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望海風斗率いる宝塚雪組が舞台化に挑むフィルムノワールの世界!『ONCE UPON A TIME IN AMERICA(ワンス アポン ア タイム イン アメリカ)』

2020年東京オリンピックイヤーに、宝塚大劇場の初頭を飾る宝塚歌劇雪組公演、ミュージカル 『ONCE UPON A TIME IN AMERICA(ワンス アポン ア タイム イン アメリカ)』が上演される(2020年1月1日~2月3日兵庫・宝塚大劇場、2月21日~3月22日東京宝塚劇場での上演)。

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』は、1984年に公開された、セルジオ・レオーネ監督の代表作。禁酒法時代から急激な変貌を遂げていく20世紀のアメリカ社会を背景に、貧しいユダヤ系移民の息子の主人公・ヌードルスの少年期、青年期、初老期の三つの時間軸を交錯させて、アンダーグラウンドで繰り広げられるミステリアスな人間関係が描かれていく。この作品の宝塚化を長く望んでいたという、作・演出家の小池修一郎が、映画版の主演者ロバート・デニーロと充実期を迎えている雪組トップスター望海風斗のイメージがつながると確信し、世界初のミュージカルとして登場させることになった。

そんな作品の制作発表会が9月27日都内で行われ、宝塚歌劇団の理事長小川友次、作・演出家の小池修一郎、雪組トップスター望海風斗、トップ娘役真彩希帆、雪組スターの彩風咲奈、彩凪翔、朝美絢が登壇。公演への抱負を語った。

朝美絢 彩風咲奈 小池修一郎 小川友次 望海風斗 真彩希帆 彩凪翔

まず、会見の冒頭に小川友次理事長からの挨拶があった。

小川 皆様お忙しいところお集まり頂きありがとうございます。宝塚歌劇団の小川でございます。今年宝塚は105周年を迎えております。今年もあと三ヶ月でございますけれども、宝塚歌劇は皆様のおかげをもちまして今年の正月から宝塚大劇場、東京宝塚劇場全ての公演で100%を超えるお客様にお越し頂いております。本当に皆様の応援の賜物と心より御礼申し上げます。ありがとうございました。
そして来年2020年東京オリンピックイヤーでございます。やはり東京オリンピックにおいてはかなりの海外の方々がこられると思いますので、我々宝塚歌劇も世界の方々に観て頂ける、喜んで頂ける作品をという思いをこめて、来年のラインナップの編成をして参りました。その中で来年の第一弾はこの『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』小池先生の作品でございます。実はこの作品は小池先生が上演を熱望されておりまして、日本向けにということでスタッフ、関係者の方々にご協力を賜り著作権を取りました。本当にありがたいことで、関係者の方々に御礼申し上げます。そして「今一番ノッている」また「実力派」と言われている雪組で正月を明けさせて頂きます。内容につきましては後程小池先生がじっくりとお話をされますが、やはり我々一作、一作が大事でございますので、今年はもちろん来年の正月公演を更に、という思いでやって参りますので、皆様この公演をどうぞよろしくお願い致します。本日は本当にありがとうございました。

そしてステージで、出演者5名によるパフォーマンスが行われた。こうした会見でのパフォーマンスは主題歌の歌唱披露がほとんどだが、今回は台本、主題歌が現在鋭意創作中であることから、それぞれの役柄をナレーションで紹介しながら、演じるキャストたちがダンスでキャラクターを紹介していくという、異色のパフォーマンスが展開されていく。

ジャジィーなインストゥルメンタルが流れて、まずセンターに望海風斗が現われ「男の名はヌードルス。貧しいユダヤ系移民の息子として子供の頃から辛酸を舐めてきた。ギャングになった彼は仲間を殺され、相手に復讐した罪で刑務所に送られる」とのヌードルスが経てくる時間を表現。

続いて彩風咲奈が登場。「成人し刑期を終えたヌードルスを出迎えたのは親友のマックス。彼も禁酒法時代を生き抜くギャングの一人であった」で、二人が粋に踊る。

音楽が変わり、上手に真彩希帆が立つ。「ヌードルスの初恋の人デボラ。今やブロードウェイのスターになっている」薔薇の花を使った二人の短い時間とは思えない、愛情表現が濃く描かれる。

