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初演から45年の節目に蘇るまばゆい作品世界『ベルサイユのばら45』~45年の軌跡、そして未来へ~開幕!

宝塚歌劇団の代表作『ベルサイユのばら』が、1974年の初演から45年を迎えたことを、作品所縁の宝塚OGたちが集って祝う祭典『ベルサイユのばら45』~45年の軌跡、そして未来へ~が、東京国際フォーラムホールCで本日1月27日から開幕する(2月9日まで。のち、大阪・梅田芸術劇場メインホールにて2月16日~24日まで上演)。

『ベルサイユのばら』はフランス大革命の嵐の中断頭台の露と消えた王妃マリー・アントワネット、その恋人でスウェーデン貴族のフェルゼン伯爵等実在の人物に、女性でありながら王家を守護する軍人になるべく、男の子として育てられた男装の麗人オスカル、その乳兄弟アンドレら、創作の人物を絡めて描かれた池田理代子の大人気少女漫画を、宝塚歌劇団が初めて舞台化した作品。原作の名場面を大胆に取り込んだ脚本・演出の植田紳爾の、歌舞伎世界にも通じる手法が功を奏し、後に「マリー・アントワネット編」と呼ばれた1974年月組での初演は瞬く間に大評判に。続く1975年花組、雪組で連続上演された「オスカルとアンドレ編」でその人気は不動のものとなり、宝塚歌劇と言えば誰でもが『ベルばら』を連想すると言われるほどの、メガヒット作品に成長していく。その後も節目、節目で演じるスターに合わせ「フェルゼン編」「アンドレ編」「オスカル編」等、少しずつ変容を続けながら、「今宵一夜」「バスティーユ」「牢獄~断頭台」など、「『ベルサイユのばら』〇〇の場」と言いたい形での名場面が受け継がれ、この作品をテレビで観たのが入団のきっかけ、という次代のスターを次々と生み出しながら、今も宝塚歌劇の金字塔として輝き続けている。

そんな作品の初演から45年を祝うスペシャルステージの、初日開幕を控えた26日にメディア向けの公開ゲネプロが行われ、公演替わりの華やかなスターたちを擁する舞台が全容を現した。

ステージはお馴染みの「ご覧なさい、ご覧なさい、ベルサイユのばら」という開幕の歌からスタート。宝塚歌劇の現役生として専科から特別出演の華形ひかると、OGの緒月遠麻を中心としたプロローグの後、1974年の月組初演に出演している宝塚歌劇団の数少ない現役生である、やはり専科から特別出演の汝鳥怜の紹介による歌とトークのコーナーへ。

『ベルサイユのばら』に関わった数多くのスター達が、公演替わりで出演する趣向のステージだけに、
厳密に言って同じ内容の回はひとつもないというスペシャル感が満載な中、初代マリー・アントワネットの初風諄がこの人の歌からすべてははじまった「青きドナウの岸辺」を変わらぬ歌声で披露。2代目オスカルの安奈淳が「愛の巡礼」、3代目オスカルの汀夏子が「ばらベルサイユ」、初代オスカルにして2代目アンドレでもある榛名由梨が「心の人オスカル」と名曲を歌い継いでいく。70年代のスターたちは、やはりひと際個性的でそれぞれの歌が味わい深い。

作者の植田紳爾が加わり初演時の思い出のトークに。漫画世界を人が演じる、現在は「2.5次元」と呼ばれている世界観を知る由もなかった、45年も前に大人気漫画を演じた折りのプレッシャーと、鬘等のクオリティーも当然ながら現代とは比べようもなかった時代に、多くの人に愛されているキャラクターを如何に美しく舞台に乗せる為に払われた有形無形の努力が語られ、伝説の誕生を感じさせる。
中でも『ベルサイユのばら』の輝かしい歴史に連なり、今は帰らぬ人となった初代アンドレの麻生薫、2代目マリー・アントワネットの上原まり、4代目オスカルの順みつき、そして忘れ得ぬダンサートップスターで、俗に「踊るフェルゼン編」とも呼ばれるほどに、美しいフォルムのフェルゼンを創出した大浦みずきがいてくれたら、この公演の2幕で披露するフィナーレナンバーの再現を見事に踊ってくれただろう、でもきっと皆ここに来て観ていてくれるに違いない、という言葉には涙を禁じ得なかった。

続くソングコーナーは、平成の『ベルサイユのばら』の出演者たちが揃い、麻路さきの「白ばらのひと」一路真輝の「愛の巡礼」杜けあきの「心の白薔薇」紫苑ゆうの「結ばれぬ愛」日向薫の「ばらのスーベニール」。これも公演替わりで登場人数も歌われる曲も変わっていくが、例えばこの日の一路真輝の「愛の巡礼」のように組み合わせによっては、同じ曲が登場することもあるからこそ、歌い手によって全く別の曲に聞こえるという興趣が感じられた。それぞれが宝塚の一時代を背負ってきたスターだけに、1曲1曲にその人の持つ世界観が瞬時に立ち上る様が圧巻だ。

