《TAKARAZUKA NEWS PICKUP!》その3 待望の宝塚歌劇再開!&『One Heart Project』
東西のお披露目公演開幕日決定と海を超えた『One Heart Project』が伝えるひとつの心
宝塚歌劇公式ニュースの中から特に注目すべき情報をサイト内で語っていく、《TAKARAZUKA NEWS PICKUP!》の第三回は、遂にこの話題を取り上げられる日がやって来ました!宝塚大劇場、東京宝塚劇場再開の吉報が届いたのです。
宝塚大劇場は7月17日(金)から花組の『はいからさんが通る』(脚本・演出 小柳奈穂子)、東京宝塚劇場は7月31日(金)から星組の『眩耀の谷~舞い降りた新星~』(作・演出・振付 謝珠栄)『Ray─星の光線─』(作・演出 中村一徳)の二本立てで、宝塚歌劇の幕が再び開きます。花組は柚香光&華優希、星組は礼真琴&舞空瞳と、東西でのトップコンビお披露目公演。現在開幕が予定されている、他の劇場と同様にソーシャルディスタンスに配慮し、客席はひと席ずつ空席にしてキャパを半減。オーケストラの生演奏は録音に。更に舞台上の人数も制限し、星組の下級生は公演期間の中交互出演にする等、極めて異例の形ではありますが、それでも宝塚歌劇が再び動き出してくれる喜びには代えがたいものがあります。
もちろん観客側も細心の注意を払い、二組の新トップコンビ、新生花組と新生星組の船出を心から祝えるものにしたいと願います。躍動し弾けてくれるに違いない新トップコンビ率いるそれぞれの組の、舞台の感想や、受け取った感激を客席で語るのはしばらく我慢して、銘々家に帰ってから、電話や、オンラインや、SNS上で語り合いましょう! 幸い、この数ヶ月それらに対する知識だけはずいぶん増えた気がします。何しろ客席が半分ですから、観劇できる1回の機会がこれまでの倍貴重なものになります。そもそも果たして客席に座れるのか!?から大問題ですが、自分が座れる座れないの前に、どんなに行きたくても舞台が開いていない、宝塚歌劇が上演されていないという、生まれてはじめて…という事態が解消されると思うだけで心躍るのは、エンターテイメントの底力だなとつくづく感じます。
また宝塚大劇場では月組の『WELCOME TO TAKARAZUKA─雪と月と花と─』(監修 坂東玉三郎 作・演出 植田紳爾)と『ピガール狂想曲~シェイクピア原作『十二夜』より~』(作・演出 原田諒)の二本立て、宙組のミュージカル『アナスタシア』が。東京宝塚劇場では花組の『はいからさんが通る』、月組の『WELCOME TO TAKARAZUKA─雪と月と花と─』『ピガール狂想曲~シェイクピア原作『十二夜』より~』の上演が、年内に行われることが同時に発表されました。小劇場や、他の劇場、また全国での公演が決まっていた数多くの作品は一度中止になりましたが、2021年に向けて、世界が心をひとつに配慮を持って前に進んでいけば、きっとそれらにも再会できる日が訪れることでしょう。そう信じてできることをして、進んでいきたいものです。
そんな嬉しい報せを前に、更に輝く未来を手にいれる為に「心をひとつに」というメッセージが、宝塚からもたらされました。花組の柚香光、月組の珠城りょう、雪組の望海風斗、星組の礼真琴、宙組の真風涼帆、5人の現役トップスターと、ニューヨークを拠点に世界で活躍するミュージカル界のヒットメイカー、作曲家フランク・ワイルドホーンとその夫人であり元宝塚歌劇団宙組トップスター和央ようかの、海を超えた奇跡のコラボレーションが実現したのです。
ワイルドホーン氏のピアノと、5人のトップスターと和央で歌われたのは、2006年に宝塚宙組で上演された小池修一郎作・演出、フランク・ワイルドホーン作曲によるミュージカル『NEVER SAY GOODBYE』の1幕ラストを飾った楽曲「ONE HEART」。和央自身の退団公演でもあったこの作品は、1936年のスペイン軍内部のファシストによるクーデターに立ち向かった民衆たちの、武力抵抗による「内戦」を記録することに命を賭けたポーランド生まれのカメラマン・ジョルジュ(和央ようか)と、ハリウッドで活躍する新進劇作家キャサリン(花總まり)との運命の恋が描かれた大作です。
中でも「ONE HEART」は民兵を利用しようとする者、されまいとする者の間で、新たな対立軸が生まれかける事態に、敵はあくまでファシストであって、今こそ心をひとつに、同じ夢を追い、勇気を抱き、恐れさえも分かち合えば光が見える。友を信じて明日を目指して歩いていこうと、ジョルジュが訴え、全員の大合唱になるビッグナンバー。主題歌「NEVER SAY GOODBYE」と同様の、ある意味ではむしろ更に強烈な印象を残しているとも言える楽曲で、今聞くと、まるで新型コロナ禍の中、誰もが互いを自分と同じように労わり、大切にしていかなければならない、今、この時のためにあるかのように感じられる歌詞に、改めて驚かされたほどでした。
