望海風斗が日本人の魂を演じる!『壬生義士伝』ダイナミック・ショー『Music Revolution!』制作発表会レポート!
絶大な歌唱力を誇るトップコンビ望海風斗と真彩希帆コンビ以下、活躍を続ける宝塚歌劇団雪組が、浅田次郎のベストセラー小説「壬生義士伝」の舞台化作品、かんぽ生命ドリームシアター 幕末ロマン『壬生義士伝』と、音楽の起源と発展をテーマに描くかんぽ生命ドリームシアター ダイナミック・ショー『Music Revolution!』を、5月31日〜7月8日兵庫・宝塚大劇場で、7月26日〜9月1日東京・東京宝塚劇場で上演する。
『壬生義士伝』は幕末の南部藩に下級武士として生まれた主人公が、貧困にあえぐ家族を救う為に新選組隊士となり風雲渦巻く幕末の激動の嵐に飲み込まれる様を、義と愛と友情という日本人の魂をベースに浅田次郎が書いたベストセラー小説。2002年にドラマ化、2003年に映画化されいずれも大ヒットとなったこの作品を、脚本・演出の石田昌也が宝塚歌劇の約束事を絡めながら、幕末ロマンとして構築していく意欲作となる。また『Music Revolution!』は、音楽の美しさ素晴らしさを、前作ミュージカル『ファントム』の演出に続いて雪組公演を担当する中村一徳が、望海&真彩以下雪組の魅力を最大限に活かし、ダイナミックなショーステージを展開する、豪華な二本立て公演だ。
そんな公演の制作発表会見が4月17日都内で開かれ、公演を協賛するかんぽ生命保険植平光彦取締役兼代表執行役社長、宝塚歌劇団小川友次理事長、『壬生義士伝』原作者の浅田次郎、脚本・演出の石田昌也、『Music Revolution!』構成・演出の中村一徳、出演者を代表して雪組トップスター望海風斗、トップ娘役 真彩希帆、男役スターの彩風咲奈が登壇。公演への抱負を語った。
会見はまず出演者による『壬生義士伝』のパフォーマンスからはじまった。困窮する家族を救う為に南部藩を脱藩し、京で新選組に入るという望海風斗扮する主人公・吉村貫一郎と、脱藩の罪の重さを憂い、なんとか貫一郎を翻意させようとする彩風咲奈扮する貫一郎の竹馬の友・大野次郎右衛門との激しい台詞の応酬が、作品が描く時代と人を一気に浮かび上がらせる。
進言も届かず、遂に去っていく貫一郎を見送り、道は違えども自分達は変わらず竹馬の友だと次郎右衛門が歌う「南部讃歌」の、友と故郷を想う心を彩風が切々と歌い上げていく。
そこから、京へ向かう貫一郎と、彼を見送る真彩希帆演じる貫一郎の妻・しづとが現われ、傘と雪靴のしつらえが雪深い南部藩を思わせる中、どんなに離れても心は共にあり、何があろうとも必ず風に乗って帰ってくる、と、この時代の日本人ならではの少ない触れあいの中に、互いを思いあう心を託した二人のデュエット「石を割って咲く桜」が響き渡り、歌唱力に秀でた雪組トップコンビ望海と真彩の、声質が良いのみに留まらない深い芝居心が伝わる歌唱に早くも感動が広がった。
その素晴らしいパフォーマンスの熱気の残るステージが会見場となり、登壇者全員の挨拶に続いて質疑応答が行われた。
【登壇者挨拶】
小川 皆様お忙しいところこのようにたくさんお集まりくださいましてありがとうございます。宝塚歌劇団の小川でございます。ご協賛を賜りますかんぽ生命植平社長、また浅田先生素晴らしい作品の上演許可を頂き本当にありがとうございます。おかげ様で宝塚歌劇は昨年度、宝塚大劇場では過去最高の102.9%、120万人、東京宝塚劇場はMAXの101.1%、これに全国での公演を合わせまして270万人、そして今は千秋楽などで行っておりますライブ・ビューイングも過去最高でございまして、33万人、合わせて300万人を越えるお客様にご観劇を賜りました。これも一重に今日お集まりのマスコミの皆様、またお客様のおかげと心より御礼申しあげます。さて宝塚105周年のこの公演、浅田先生の大作で、涙なくしては読めないようなご本を今回宝塚でやらせていただけること、ありがたく思っております。義に愛に生きる物語を、今のっている雪組でさせていただきます。先日まで公演しておりました『20世紀号に乗って』、その前の『ファントム』と、最初に申し上げました動員数に大変な貢献をしてくれている、更に宝塚歌劇のクオリティを上げてくれた望海を中心とした雪組が演じてくれます。そしてショーは『ファントム』の演出をしてくれた中村先生の作品という二本でございます。「壬生義士伝」は長編ですから、1時間半でやるということで、石田先生は大変だと思うんですけれども、雪組ならきっとやってくれると思います。芝居とショーと宝塚の醍醐味を存分に味わっていただけるのではないかと、私も期待しておりますので、皆さんどうぞよろしくお願い致します。