すると、今回女役に回った朝美絢が現れ彩風と粋に踊る「マックスの恋人スピークイージーの歌姫キャロル。キャロルはマックスが危険な賭けに乗り出すのを察知して、計画を潰すようヌードルスに持ちかける」と、話の展開がナレーションで語られる。

と、記者席前を通って、舞台で言うところの客席から彩凪翔が登場。「一味に助けを求めてきたのは、イタリアンマフィアに狙われる労働組合のリーダー・ジミー。ジミーを助けたことから一同の運命は思わぬ方向に転回しだす」と、5人の複雑に絡み合う人生が暗示されて、パフォーマンスは終了。非常に凝った展開が、作品の世界観が立ち上った。

そこから、今回は丸テーブルを囲んで小池、望海、真彩、彩風、彩凪、朝美が司会の質問に応えて語り合うトークショー形式で、会見が進行し、最後に質疑応答へと引き継がれた。

──小池先生『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』を宝塚で上演しようと思われたのは?

小池 この原作、映画がとても好きで、この中のシチュエーションにインスパイアされた、ある意味参考にさせて頂いて作った作品が何本もございます。移民の物語という意味では『ヴァレンチノ』もそうですし、ラスベガスを作ったベンジャミン・シーゲル、通称バグジーをモデルにして『カステル・ミラージュ』を作ったりもしました。ある意味アウトローになった人たちの少年時代へのオマージュとして『アデュー・マルセイユ』という作品など、この作品に出てくるものへの思い入れを反映させたものをやってきています。そんな中で今回望海風斗主役ということで、いくつかの候補というか、作品選定をしていて、この作品を一番観てみたいかな?と僕もすごく思いましたので、イメージから派生した作品ではなくて、セルジオ・レオーネ監督、ロバート・デニーロ主演の『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』という題材そのものを使えないか?ということで、交渉して頂いて。なかなかに色々多岐に渡る複雑なことがあったのですが、最終的にご快諾頂き実現の運びとなりました。

──ミュージカルにしようと思われたのは?

小池 宝塚歌劇ですから何をやってもミュージカルになるのですが、何よりも望海風斗の歌唱力、そして真彩希帆、今の雪組全体のレベルが高いので、そこを活かせるものになると思います。

──映画は4時間近い大作で、主人公の一生を描いていますがそこをどう構成するのですか?

小池 映画も一番よくわかるのが、今ブルーレイでも出ているエクステンデッドバージョン、これが4時間11分あるのですが、これを観て頂くと「あぁ、こういうことになるのか」がよりよくわかって面白いのですけれども、私の上演時間としてフィナーレを除きまして2時間10分ですので、そこを色々圧縮していきます。また原作や映画にないものもあります。

──ここをポイントにと思っているところは?

小池 今作りながら色々思うのですけれども、人生のアイロニーですね。なかなかに難しいところもあるのですが、望海は男役としての華やかさに加えて、男役の精神であったり、内に秘めたエネルギーから、さまざまな経験を経た「哀愁」も出せるだろう、そこがすごく魅力的だろうと期待致しております。

──ということは少年時代からすべて望海さんが演じるのですか?

小池 演じて頂きたいと思っています。

──それを聞いて望海さんいかがですか?

望海 宝塚ではよく主人公の少年時代は違う人が演じて、そこから大人になって出てくるというパターンが多いと思いますし、私も楽しく演じさせて頂いたこともあるのですが、少年時代から自分達で演じることができると、その分関係性というのか、絆というのでしょうか、お互いに積み重なってきたものが表現しやすいし、気持ちもつくりやすいかな?と思うので、見た目はどうかわからないんですが(笑)やる側としてはすごくやりやすいんじゃないかと楽しみにしております。

──映画をご覧になっての感想はいかがですか?

望海 私は何回かマフィアものというか、そういう役柄で出演させて頂いていて、その時に勉強の為にこの映画を観ていたので、男の世界の哀愁だったり、一筋縄ではいかない友情、恋愛、また耳にも心にも残るメロディー、そういうものにすごく惹かれました。そして小池先生もこの作品がお好きだということを聞いておりましたので、いつか宝塚でやるのであれば私も出演したいなぁと思いながら観ておりましたので、それがヌードルス役でというお話を頂けて嬉しかったです。

──そのヌードルス役の印象は?