その「心をひとつに」と訴える歌詞に相応しい、美しいメロディーと壮大な世界観を持つ楽曲を書き下ろしたワイルドホーンと、オリジナルの主演者である和央ようかと、2020年の宝塚を代表する現トップ5人が、海を超えて声を合わせる……おそらく、この状況下でしかありえなかっただろう奇跡のコラボレーションには、心を真っ直ぐに打つ力がありました。
同じワイルドホーン作曲による『THE SCARLET PINPARNELL』で宝塚版の為に書き下ろされた「ひとかけらの勇気」もそうですし、全曲がワイルドホーン書き下ろしだった『ひかりふる路─革命家、マクシミリアン・ロベスピエール』の楽曲の数々もそうなのですが、歌う人を想定して楽曲を書くワイルドホーンのスタイルは、宝塚の男役の音域がきちんと意識されていて、女性が男性の役を演じる宝塚歌劇の男役が歌うことに無理がなく、それでいて大きなスケール感を持った楽曲になっているのが強みです。特に「ひとかけらの勇気」は、オリジナルの安蘭けい以降、再演の霧矢大夢、三演の紅ゆずる、それぞれの主演者はもちろん、数多あるミュージカルコンサートの機会に、宝塚OGが歌っているのを聴くことが多いのですが、どの元男役が歌っても、ちょっとこの曲と持ち声が合わなかったかも…と思ったケースがほぼないのには感心させられます。決して簡単な歌とは思わせないながらも、男役の発声で無理なく歌えるワイルドホーンマジックがここにあります。
その意味でも『NEVER SAY GOODBYE』は全曲が宝塚の為に書かれたという強みがあって、それこそミュージカルコンサート等で歌われるのは主題歌と「ONE HEART」が多いのですが、ジョルジュとキャサリンの運命の出会い、互いが「同じものを見て、同じ空気を吸い、同じ夢を追いかける」特別な者同士なのだと歌われる「運命の人」のメロディーラインの美しさ等は、ひと節聞くだけで涙が出るほどで、もう一度聞きたいと折に触れて思います。
そんな楽曲の宝庫でもある作品から「ONE HEART」が、海を超えて歌われたとびっきりの美しさには、ただ感動を覚えました。おそらく淡いブルー系のシャツということだけを打ち合わせたのでしょう、現トップスター5人のスッキリとさわやかな中にただようそれぞれの個性がなんとも素敵です。更に、「ひとつの」「ひとつの」「心に」「心に」と和央のジョルジュがリードして、「コーラスの宙組」と讃えられた宙組メンバーが後追いで唱和するこのナンバーで、ある日和央が歌詞を忘れ、即興で作詞をしたのに全員がちゃんと唱和した、という宙組の歴史に残る有名ハプニングがありますが、まさか2020年に和央がリードして、現トップ5人が唱和する「ONE HEART」を聞ける日が来ようとは!(もちろん歌詞は即興ではありません!)この長かった自粛期間にご褒美をもらったような気さえしました。
全ての人々が肌の色や、文化や、言語や、宗教の違いを超えて、互いを尊重しあえる世界。残念ながら今は夢の中にしかないその世界を、それでも信じ続けること。ここに理想があると訴え続けることが、演劇の、エンターテイメントの大切な使命だと思います。その美しい世界を示してくれた「ONE HEART Project」と手を携えて、106年の長きに渡って愛と夢を描き続けてきた宝塚歌劇の幕が再び開く日。きっと大きな希望と笑顔が生まれるに違いないこの日が、もうすぐそこに見えています。
宝塚大劇場の営業再開ならびに宝塚歌劇公演の今後のスケジュールについて
https://kageki.hankyu.co.jp/news/20200311_001.html
花組 宝塚大劇場公演『はいからさんが通る』について
https://kageki.hankyu.co.jp/news/20200615_1.html
東京宝塚劇場の営業再開について
https://kageki.hankyu.co.jp/news/20200626_1.html
星組 東京宝塚劇場公演『眩耀の谷~舞い降りた新星~』『Ray─星の光線─』について
https://kageki.hankyu.co.jp/news/20200626_2.html
星組 東京宝塚劇場公演 出演人数について
https://kageki.hankyu.co.jp/news/20200626_3.html
特別映像「One Heart PROJECT」公開!
https://kageki.hankyu.co.jp/news/20200620_001.html
【文/橘涼香】
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