植平 皆さんこんにちは。かんぽ生命の植平でございます。本日は宝塚歌劇雪組公演の制作発表会にお集まりいただきまして本当にありがとうございます。かんぽ生命では「人生は夢だらけ」を企業スローガンとしております。挑戦する皆様の人生を応援させていただいており、多くの人に夢とロマンをお届けしている宝塚歌劇の舞台は、我が社の夢を応援するという企業姿勢にも通じ、私自身も大変深く共感するところでございまして、今回こうした宝塚歌劇雪組公演幕末ロマン『壬生義士伝』ダイナミック・ショー『Music Revolution!』に協賛させていただくことになりました。宝塚歌劇公演への協賛は2015年より開始いたしまして、今回で5回目となります。夢に向かって挑戦し続ける生徒の皆様が創りあげる舞台は、多くのお客様に夢を与えてくれる場所で、たくさん夢が集まる場所でもあります。本作品に協賛させていただくことで、皆様に夢をお届けするお手伝いができますことは、私たちにとりましても大変喜ばしく、光栄に思っております。と同時にこうした機会を与えてくださいました、宝塚歌劇団の皆様にもこの場をお借りして厚く御礼を申しあげたいと思います。今回の『壬生義士伝』は浅田次郎先生のベストセラー小説が原作でございまして、2002年にドラマ化、2003年に映画化がなされ大ヒットを記録した作品でございますが、今般宝塚歌劇で舞台化されるということで、私自身内容をとても楽しみにしております。是非とも多くの皆様に楽しんでいただき、長く愛される作品となっていくことを強く願っております。かんぽ生命は、いつでも傍にいる、どこでも支える、全ての人生を守り続けたいとのスローガンを経営理念に掲げまして、これからも皆様に生活の安心をお届けすると共に、夢に向かって挑戦する方々の人生を精一杯応援させていただく所存でございますので、宝塚歌劇共々、ますますのご支援ご愛顧を賜りますようよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。
浅田 こんにちは。浅田でございます。「壬生義士伝」という小説ですが、今から20年前に週刊文春で連載をはじめた作品でございます。こんなに長くする予定はなかったのですが、連載というのは書いている途中で読者の方々の反響がありまして、それが思いがけず好評だったものですから「もうちょっと長く書こうよ」と、自分でもそう思いましたし、要望もありましたし、ということで1年半という長期に渡る連載にした結果、400字詰め原稿用紙で1.200枚という上下巻の長い長い話になつてしまったんです。この長い小説で、今回はここが(隣の石田を示し)1番お困りではないかと思いますけれども(笑)。映像化や舞台化をする時には制限時間というものが間違いなくございますので、どう削ってどのように脚色すればこの話になるのか、本当に技術がいると思いました。これは以前映画化もされていて、滝田洋二郎監督が撮ってくださいましたが、その時にも同じことをおっしゃっていらっしゃいました。「『鉄道員』は50枚の小説で2時間なんだけど、自分は1200枚の小説を2時間で撮らなければいけない」と。でも小説を書く時にはそこまで考えていないので(笑)スタッフの方々のご苦労を思いながら、一方では大変楽しみにしております。たくさんの読者の方に読んでいただいた小説なのですが、わたしは日本人の魂をこの小説にこめたつもりでおりました。できればより多くの世代の方々にこの小説をもう1度読んでいただいて、思うところがあればなと考えております。よろしくお願いいたします。