望海 一言で言うと静かな人だなと。哀愁と言いますか自分の中できちんと調和していく人に見えて、やっぱり色々な人との関係性によって彼の背負っているものが、ロバート・デニーロさんからにじみ出るところが魅力につながっていると思います。ですからヌードルスをどう演じるかというよりも、デボラとの、マックスとの、そして周りの人との関係性というものをきちんと作っていくことで、ヌードルスという人間ができていくのではないかと。今まで様々な関係性を演じてきた信頼感がすごくあるので、きっと上手くいくのではないかと思っています。周りに頼って、周りの人たちに助けてもらいながらヌードルスという人を作っていきたいです。

──皆に慕われる役ですよね?

望海 そうですね。こだわりみたいものもあるのではないかと思うので、普通であって普通でないもの、宝塚に入って17年経っておりますので、そういうものも出せたら良いなと思います。

──デボラ役の真彩さんはいかがですか?

真彩 映画を観た印象が、幼少期の時代も成人された方も瞳がとても綺麗で、ミステリアスと言いますか、何を思っているんだろうというような不思議な瞳をした女性、きっとそれは大人と少女の狭間にいるからこそのものが表せたらいいなと思っています。

小池 映画の場合、特にレオーネ監督は映像表現に長けているので、そういうアップの表情が印象に残って当たり前なのですが、宝塚の真彩の場合は歌唱力が素晴らしい。もともとブロードウェイのスターになる設定なのですが、映画では楽屋のシーンがチラッとあるくらいで、一番長いエクステンデッドバージョンでは、何故か歳をとってからクレオパトラを演じている劇中劇のシーンが延々あるんです。それは完全版ではカットされて、カットされたものが完全版という不思議なことになっていますが(笑)真彩の場合はミュージカル女優として表現したいですし、原作や映画で描かれているよりも、ハッキリ言って自己主張の強い女性という風に書きつつあります。今、皆全国ツアーとKAAT神奈川芸術劇場公演に向けた稽古中で、特に『ハリウッド・ゴシップ』はギリギリ前で、こんなところに来ている暇があったら稽古をしたい!という状況だろうところを頑張って来てくれているので、今からあんまりこの作品のことを吹き込んで混乱させないようにと思っております(爆笑)。でもそういうところで、ハッキリした女性として描いていると思います。アメリカの社会で這い上がりたい移民。19世紀の終わりから20世紀初頭にかけて東ヨーロッパやロシアから山ほどのユダヤ系移民が流れ込んで定着して、ひとつの文化を作っていき、そこから多くの芸術家が生まれ、アメリカの文化を動かしていった人たちでもあるのですが、生活が大変困難だったが故に裏街道に行く人も大勢いた。そういうことも描いています。

──二人が出会うシーンには「アマポーラ」が流れますね。

小池 使おうかな?と思っておりますが、そこはこれから検討したいと思っています。どこかには入れたいです。

──彩風さんはいかがですか?

彩風 私も初めて映画を観た時にはなんの予備知識もなく、ギャングものということで少し構えて観ていたのですが、自分が思っていたよりもずっと人と人との友情、愛情が詰まっていて、またとても難しい世界観に見入ってしまう作品でした。これを宝塚で、しかも小池先生の作品として上演されるにあたって、出演させて頂けることを幸せに思います。マックス役は私にとっても新しい挑戦だなと思うので、お稽古に入ってからたくさん学びたいと思いますが、何よりも映画を観ていて印象的だったのが、マックスがヌードルスをただ見ているという絵が何シーンもあり、その表情の中に、瞳の中に、憧れとか嫉妬とか、色々なものがこの人の中に込められているのだろうか、と思うところがあったので、その心を大切に演じられたらと思います。望海さんはギャングの先輩なので(笑)お稽古の時から先輩のレベルに合わせていけるように頑張りたいと思います。

望海 悪役がやりたいって言ってたものね。

彩風 はい、楽しみです。

──マックスはちょっと屈折してますよね。

彩風 そうですね。なんと言いますか蛇のような人と言いますか、不思議な人という印象があります。

──彩凪さんはいかがですか?

