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宙組誕生を牽引したトップスリーが集結!Cosmos 25th Special Concert 『 明日へのエナジー』上演中!

宝塚歌劇団第5の組として1998年に発足した「宙組」が、2023年誕生から25周年を迎えたことを寿ぎ、初代トップスター姿月あさと。宙組発足時二番手男役スターで、のち姿月からバトンを引き継ぎ宙組二代目トップスターとなった和央ようか。更に発足時三番手の男役スターとして二人と共に歩み、のち専科を経て星組トップスターとなった湖月わたるが集結。宙組誕生25周年を記念したAnniversary concert  Cosmos 25th Special Concert 『 明日へのエナジー』が東京・大手町のよみうり大手町ホールで上演中だ(6日まで。のち3月11日~14日兵庫・宝塚バウホールで上演)。

宝塚歌劇団は2024年に迎える創立110周年を目前にしていて、最も早く誕生した花組、続いた月組は既に誕生100周年を、更に今年雪組も100周年、星組も90周年をまもなく迎える。

その大いなる歴史の歩みは、栄枯盛衰の激しいエンターティメントの世界にあって希少なものであるばかりでなく、エンターティメント業界全体が苦しい時期にあっても、常にチケット難が叫ばれる揺るぎない人気を誇る存在となっているのは驚嘆すべきことだ。ただその長い歴史故に、「花月雪星」の4組が発足した当時のことを語れる人は、ほとんどいなくなっている。そんななかで、星組誕生から遙かに65年の長きを経て創設された、宝塚歌劇団第5の組の宙組だけは、四半世紀の歴史を共に歩んだファンが多くいて、こうした創設メンバーが勢ぞろいするという企画も叶う、別の意味で特別な歴史を歩んでいる唯一の組でもある。

実際に宝塚と言えば4組で構成されているもの、という認識の歴史が長く続いたあとで、それまで女優芝居などとの兼用で公演が打たれていた、旧東京宝塚劇業が建て替えられるのを機に宝塚歌劇団の常設劇場に生まれ変わり、東京でも本拠地宝塚と同様の通年公演実現にあわせて、新組創設の発表があってからの、新しい時代がはじまる高揚感は格別だった。

しかも各組から選抜された新組のメンバーの明確な特徴は、敢えて単純な書き方をすれば「大きい!」のひと言。それほど高身長の男役が多く集められた「宙組」のダイナミックさ、現代的な香りは、組名が発表された当初、「宙(ソラ)って読めないよね?」と、囁かれたことが嘘のように、「空」は空席の「から」にも通じることから、もっと大きく「宙」の字があてられたというエピソードが「大宇宙」を感じさせて、今や最も相応しい組名と思えるのだからなんとも感慨深い。特に組の中核を担うスターたち以上に、元々在籍していた組のカラーを体現している存在だった個性派の上級生たちが混在していることで、はじめこそ各組選抜メンバーが集まった特別イベント感がどうしても色濃かった陣容が、やがて「宙組」として団結し、独自の色を生んでいく道のりには「組のカラーと呼ばれるものはこうしてできあがっていくのか」という、進化を目の当たりにしている特別な思いがあったものだ。

そんな宙組誕生から四半世紀。姿月、和央、湖月に加えて、歌姫であり宙組組長も務めた出雲綾。名歌手として知られた娘役の久路あかり。やはり歌に高い定評があった男役の天羽珠紀。男役ダンサーとして活躍した光海舞人。そして芝居、歌、ダンスと三拍子揃った男役で、2021年退団後この作品が初舞台となる美月悠と、宙組の歴史を作ってきたメンバーが揃ったオープニングは、もちろんこの曲しかないでしょう!の宙組お披露目公演『エクスカリバー』から「未来へ」。聖剣エクスカリバーが王を指し示したというアーサー王伝説は、舞台芸術だけに絞っても非常に多くの作品が作られていて、宝塚歌劇団でも元月組トップスター珠城りょうプレお披露目公演だったドーヴ・アチアの『キング・アーサー』、現宙組トップスター真風涼帆のバウホール初主演作である生田大和の『ランスロット』をはじめ、次期宙組トップスターに決定した芹香斗亜のプレお披露目公演で、フランク・ワイルドホーン作曲の『エクスカリバー』の上演も決まっているなど馴染み多い題材だ。けれども、宙組発足記念公演に書き下ろされた小池修一郎の『エクスカリバー』は、初代トップスター姿月あさとの、鷹揚で、どこかほんわかとした個性に合わせたほのぼの感のある作品になっていて、ここからはじまる宙組が未来を見つめていく伸びやかさに心躍った、往時の記憶が鮮やかに蘇る。

そこから懐かしい歌の数々が、宙組の歴史を語るコーナーや、様々な思い出のトークをはさみながら続く第1部は、具体的なセットリストは是非実際の舞台で確かめていただきたいが、宙組の歩みに馴染んでいる人ならば「これは当然出るよね!」と納得の楽曲が目白押し。構成・演出の岡田敬二の良い意味で奇をてらわない演出が、この祝祭企画にピタリとハマった安心感がある。姿月、和央、湖月の絆が感じられるトークも楽しく、宙組発足以前の三人の意外な出会いにまつわる歌もあって楽しい。

