。歌も歌いますし、なぎなたを使ったシーンもありますし、私自身もいろいろな魅力が出せたらいいなと思って挑みたいと思います。
■PROFILE■
やまとゆうが○東京都出身。1995年に宝塚歌劇団に入団。宙組男役トップスターとして活躍、09年に退団。翌年、ブロードウェイミュージカル『CURTAINS』で女優デビュー。代表作は『細雪』(舞台・明治座) 四女・妙子役、ブロードウェイミュージカル『CHICAGO』(舞台・ニューヨークリンーカンセンター)主演・ロキシー・ハート役、ハンブルク州立歌劇場・二期会共同制作オペラ『魔弾の射手』(舞台・東京文化会館大ホール) 悪魔ザミエル役、『怪盗クイーンはサーカスがお好き』(アニメ・ポニーキャニオン)) 主演・怪盗クイーン役など。9月にブルー・アイランド版オペラ『モーツァルト/コシ・ファン・トゥッテ』、10月に演劇ユニット「新派の子」公演『新編糸桜』みつ役の出演が控える。
【公演情報】
まんが日本昔ばなし 舞台版『伝説・桃太郎~鬼の絆~』
原作協力:『まんが日本昔ばなし』(愛企画センター)
上演台本・演出:モトイキ シゲキ
音楽: 鎌田雅人
配役/出演
吉備の国 桃太郎:和田優希(SpeciaL/ジャニーズJr.)
鬼子母神<羽衣>:大和悠河
吉備の国 犬次郎<犬飼健>:小西貴大
吉備の国 猿吉<猿楽森彦>:花園直道
吉備の国 キジ姫<留玉臣>:小越春花(NGT48)
赤鬼:田代大悟
青鬼:石井智也
妖っ子 カスミ:谷田ラナ
イザナミの巫女 みやび<黄泉醜女>:黒田こらん
鬼<温羅>:門戸竜二
おばあさん/女の神 イザナミノ尊:松原智恵子 〔特別出演〕
おじいさん/男の神 イザナギノ尊:片岡鶴太郎 〔特別出演〕
●6/7~11◎ヒューリックホール東京(東京都千代田区有楽町2-5-1 有楽町マリオン11F)
〈料金〉9,500円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈お問い合わせ〉公演事務局 https://supportform.jp/event(平日10:00~17:00)
〈公式サイト〉https://mukashi-banashi.jp/
〈公式Twitter〉https://twitter.com/muka_bana_jp
【取材・文/久田絢子】
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