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安寿ミラ インタビュー。ココ・シャネルとサンローランの母親を演じる!

フランスを代表する伝説のファッションデザイナー イヴ・サンローランの華麗な人生の光と影を描くミュージカル『イヴ・サンローラン』。この舞台が、いよいよ明日、2月15日によみうり大手町ホールで開幕する。(3月3日まで。3月26日には兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールでも上演)

イヴ・サンローランは、約40年に渡りトップデザイナーとしてファッション業界をリードし、 貴族や女優等にも多大な影響を及ぼした20世紀を代表する世界的デザイナー。
彼の切なくも美しい人生を、ファンタジックに、そしてドラマチックに描き出すこの舞台で、作・演出を担当するのは、文化庁芸術祭演劇部門優秀賞も受賞し、ミュージカルだけでなくストレートプレイやショー等の演出も手がけて、高い評価を得ている荻田浩一。主演のイヴ・サンローランはダブルキャストで、類い稀なる身体能力で魅了する東山義久と、圧倒的な歌唱力で人気の海宝直人が演じる。 共演には上原理生、大山真志、川原一馬、神田恭兵、奥田 努、和田泰右といった若手注目株の男性俳優陣と、伊東弘美、皆本麻帆、そして安寿ミラと多彩で華やかなキャストが揃った。
その舞台で、世界的デザイナーのココ・シャネル役、イヴ・サンローランの母・ルシエンヌ役など複数の役柄で出演する安寿ミラに、作品と役柄について話を聞いた。

180度違うココ・シャネルと
イヴの母ルシエンヌ

──安寿さんにとってフランス、とくにパリは30年近く訪れていて縁が深い場所ですから、イヴ・サンローランも身近な存在では?
それが、そんなに身近な存在ではなかったんです。高名なデザイナーですから一般的な知識はありましたが、それ以上ではなくて、たとえばサンローランのもので持っているのはバッグと香水くらいしかなくて。
──演じる役は同じ時代のデザイナー、ココ・シャネルということですが、ぴったりですね。
皆さんにそう言われますし、シャネル役と聞いたときは「あ、来たか!」と(笑)。でも実はココ・シャネルという人のことも、そんなに詳しくは知らなくて、一代で世界的なブランドを築いた人で、自立した強い女性でというイメージくらいしかなくて。色々な資料を見たら、イヴ・サンローランとはデザイナー同士として刺激し合える存在で、わりと仲が良かったのだなと。
──そのシャネル役だけでなく、イヴ・サンローランの母のルシエンヌ役も演じるのですね。
少年時代のイヴの若い母親で出てきます。作・演出の荻田(浩一)さんは、「シャネルとルシエンヌは180度違う人」とおっしゃっていて、本当に正反対の女性なんです。シャネルは言っていることがすごくよく分かるし、喋り方も普段の私みたいな感じでいいのですが(笑)、ルシエンヌは息子を溺愛している母親で、そのへんは想像しながら作っていっているところです。
──サンローランの一家は仏領アルジェリアで暮らしていたそうですね。
オランというところで生まれて、豊かな自然の中で伸び伸び育ったようですね。姉が2人がいて、みんなに愛されて甘やかされていたようです。ルシエンヌはそういう一家の典型的な母親という感じだったのかなと思っています。
──さらにもう1役、ベティ・カトルーも演じます。
イヴの友人のモデルなんです。彼女が出ている『イヴ・サンローラン』というドキュメンタリーがあるのですが、それを見たら、すごく強い女性でシャネルと似ているんです。劇中でベティに「シャネルがこう言っていたわ」とか喋らせたりするので、荻田さんにとってシャネルと重なる存在として出しているのかもしれません。

 