ここまでのキャストメンバーで「愛あればこそ」の大合唱のあとは、いよいよ本格的な扮装による舞台の名場面がダイジェストで綴られる。1幕のダイジェストは「オスカル&アンドレ編」。近衛隊からフランス衛兵隊に転属したオスカルが、衛兵隊士たちと衝突しながら心を通わせていく場面、ベルナールを中心とした革命の炎の高まりを描くナンバー、橋上でのアンドレの最期、そして「バスティーユ」と想像以上に本格的なダイジェスト上演だ。初日のキャスト稔幸オスカルと水夏希アンドレ、朝海ひかるオスカルと湖月わたるアンドレの二組が場面をつないでいく。誰もが扮装をして全く違和感がないばかりか、それぞれの歌唱力が現役時代よりも格段にアップしているのが、場面の感動を更に深める。全公演に出演する華形ひかるのベルナール、緒月遠麻のアランらが固める中、こういうダイジェスト上演、しかもメンバーが公演替わりでというレアな形態に耐えるのが、『ベルサイユのばら』の宝塚歌舞伎とも言える名場面自体が持つ力だなと感じられた。

休憩を挟んだ2幕は「フェルゼンとアントワネット編」の名場面ダイジェストで開幕。アントワネットを糾弾する民衆たち、そのアントワネット救出に向かうフェルゼンの「駆けろペガサスの如く」、そして名場面中の名場面「牢獄~断頭台」へと続いていく。初日のフェルゼン和央ようか、アントワネット白羽ゆりの組み合わせが新鮮でありつつ相性が良く、歌うように語られる台詞の数々が美しい。汝鳥怜メルシー伯爵の登場も、直近の宝塚歌劇での上演バージョンと歴代スターたちをつなぐ役割を果たしてくれる。

悲しみの断頭台が光り輝くフィナーレの大階段に変貌する、これぞ宝塚歌劇の『ベルばら』セオリーが、ここでも見事に踏襲されてのフィナーレナンバーもこれまた名場面揃い。「小雨降る路」「薔薇のタンゴ」「ボレロ」の再現が、どんな悲劇もフィナーレを観ている内に心躍らせて劇場を後にできるという、宝塚マジックを知らしめる。ここもすべて公演替わりの出演で、どの組み合わせを選ぶかは悩ましいばかり。この日はフィナーレの歌う紳士Sとして登場した水夏希が、どこか空恐ろしいほどシャープなカッコよさを示した他、「小雨…」の湖月と朝海、「薔薇の…」の稔、「ボレロ」の和央と朝海が、振付陣のスタッフワークの見事さにも思いを致せる踊りっぷりで魅了した他、ビッグサプライズで汀夏子も登場。熱く濃い「炎の妖精」と呼ばれたスターの健在ぶりを示してくれた。最後は全員が登場してのパレードで、本番の熱気はいかばかりかと思わせるステージの幕が下りた。

こうして『ベルサイユのばら45』~45年の軌跡、そして未来へ~に接して改めて思うのは、『ベルサイユのばら』という作品の持つ不思議な力だ。初演から45年。もちろん今の時代のミュージカルとは全く違う概念で編まれている作品だし、独特の様式美は宝塚歌劇の世界の中でも、古典に属するものになっている。旧いと感じる人もいるだろう。それでもこの良い意味で臆面のない煌びやかさ、2500人の大劇場のてっぺんから、裸眼で観ても理解できる大向こうに訴えた非現実が、宝塚歌劇という世界の根本にある大切なものをそのまま示しているのは変わらない。ここにさえくれば3時間の間だけどんなに辛い現実も忘れることができる、徹底的に創り込んだ夢の世界への飛翔を『ベルサイユのばら』は担い続けてきた。揺らがないこの信念がある限り、この作品は不死鳥で、こうしてお祝いの宴に歴史を創ったスターたちが参集することを可能にしている。公演替わりのスターたちが演じる45年分の回顧にして、新たな歴史のはじまり。そんな作品の未来を映す、スペシャルなステージを是非多くの人に体感して欲しい。

〈公演情報〉
『ベルサイユのばら45』~45年の軌跡、そして未来へ~池田理代子原作「ベルサイユのばら」より~
監修◇植田紳爾
構成・演出◇谷正純
音楽監修◇吉田優子
出演◇初風諄 / 榛名由梨 / 汀夏子 / 安奈淳 / 麻実れい / 日向薫 / 紫苑ゆう / 杜けあき / 涼風真世(東京公演のみ) / 一路真輝 / 麻路さき / 稔幸 / 和央ようか / 湖月わたる /星奈優里 / 彩輝なお / 朝海ひかる /貴城けい / 水夏希 /壮一帆 / 白羽ゆり / 凰稀かなめ(東京公演のみ) / 汝鳥伶(宝塚歌劇団) / 華形ひかる(宝塚歌劇団) / 他
※出演キャストは公演毎に異なります。詳細は公式ホームページにてご確認下さい。
●1/27~2/9◎東京国際フォーラムホールC
●2/16~24◎梅田芸術劇場メインホール
〈料金〉S席13,000円、A席9,000円、B席5,000円
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場 東京 0570-077-039 大阪06-6377-3800(10時~18時)
公式ホームぺ—ジ http://www.umegei.com/versailles45/

【取材・文・撮影/橘涼香】

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