石田 皆様こんにちは。前ものの方のお芝居『壬生義士伝』を担当致します石田でございます。浅田先生にご心配いただきましたけれども、心配はたくさんありまして、新選組といえば近藤勇や土方歳三が主役をやるんですけれども、今回は宝塚のトップスターが下級武士になる作品でして、センターになかなかこられない(笑)。真ん中に近藤や土方がおりますので、ダンスをすると3列目の1番端っこにトップスターが行ってしまうという(笑)、非常に難しい問題がございます。それと先生の小説では主人公の妻が、東北で別れたあと1度も会うことなく死んでしまう役でございまして、トップコンビがラブシーンをするのも、一端逃してしまうとフィナーレの天国で、という形しか有り得ない。ですが宝塚のお家の事情もございますので(笑)、先生の本に脚色を加えさせていただきまして、色々な娘役も登場させ、回想シーンでは出てくるということで、同じ構図の中に東北にいる奥さんと、京都、大阪にいる旦那さんとがおさまるという場面も創りました。ただ浅田先生は『鉄道員』が映像化されるとはまさか思わずに書いていらして、ストーリーはわかっているはずなのに、高倉健さんと大竹しのぶさんの演技を観てボロボロ泣いてしまったとおっしゃっていたので、結末をわかっている本ですけれども、宝塚で歌と踊りが入った生徒たちの迫真の演技を観ていただいて、結末をわかっていてもボロボロと泣いていだけたなら、作品は成功と言えるのではないかと思っているので、頑張りたいと思います。よろしくお願いします。
中村 本日は制作発表会にお越しくださいましてありがとうございます。第二部の『Music Revolution!』を担当させていただきます中村でございます。前回の大劇場公演に引き続き、また雪組さんにご縁をいただきました。今日出席しております望海さん、真彩さん、彩風さんはもちろんですけれども、いま本当に雪組がお芝居も歌も踊りもすべてが充実しておりまして、直近のシアターオーブ公演、またバウホール公演でも新たな雪組の魅力、充実感を拝見致しました。その中で今回はタイトルが『Music Revolution!』ですけれども、歴史に出てくるような革命ではなく、革命のような新しい時代を切り開いていくことと、今の充実した雪組が更に進化していく姿を上手くミックスさせていきたいなと思っています。音楽で革命と言えば、ショパンエチュードの「革命」でございますし、曲に対する想いもございますので、ある場面のテーマとしてショパンの「革命」は使いたいと思っていますが、他のジャンルの音楽も色々あります。その音楽の成り立ちが革命の苦しさや、革命が成功した時の喜びであったり、また反対に軍歌の流行であったり、そういう色々な音楽の喜びや葛藤というもの、それぞれのエネルギーがあると思いますので、その辺りも根底に持ちながら雪組の魅力を十分に発揮したものにしたいと思っております。残念ながらまだショーのお稽古には入っていませんので、これから三人をはじめとする雪組生がショーに関する感覚を創っていってくれると思います。今日は朝から先ほどのお芝居のパフォーマンスのリハーサル、そして本番と拝見させていただいて、お芝居の方が素晴らしい作品に出来上がる予感がしますし、今日の三人の芝居や歌を聞いていますと、明日からでも舞台の幕が開きそうな勢いなので、それに負けずにショーも5月末の大劇場、7月の東京と皆様に楽しんでいただけるようにこれから稽古を重ねていきたいと思います。どうぞよろしくお願い致します。
望海 本日は制作発表会にお集まりくださいまして本当にありがとうございます。お芝居の『壬生義士伝』の方では、吉村貫一郎をさせていただきます。浅田先生のお書きになられた涙なしには読めない小説、そしてこの小説のファンの方がすごく多くて、この作品の上演が発表された時の皆様の反響が大変に大きく、この作品を今の雪組がさせていただけるということを大変嬉しく思っております。そして演出の石田先生とは昨年春に『誠の群像』というこれもまた新選組を題材にした作品をさせていただきましたが、その時とはまた違った角度から見る新選組の姿だったり、武士として、人としての生き様、更に命の大切さ、そういうものを皆様にお届けできたら良いなと思っております。