孤独で壮絶な闘いの代償として
世界中が彼の服を愛する

──ミュージカルということで、音楽はいかがですか?
すごく難解です(笑)。斉藤恒芳さんですから曲はどれも素敵なんですけど、海宝(直人)さんですら「難しい」と言っていて。「あなたがそう言うのなら、私たちはどうしたらいいの」と(笑)。シャネルの長いソロもあるのでプレッシャーです。詩も荻田さんなので美しいのですがすごく抽象的で、歌い手がちゃんと理解していないと伝わりにくいだろうなと。でも素敵な曲ばかりで、イヴが歌うソロなどすごく綺麗で、聞いてて泣けてくるくらいです。
──ダンスもあるのですか?
私は踊らないのですが、6人のアンサンブルの方がダンサーで。ダンスで空間を繋いでいったり、モデルになってランウェイを歩いたりするんです。すごくカッコいいです。時空も変わるし、荻田さんらしい立体的な構成になっていて、とても幻想的な舞台になると思います。
──イヴ・サンローラン役は、東山義久さんと海宝直人さんがダブルキャストで演じますが、2人の個性の違いは?
ヨシ(東山)の場合は、デザイナーとしての孤独がかつて彼が演じたニジンスキーとも繋がるのですが、こういうふうに生きたい、もっと自分はこうなりたい、強くなりたいという、それが見えるようなサンローランです。海宝さんは、自分は全てできるだろうという自信を踏まえた上で、でも誰か居てほしいというンローランで、そばで支えてあげたくなる、母性本能をくすぐられる甘さがあります。そのどちらもイヴ・サンローランなのだと思います。
──今、稽古している中で作品全体からどんなことを感じますか?
やはり荻田さんらしい作品だなと。芸術家の苦悩とか葛藤、名声を掴んでいる人たちがどれだけ孤独だったか、どれだけ繊細だったか、そこに集約されていると思います。名声も富も得ているのに、芯の部分ではこんなにも孤独で苦しんでいたんだという、そこをさらけ出してくる舞台だなと。
──次々に新しいものを創り続けなくてはいけないのですから、本当に苛酷だと思います。
デザイナーって次のシーズンのモードを1人で考えて生み出すわけですよね。それも何百着という単位で。次第にアイデアも枯渇していくでしょうし、誰も助けてくれない。とくにフランスのデザイナーは世界中から注目されているし、国にも期待されていますから。
──創り出すものが国の経済にまで影響するわけですね。
毎回毎回、壮絶な闘いですよね。その中でお酒とか薬物とか、あるいは人に縋ったりすることになる。伝記映画でもそのへんは赤裸々に描かれていましたけど、心も体もボロボロになっていく。でもその代償として、世界中の人たちが彼のファッションを愛して着てくれている。シャネルにもサンローランにも伝えてあげたいですよね。貴方たちの生み出したものは、今でもこんなに愛されているし生きていると。

人間の醜さや影の部分と
美しさや光の部分を同時に描く

──女優・安寿ミラにとって荻田作品の魅力はどんなところですか?
荻田さんは自分が観たい舞台、作りたい作品の色がすごくはっきりしているので、そこへ入っていけばいいので、ある意味ではラクなんです(笑)。もちろんシャネルもルシエンヌも簡単な役ではないですし、とくに今回はルシエンヌ役のような母親役を演じさせてもらうことは、自分にとってまた役柄が広がる楽しみがあります。
──そういう意味では、昨年の夏の稲垣吾郎さんとの舞台『君の輝く夜に』も、新鮮な安寿ミラでした。
あれは等身大でしたね(笑)。普通の女性で、すごくやりやすかったです。とくにそのあとの舞台が『タイタニック』(再演)でしたから、稽古しながら等身大ってなんてラクだったんだろうと(笑)。
──同年代のキャリアウーマンから、上流社会の老貴婦人への変身ですね。
自分でもなんという振り幅なんだろうと(笑)。でも『タイタニック』のアイダさんは本当に素晴らしい女性ですから、あの役をまた演じられて良かったです。
──今回の3役も楽しみです。最後に改めて抱負を。
ルシエンヌ役は、とにかく息子を愛し抜くだけです(笑)。私、意外と子供好きなんですよ。とくに男の子が好きで、小さな男の子を見たら付いて行きたくなっちゃうくらいで(笑)。シャネル役のほうは、皆さんが「ぴったり」とおっしゃる意味がわかるような、チクッと言う一言を面白がっていただけたら(笑)。作品の見どころとしては、皆さんの知らないイヴ・サンローランの世界、彼を取りまく人間たちとか、彼自身の苦悩や孤独を、難解だけど素敵なメロディと美しい歌詞で伝える舞台で、人間の醜さや影の部分と美しさや光の部分を、同時に描き出す舞台になると思います。

あんじゅみら○長崎県出身。1980年に宝塚歌劇団で初舞台を踏み、92年花組トップスターに。95年『哀しみのコルドバ』『メガヴィジョン』で退団。女優として舞台を中心に活躍中。ANJUの名で自身のダンスアクト『FEMALE』の構成・演出をはじめ、宝塚歌劇団など舞台の振付を数多く手がけている。近年の主な出演舞台は『アルジャーノンに花束を』『グランドホテル』『タイタニック』『FREE TIME,SHOW TIME君の輝く夜に』など。3月は宝塚歌劇公演、月組のレビュー・エキゾチカ『クルンテープ 天使の都』、『仙名彩世 ミュージック・サロン』の振付も手がける。

ミュージカル『イヴ・サンローラン』
作・演出◇荻田浩一 
音楽◇斉藤恒芳 
衣裳◇朝月真次郎
出演◇東山義久/海宝直人(Wキャスト)
伊東弘美 皆本麻帆
上原理生(Wキャスト※東京公演2/19まで出演) 大山真志(Wキャスト/役替り・全日程出演) 川原一馬(Wキャスト※2/20以降出演)神田恭兵 奥田努 和田泰右
青木謙 RIHITO 中塚皓平 橋田康 小野沢蛍 中岡あゆみ
安寿ミラ
●2/15~3/3◎よみうり大手町ホール
●3/26◎兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
〈東京公演料金〉11,000円(全席指定・税込)
〈兵庫公演料金〉A席 9,800円、B席 6,800円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東京公演 キョードー東京 0570-550-799
〈お問い合わせ〉兵庫公演 芸術文化センターチケットオフィス 0798-68-0255 
https://www.yume-monsho.com/

【取材・文/榊原和子 撮影/友澤綾乃】

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