特に姿月が主演した『激情─ホセとカルメン』は、姿月、和央、湖月が宙組に揃っていた公演だったから、姿月が男役の音域にこだわらずにハイトーンも織り交ぜながら歌う「幸せ」の切ないナンバーをはじめ、オリジナルメンバーで届けられる強みがある。

その一方で和央トップスター時代の楽曲になると、当然ながら姿月は退団しているし、湖月も専科から星組へと組替えしていったあとの作品もあることから、三人が現役時代には実現しなかった夢の組み合わせで披露される楽曲も多く、これは予想外のビッグプレゼントで、なんともワクワクさせられる。

そんななかで、オリジナル中のオリジナル、和央のトップ披露公演『ミレニアム・チャレンジャー』で、そのすべてにおいて大きな存在感とダイナミズムが際立った「荒波の歌」を、湖月が颯爽と歌いきる様はまるで現役時代の勢いさながら。

更に、和央の退団公演『Never Say Goodbye』から「One Heart」がメンバーと唱和されると、昨年真風涼帆主演で再演されたばかりなこともあって、宙組の歴史が一気に流れ出てくるよう。和央の音域にあわせて書き下ろされたフランク・ワイルドホーンの楽曲は、和央のより深みを増した声質にベストマッチ。本公演から思えば劇的に少ない人数だということも忘れさせる圧巻の歌唱が胸を打った。

休憩を挟んだ第2部は、姿月、和央、湖月が退団後に再び縁をつないだミュージカルの楽曲や、ジャズナンバーなど切り口を変えた構成で、退団後に三人が築いてきたキャリアが、より一人ひとりを魅力的に見せていく。出雲、久路、天羽、光海、美月にも、様々な形で見せ場があるのが美しく、演出の岡田らしい愛情に溢れる。更に三人がそれぞれの思いを込めて選んだソロナンバーにもまだまだここから進化していく、自身と宙組に対するエールが見えるようで、三人の今後にも注目していきたい気持ちが募った。

そして、いよいよ待ってました!の公演タイトルにもなった「明日へのエナジー」が。これは言うまでもなく、岡田敬二が宙組お披露目公演二本立てのひとつ『シトラスの風』のクライマックスに作った名場面で、歴代宙組トップたちによって何度となく再演されている、まさに宙組の代名詞とも言える1曲。オリジナルの姿月の歌唱はあくまでも温かく、ここから明日へ向かって羽ばたいてゆけ!という思いのこもったこの曲が、宙組の魂のリレーを支え、更なる明日へとつながっていくことに胸が熱くなった。

何よりも、姿月あさと、和央ようか、貴城けい、大和悠河、大空ゆうひ、凰稀かなめ、朝夏まなと、そして現トップの真風涼帆、更に芹香斗亜へと続く宙組トップスターの系譜。また花總まり、紫城るい、陽月華、野々すみ花、実咲凜音、星風まどか、現トップ娘役の潤花から春乃さくらへ引き継がれる娘役トップスターの軌跡をはじめとする、宙組の歴史。そのはじめの一歩の土台固めを不断の努力で続けた姿月、和央、湖月の邂逅が、宙組誕生25周年にこうして再びひとつのコンサートを作り上げたことが尊く感じられる舞台だった。幸いにも宝塚バウホール公演の配信も決定したこのCosmos 25th Special Concert 『明日へのエナジー』のステージを通じて、歴史を共にしている人はもちろん、新たなファンにも是非宙組誕生時の独特の熱気を追体験して欲しい。

【公演情報】
Cosmos 25th Special Concert『明日へのエナジー』
構成・演出:岡田敬二
音楽:﨑憲治
出演:
姿月あさと
和央ようか
湖月わたる
出雲綾 久路あかり 天羽珠紀 光海舞人 美月悠
●3/3~/6◎よみうり大手町ホール
〈料金〉 11,500円 (全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場(東京)   0570-077-039
●3/11~14◎宝塚バウホール
〈料金〉 11,500円 (全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場   06-6377-3888

【ライブ配信情報】
●3/12 17:00公演 ※アーカイブ配信なし。
〈配信内容〉
・Cosmos 25th Special Concert『明日へのエナジー』本編
・アフタートークショー 登壇者:岡田敬二/﨑憲治/姿月あさと
・配信限定特別映像 和央ようか/湖月わたるによる特別対談映像
〈チケット販売期間〉
2/25~3/12 17:30まで購入可能
〈料金〉・配信視聴券:4,500円(税込)
・配信視聴券(公演プログラム郵送サービス付き):6,500円(税込)※送料別途必要。3月末送付予定。数量限定販売。
PIA LIVE STREAM(ぴあ)
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2230701
〈視聴チケットお問い合わせ〉017-718-3572(平日・10:00-18:00)

 

【取材・文・撮影/橘涼香】

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