彩凪 私はジミー役をさせて頂くのですが、私もこの作品が決まってから映画を観させて頂いたのですけれども、この時代の男性のダンディーな感じだったり、渋い感じ。女性はすごく色っぽくて、でもどこかカッコ良いところもある世界観が好きで、今回この世界に入れるのがとても嬉しいなと思っています。ジミーはエクステンデッドバージョンの方に出ているのですが、意志がしっかりしていて、自分をしっかり持っていて、大きな力にも屈しない強いものを持って皆を扇動していく人なので、自分が話すことに説得力を出していかなければならないと感じました。色々な人と出会ってこの時代の流れで、賢く野心を持ってのしあがっていく。その過程、心の中が変わっていく様が魅力的な人だなと感じています。

小池 映画ではあまり描かれていないんです。エクステンデッドバージョンでちょっとネタバレっぽいところがあって、なるほどねと思うのですが、通常版の映画を観ると何者だ?という感じかなと(笑)。今、カッコいい時代感の話を色々言ってくれましたが、彼はその中で唯一組合を興した人で、これはハッキリと描かれてはいませんが、明らかに全米トラック運転組合を興したジミー・ホッファという方がモデルです。この方は失踪して消えてしまうんですが、彼はロバート・ケネディが司法長官の時代に告発されて懲役刑を受けて、それをニクソン大統領が出してしまうと言った、本当に色々なことのある人物で、この映画が作られた時代に非常に社会的に話題になっていた人なので、そのイメージを入れて創られていると思います。一方ではまともな組合運動をやって偉かった人が、他方ではラスベガスの建設をするイタリアンマフィアに投資していたという「えっ?」という面白い裏話もあります。ちょっとそういうジミーの在り方が映画よりもクリアに出ると、ラストシーンのオチというのではないけれども、後の出来事の謎が解けるというところではありますので、私の作品の『るろうに剣心』で武田観柳という役を非常に面白くやってくれた彩凪翔なら、そういう個性のある役どころが活きると思いますし『ひかりふる路』のロラン夫人もとても面白く、個性的な役がとても良いので、役柄を膨らましてやろうと思っております。

──そしてキャロル、女役をされる朝美さんは?

朝美 女役をさせて頂くので、本日こんなに素敵なドレスを着せてもらって皆さんの前に立って、彩風さんと絡んで踊らせて頂くのも初めてだったのでとても緊張して今も足が震えております。私もこの作品を雪組でやらせて頂くと聞いてから映画を観たのですが、もちろんその時には自分は男役をやると思っていたので(笑)男性中心に観ていたところがありました。でもこの役をやらせて頂くと聞いてからもう一度映画を見返した時に、彩凪さんもおっしゃった1920年代から1960年代に至るまでの、男性社会の中で装飾品のように素敵なドレスを着ている女性というものも華やかで、色気があり強く生きているなという印象があったので、1月の公演までに小池先生の熱いご指導のもと、色気たっぷりに演じられたらいいなと思っています。

──マックスさんとはどんな関係ですか?

朝美 私は本気で愛していると思っていて。映画の中でもキャロルのマックスへの想いに対して、マックスはキャルロのことをどうなんでしょうか?(笑)というものがあるので、私は強い女性に見えて繊細なところのある女性だなという印象があるので、一途にマックスを思っていきます!

彩風 はい!(笑)

──色々な魅力のある女性ですよね?

朝美 はい、品格と知性も持ち合わせているのではないかなと思うので。

小池 キャロルは色気ですよ!(笑)

朝美 色気!はい!(笑)

小池 映画の中ではちょっと色気過剰になる女性に描かれているのですが、スピークイージーという酒場の歌姫という仕事も持っていて、朝美は『グランドホテル』の時のラファエラが非常に良かったので、そこを活かしたいなと思っています。もちろん男役としても魅力的だと思いますし、男役で出てくるところもあります。

朝美 えっ!?そうなんですか?(会場騒然)

小池 でもそれは秘密です。

朝美 今、初めて聞きました!

小池 そうでしょう?だってあんまり言っちゃうと面白くないじゃないですか!(笑)、実際は初日にパンフレットとかで出番を確認してからご覧になる方も多いと思いますけれども、それまでは楽しみにして頂く為にもあまり言ってしまうと。

朝美 でも今ちょっとホッとしました。

小池 本当ですか?