それから先ほどパフォーマンスでも少しさせていただきましたが、いま私たちはお芝居ともうひとつ、南部弁を如何に自然に話すか、それがすべてお客様にきちんと届くか、ということを考えながらお稽古をしていきたいと思っております。そしてショー『Music Revolution!』の中村先生には前回の『ファントム』でお世話になっておりまして、いまの雪組の生徒のことは中村先生が1番知り尽くしてくださっているのではないかということで、安心して先生にお任せして、音楽の力を借りていまの雪組の勢いをそのまま舞台で皆様にお届けできますよう、お芝居ショー共に一丸となって励んでいきたいと思います。最後になりましたが株式会社かんぽ生命保険様には、今回の作品にご協賛いただけますことを厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。
真彩 皆様本日はお忙しい中制作発表会にお越しいただきまして本当にありがとうございます。お芝居ではしづとみよの二役をさせていただきます真彩希帆でございます。浅田先生の素敵な小説に登場する女性として、しづは貫一郎さんの妻の役なのですが、お稽古がはじまってから、子供を持っている母の強さ、夫を持つ妻としての強さという部分が、皆様に届き私の心が動けば良いなという風に思いました。先ほど望海さんもおっしゃいましたが、お芝居では南部弁を話していて、今お稽古場で南部弁を教えてくださる先生がとてもても優しいお心を持っていらして、その柔らかさが言葉からお客様に伝わったら良いなと思います。そして『Music Revolution!』の中村先生とは『ファントム』でご一緒させていただいて、いつもお世話になっているのですが、新たな気持ちにさせていただけるショー、創っている段階でワクワクして皆で頑張ろうという気持ちがあふれるショーに出演させていただいているなと思っておりますので、今回はまだお稽古は始まっておりませんが、音楽の革命ということで雪組の皆さんと望海さん、彩風さんとお稽古に励んで、皆様に革命をお届けできたらと思います。初日までに両作品共にお客様の心にお届けできるようにお稽古を重ねて参りますので、どうぞよろしくお願い致します。本日はありがとうございました。
彩風 皆様本日はお忙しい中制作発表会にお越しいただきましてありがとうございます。お芝居の方では大野次郎右衛門をさせていただきます、彩風咲奈です。浅田先生の小説を今回舞台化させていただくということで、私も浅田先生の小説は何作か読ませていただいていて、特に別の作品で斎藤一を演じました時に先生の「一刀斎夢録」を読ませていただき、作品の中で斎藤の人生や生き様、その熱さを学ばせていただきました。先生の作品には人間の生きる力と言いますか、パワーがこめられているなと思うので、これからお稽古を重ねていくうちに、先生の作品の中から次郎右衛門という人物を紐解いて、広げていきたいと思っております。また望海さんとは友人の役を何度もさせていただいてきましたし、『ファントム』では父親役もさせていただきました。その二人にしかできない関係、今回は一筋縄ではいかない友人関係ではございますが、竹馬の友、先ほどの歌の中にもありましたように、心と心のぶつかり合いで私もお稽古に励んでいきたいと思います。真彩にはフラれてしまうのですが、今までも真彩を想う役が私は多くて、今回も最初は真彩を想っているのですがフラれてしまいます(笑)。でも親友と親友の愛した女性と、そして何よりも南部を愛している次郎右衛門という人物を心をこめて演じたいと思います。そしてショーの方では、私は中村先生にはたくさんお世話になっておりまして、先生の作品は本当に色とりどりで、色々なパワーが爆発しているというイメージがあります。まだお稽古には入っておりませんが、今回も持っているパワーを存分に爆発させて望海さんを中心に頑張りたいと思います。どうぞよろしくお願い致します。
【質疑応答】
──浅田先生の作品は「王妃の館」が宝塚で上演されていますが、『王妃の館』と、また今日のパフォーマンスをご覧になっていかがですか?