朝美 ありがとうございます。

──色々サプライズが隠されているのですね?

小池 二度目にご覧になる時には何も思わないと思いますが(笑)一度目はハッ!とねと。でも今これでひとつサプライズがなくなってしまいましたね(笑)

──またこの時代はファッションもとても楽しみですが。

小池 娘役さんは今日のような感じですとか、あとはオンステージの時の衣裳はそれぞれ違います。ブロードウェイのスターとスピークイージーの歌姫では違いがあると思いますし、色々なバリエーションがあると思います。男役は所謂スーツものと言われる作品ですので、一番の正装はタキシードですし、それ以外はスーツを着ます。また映画は禁酒法時代から35年後の1968年までが描かれますが、そうするとちょっと歳を取り過ぎてしまうと思うので、1958年25年後という設定にしようと思っています。

──望海さん、これは来年のお正月公演となりますが。

望海 雪組は東京宝塚劇場でお正月公演をさせて頂くことが二年続きまして、来年は本拠地宝塚大劇場で元日から公演できるということがすごく楽しみでもありますし、やはり年のはじめにこのような作品に挑戦させて頂けるということで、良い一年のスタートが切れるのではないかなと思います。また先ほど服装の話も出ましたが、娘役は華やかに、男役はスーツやタキシードの中に男役の美学と言いますか、細かいこだわりもそれぞれ詰め込んで一月一日を迎えたいと思います。

──今充実期を迎えている雪組に、小池先生メッセージを。

小池 雪組はずっと100周年から好調に快進撃を続けていますが、先代の早霧せいなさんもそうでしたが、殊に望海さんは勤勉実直と言うか、こんなに真面目によく働く人はいないんじゃないかと思います。ですから今回もとても真面目におやりになると思いますが、同時にそこからひとつ弾けてくると良いかなと。この作品の内容が弾けるというものではないので、ちょっとスタイリッシュになったりしたら良いなと。でもちょうど今元旦という話が出て「正月早々暗い話ね」と言われるかな?とちょっと思ったのですが、でも東京でやったのは『ひかりふる路』?

望海 『ひかりふる路』と『ファントム』です。全部暗いです(会場爆笑)。

小池 でもそこに華やかな世界をね!

望海 そうですね!

小池 今もね、最初はこの茶色のテーブルクロスってどうなのかな?と思ったんだけど、今こうして見ると皆さんから見てどうかわからないけれども、なかなか良いですよね?渋くて。(会場爆笑)味わいといい光沢感といいね、さすがですね!そういう風合いの中に輝きのあるものになれば良いなと。望海風斗17年の風合いの中から出てくる輝きと味わいが、作品のひとつのポイントになるのではないかなと思います。

【質疑応答】

──小池先生『ポーの一族』に続いて、小池修一郎原点回帰シリーズという感覚がありますが、そこまでこの作品に惹かれる理由と、その世界を宝塚の男役を使ってどう表現したいのですか?

小池 たぶんね、たぶんですよ!先ほど望海がデニーロの魅力を語っていて「あっ!」と思ったのですが、何が魅力かと言えばストイックな魅力。これが男役の美学と合うんです。そのストイックさは普通の社会で活躍している人物からは意外と出ないので、こういうまぁ裏街道な感じのものの時に出てくるのが魅力なんじゃないかな?とすごく思います。

──原作はエンニオ・モリコーネの名曲がとても有名ですが、歌唱力に定評のあるトツプコンビにどのような楽曲を?

小池 制作発表ではジャズっぽいものを使いましたが、ジャズと50年代の音楽に加えて、私達がそれを聞いて育ったような親しみのあるミュージカル・チューンみたいなものを、今の感受性で洗い直して創りたいなと思っています。太田健さんに創って頂きます。

──セットの見どころと、映画冒頭のバイオレンスシーンとラストの清掃車のシーンはどうなるのでしょうか?

小池 細かいですね!(笑)セットとしてはニューヨークのダウンタウンで、映画のパッケージになっているブルックリン橋は実はブルックリン側から撮った写真で、作品はイーストサイド側で行われますから、橋を使わないでやっていくと思います。人間との比率で言うと、この橋を表わすには劇場三つ分くらいの高さが必要でもあるので。そして今の二つのシーンはズバリございません!(笑)先ほども言いましたように上演時間が短いのでギュッと凝縮しますし、ラストについてはネタバレになってしまうので詳しくは控えますが、起きることは変わりませんが清掃車は出てきません。映画で清掃車が出て来たのは、組合のこと、暗にジミー・ホッファのことを言ってるんだなとほのめかしているところがあるので。

──男役の美学と娘役の華やかさが活きる世界というお話がたくさん出ていますが、この時代に感じる魅力や、その中で魅せていきたいものは?

望海 映画もそうなのですが、人からにじみ出るものですね。今は情報がすぐ入る、便利な時代ではあるのですが、あの時代にしかない目と目のやりとりですとか、雰囲気から察するものなど、お互いの気持ちを感じ取り理解し合うのが魅力ではないかな?と思いますので、そうした男役同士の芝居や、恋愛もそうなのですが、今の時代から見てもそれは魅力に感じるのではないかと思います。

真彩 今回この白いお衣装をはじめて着させて頂いた時に、なんて繊細なドレスなんだろうと思いました。この時代はアクセサリーだったり、お衣裳のレースもとても繊細で、タイトでシンプルな形で生地が綺麗なものがとても多いのですが、実際の舞台でこの衣装以外にどんな衣裳が着られるのかな?と楽しみにしています。背中が開いていたり、デコルテが開いたお衣装が多いので、私自身も姿勢よく、男役さんは背中で魅せるということをよくおっしゃいますが、娘役も後ろから遂追いかけたくなるような女性像を目指していきたいと思います。また皆さんがおっしゃるように人と人との関わりで見えてくるもののとても多い作品だなと思いますので、その中で女性としての柔らかさや強さを表現できるように頑張って参りたいと思います。

彩風 この時代は今と違って先ほども望海さんがおっしゃったように、情報を得るインターネットもありませんし、便利な電化製品もある訳でもない中で、人と人とのつながりを大切にしたいです。またそういう便利なもののない時代だからこそもっと大きくなりたいとか、もっと広い世界に出たいとか、心の中に夢や希望が詰まっていたと思うんです。それが宝塚という場所、私にとって夢と希望がたくさん詰まっている場所と、その夢や希望を宝塚の男役と上手くリンクさせて描けたらなと思います。

小池 『ハリウッド・ゴシップ』も同じような時代ですよね?

彩風 設定はそうなのですが、この作品よりはもう少し現代的寄りと言いますか、それほど時代背景に囚われている描写はないです。

小池 そうなんですね!でもお衣装などは?

彩風 お衣装は1929年くらいからのアメリカのハリウッドなので、もしかしたら似ているものもあるかも知れませんが、特に時代背景は描かれていません。

小池 ちなみに最後に亡くなったりするんですか?

彩風 それはやはりサプライズということで!(笑)楽しみにして頂きたいです。

小池 わかりました!期待しています。

彩凪 この時代はやはり映画や宝塚でもよく取り上げられているのでイメージがあると思うのですが、それに寄り添いつつ、望海さんがおっしゃったように皆で創って行く過程の中で新たなものが生まれてくるのではないかな?と思っています。

朝美 映画の中でもこの時代のアメリカはパーティ、パーティで着飾っている綺麗な部分と、街中の雑踏の中の綺麗ではない部分とがすごく描かれていると思うので、その辺の白黒ではなく、グレーな部分を意識しながら演じたいと思っています。

【公演情報】
宝塚歌劇雪組公演
ミュージカル
『ONCE UPON A TIME IN AMERICA(ワンス アポン ア タイム イン アメリカ)』
Based on the motion picture Once Upon a Time in America (courtesy of New Regency Productions, Inc.) and the novel The Hoods written by Harry Grey.
原作◇ハリー・グレイ
脚本演出◇小池修一郎
出演◇望海風斗 真彩希帆 ほか雪組
●2020/1/1~2/3◎宝塚大劇場
〈料金〉SS席12,500円 S席8,800円 A席5,500円 B席3,500円
●2020/2/21~3/22◎東京宝塚劇場
〈料金〉SS席12,500円 S席9,500円 A席5,500円 B席3,500円
〈お問い合わせ〉0570-00-5100

 

【取材・文/橘涼香 撮影/岩村美佳】

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