浅田 「王妃の館」に引き続き、二度目に宝塚でやっていただくことになりましたが、「王妃の館」はコミカルな喜劇で、それに引き換え「壬生義士伝」は時代劇であると共に、大変シリアスな小説です。でもこれは実は同時に書いています。片方が週刊誌で片方が月刊誌で、連載時期がかぶっているんです。たいてい私は連載を三つか四つ続けておりますので、どれとどれが重なるかはちょっと記憶が曖昧になるのですが、これは間違いなく同時期だと思うのは「壬生義士伝」の一部を「王妃の館」の取材で行ったパリで書いていた記憶があるんです(笑)。パリに行っている間に週刊詩の締切がきてしまって、書かざるを得なかった。「王妃の館」のモデルになったホテルに泊まっていたのですが、そこに資料を持ち込んで原稿を書いていました。無理な仕事のように見えるかもしれませんが、実は同時連載をする時には違うパターンの方が絶対書きやすいんです。いま、同じ時代劇を二本やっちゃっているのですが(笑)、これは難しいです。書いている文章もかぶっちゃうし、気持ちもかぶってしまう。それだったら「壬生義士伝」を書き終えたあとに、知らん顔して「王妃の館」を書くという方が、切り換えられるんです。そのような記憶がある、同時に書いた小説が20年後に不思議なことに共に宝塚で上演していただくというのは、行いが良かったのかな?と自分でも思います(笑)。
──石田先生長い作品のどこにポイントを置こうと思っていらっしゃいますか?
石田 僕も浅田先生と同じで『壬生義士伝』の前にはレイ・クーニーの『パパ・アイ・ラブ・ユー』というウルトラドタバタコメディをやっていました。先生とは違って手書きではなくパソコンで書いてはいましたが、僕もドタバタとシリアスを両方書いていた気がします。今までの新選組との1番の違いというのは、宝塚の時代劇は天草四郎や、織田信長などわりにスッとしたカリスマが多いのですが、浅田先生のものはちょっと汗の匂いのする市井の人、スーパーウルトラヒーローではない。宝塚のトップスターが演じるには珍しい人物が主人公だということです。沖田総司とか、天草四郎や信長のような「2.5次元」に近い方が宝塚のお客様は喜ぶのかな?と思いますが、浅田先生の作品はそこから0.5を引いた完全な2次元。汗の匂いも筋肉の匂いもする人間、しかもお殿様でもキングでもクイーンでもなく、お百姓さんの娘と結婚する。もちろん偉い人も出てきますが、そういうドラマでも映画でも描かれていなかった、浅田先生らしい新選組の見方があるんです。中村先生は革命とおっしゃっていますが、宝塚の基本は無血革命なんですよね。でも新選組は会津藩のお預かりで、お預かりって言うのは言ってみれば派遣社員に近いんです。お抱えというのが正社員に近いという、経済関係の方の見方がありました。その中で新選組が特殊なのは、当時の警察と言いながら、キャリア組ではない。ちょっと言葉は悪いですがノンキャリアの人々が集まった。しかも僕の見方を言いますと、新選組というのは公安に近い状態かな?と思います。ただ宝塚はラブロマンスなので、基本的には歴史の教科書にするつもりはないですから、チラッとそういう面も見せながら男の世界の部分と男女の愛を描ければと思っています。
──宝塚には『星影の人』『誠の群像』という新選組ものの傑作がありますが、いま改めて違う角度から新選組をとりあげようと思われたのは?
小川 宝塚の演目を決める時の1番重要なものは何か?と言いますと、宝塚はトップスター制ですので、人に合わせて行きます。前の大劇場の『ファントム』もこれこそ望海と真彩の作品だという形で選びました。その後は?ということでコメディをと『20世紀号に乗って』をやりました。ではその後は?と色々な意見がありましたが、雪組プロデューサーから「是非浅田先生の『壬生義士伝』をやらせていただきたい」という提案がございまして、私も「壬生義士伝」は相当前からやらせていただきたいと思っていた作品でしたので、ではまず浅田先生に許諾をいただかないといけません。望海の雪組は歌と同時に芝居が上手い。宝塚を牽引してくれている。その望海にこの時代に生きた人々の、日本人の心を改めて掘り下げて欲しい、それをしてくれるに違いないということでお願いして、先生にもお許しがいただけて本当に初日が楽しみですが、そのような形で今の望海の雪組でこの作品をということになりました。
──いまのお話を聞いて、望海さんはいかがですか?
望海 確かにこの主人公の吉村貫一郎という人は、宝塚でよくある皆を率いるリーダーでもなく、何かの思想に集まっていく訳でもありません。やはり新選組では言ってみれば、近藤、土方、沖田、斎藤などの方に目がいきがちなところに、敢えて吉村貫一郎という人を中心としたところで、人としての在り方、人間として大切なものを持っている人たちがたくさんいたんだということを、この小説を読んだ時に感じました。そういうものを、いま雪組で挑戦できるのが楽しみでもありますし、とても大きな挑戦でもあるのを感じています。お芝居の稽古をしていても、近藤先生、土方先生が真ん中にいて、私は本当に端っこの方に並んでいるんです(笑)。でもそこで吉村貫一郎が真ん中に来てしまうとおかしいでしょう?というのがすごくありまして、そういう中でどうやってこの人の心によって周りに影響を及ぼしていくか。特に斎藤一が大嫌いだったというところから始まっていくのですが、やはり人の心を吉村貫一郎という人が動かした、とまで大きなことではないかも知れませんが、でもそれが、彼が後世に残していったものなのではないかと思うので、真ん中に立っているから偉いとかではなくて、人としての在り方をきちんと出していけたらと思っています。でもいつもとは違った感じ方、出て来た瞬間に「望海はどこだ?」と思われるかも知れませんが(笑)、それもまたひとつの作品として芯になれるように、皆で創り上げていきたいと思っています。
〈公演情報〉
宝塚歌劇雪組公演
かんぽ生命ドリームシアター 幕末ロマン『壬生義士伝』
原作◇浅田次郎「壬生義士伝」(文春文庫刊)
脚本・演出◇石田昌也
かんぽ生命ドリームシアター ダイナミック・ショー『Music Revolution!』
作・演出◇中村一徳
出演◇望海風斗、真彩希帆 他雪組
●5/31〜7/8◎宝塚大劇場
〈料金〉SS席12.000円 S席8.300円 A席5.500円 B席3.500円
●7/26〜9/1◎東京宝塚劇場
〈料金〉SS席12.000円 S席8.800円 A席5.500円 B席3.500円
〈お問い合わせ〉0570-005100 宝塚歌劇インフォメーションセンター
〈公式ホームページ〉 http://kageki.hankyu.co.jp/
【取材・文/橘涼香 撮影/岩村美佳】
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