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原作映画から鮮やかに飛翔した宝塚宙組『オーシャンズ11』上演中!

天才詐欺師ダニー・オーシャンが、最愛の妻の愛を取り戻す為に多士済々の仲間を集め、難攻不落の金庫破りに挑む様をエンターティメント満載で描いた宝塚歌劇宙組公演ミュージカル『オーシャンズ11』が日比谷の東京宝塚劇場で上演中だ(21日まで)。

『オーシャンズ11』はラスヴェガスにあるカジノホテルを舞台に、11人の男達がホテル王を出し抜いて金庫破りに挑むハリウッド映画「オーシャンズ11」を小池修一郎の脚本・演出のもと宝塚歌劇が世界で初めてミュージカル化した作品。2011年柚希礼音主演の星組公演として初演され、2013年蘭寿とむ主演の花組で再演と歴史を重ねてきた。今回の宙組バージョンは宝塚歌劇3回目の上演で、2011年の初演時に新人公演で主人公ダニー・オーシャンを演じた真風涼帆、親友ラスティーを演じた芹香斗亜が満を持して本公演で同役に挑むことが、大きな話題を呼ぶ上演になった。

【STORY】
とある事件で服役中の天才詐欺師ダニー・オーシャン(真風涼帆)が仮釈放を迎える日、妻テス(星風まどか)の代理人の弁護士が離婚届を持って訪ねてくる。テスはラスヴェガスのホテル王テリー・ベネディクト(桜木みなと)が新たに建設するエコホテルのショースターに抜擢され、メジャーデビューを目前にダニーとの婚姻関係を解消したいと望んでいたのだ。だが今でもテスを深く愛し、互いが運命のペアだと信じるダニーは離婚届を破り捨て、テスの愛を取り戻すべく「運命を変える街」ラスヴェガスへ向かう。

ダニーはまず親友のラスティ—・ライアン(芹香斗亜)と落ち合い、テスがボランティアをしていた緑地再生を推進するNPO団体と提携し、環境に優しいエコホテルの建設に着手すると自身の事業拡張を美談として喧伝しているテリーが、実は金儲けの為ならば手段を選ばない冷徹な人間であることをテスに知らしめる為に、テリーの経営する3つのカジノホテルの収益が集められるホテルPARADISCOの金庫を破るミッションを持ちかける。自身の恋人ポーラ(遥羽らら)の祖父リカルド(松風輝)が営むクラブがテリーの差し金で立ち退きを迫られていたラスティ—はすぐさまダニーの相棒としてミッションに参加。ラスヴェガス一のセキュリティを誇る金庫から僅か一晩であがる莫大な収益1億5000万ドルを奪い取るために、二人は様々な分野のエキスパート集めに奔走する。

その声に応えたのは自身が経営するカジノをベネディクトに潰されたルーベン・ティシュコフ(凛城きら)。老舗ホテルで開催予定だったマジックショーをベネディクトの経営するホテルの横やりで中止させられたマジシャンのバシャー・ター(蒼羽りく)。そのバシャーが現在関わっている雑技団一のヨーヨーの遣い手イエン(秋音光)。イカサマが暴露されラスヴェガスを追われたディーラーのフランク・カットン(澄輝 さやと)。ハッキングの天才リヴィングストン・デル(瑠風輝 )。映像加工でバーチャル世界を生み出す達人のバージル・モロイ(優希しおん)とターク・モロイ(鷹翔千空)兄弟。元カリスマ詐欺師のソール・ブルーム(寿つかさ)の、いずれ劣らぬその道のプロたち 。更に伝説の天才スリの息子という出自を重荷に感じ、ケチな小遣い稼ぎで鬱々と日々を過ごしていたライナス・コールドウェル(和希そら)も「本物の男にしてやる」というダニーの言葉に、父を超えるべく協力を決意。ここにそれぞれが並外れた技術を持つ11人「オーシャンズ11」の面々が揃った。

これまでホテルショーを支えて来たスターであるクイーン・ダイアナ(純矢ちとせ)の恨みを買うことを歯牙にもかけず、テスを自分の意のままになるディーヴァに仕立て上げ、更に妻にしようとしているテリーの裏をかき、テスの心を取り戻す為のダニーの、「オーシャンズ11」のミッションが、いま始まる……。

宝塚歌劇で初めてこの作品がミュージカル版として上演された2011年は、言うまでもなく東日本大震災という大きな天災が日本を襲い、こうした国難の中にあってエンターティメントはどうあるべきなのか?という議論が繰り返された年として痛烈な記憶を残している。この作品自体の上演は年末に近い時期ではあったが、復興や節電という大目標を前に、様々な演劇人や団体がエンターティメントの在り方に直面し、それぞれの模索を続けていたのだ。

その中で宝塚歌劇の、更に日本ミュージカル界の雄である小池修一郎が、徹頭徹尾エンターティメント性に寄ってショーアップしたミュージカル『オーシャンズ11』を生み出したことは、常に大衆の娯楽であることを目指してきた宝塚歌劇が出したひとつの答えでもあったと思う。

実際、映画版の「オーシャンズ11」はあくまでも天才詐欺師率いるプロの犯罪者集団が、ラスヴェガスを牛耳る大悪党を相手に騙し騙されのコンゲームを展開するスリル、そのドキドキハラハラでほぼ全てが出来上がっている作品だ。だが、小池が提示した宝塚バージョンではコンゲームのスリルは僅かに後退して、主人公ダニー・オーシャンが最愛の妻テスの心を取り戻すことを軸に、小池作品に頻繁に登場する理想のホテル建設や、美術館のキュレーターという原作設定から、メジャーデビューを目指す歌手に変更されたテスがリハーサルを重ねる新ホテルのショーステージなど、宝塚歌劇のセオリーに乗っ取った愛のドラマと華やかなショーシーンが展開を支えていく。スロットマシンの輝くカジノ、大がかりなイルージョン、圧倒的な人海戦術が、あくまでも愛の物語であり、あくまでも豪華絢爛な娯楽大作になっていて、それが小池が提示した宝塚歌劇のエンターティメントの在るべき姿だった。

だから星組での初演版は、劇場に座っている三時間は全ての現実を忘れて夢の世界に飛翔させる、という宝塚歌劇の心意気に涙するものだったのはもう一片の議論の余地もない。だがその一方で、映画版のスリルと愛の物語をもう少しドッキングさせることができないかな?という、それこそ贅沢な欲がよぎったのも、当時の偽らざるところではあったものだ。けれども、より男の物語感を強めていた2013年の花組版、更に2014年に香取慎吾主演で男優と女優が上演する外部公演版として上演されたバージョンを経て、やや時間を置いて宝塚歌劇に帰ってきた宙組の『オーシャンズ11』には、そうしたある意味の葛藤を乗り越え、つまりはもともとの映画版から鮮やかに飛翔した、宝塚歌劇だけのミュージカル『オーシャンズ11』としての伸びやかさと、輝きがあることに大きな感動を覚えた。

と言うのも、これは主演の真風涼帆、その片腕の相棒ラスティ—の芹香斗亜をはじめとした、「オーシャンズ11」の面々に共通する色合いなのだが、彼らには実は法を犯しているということに対する屈折がまったくない。本来宝塚歌劇のヒーローが法律の外にいることはこれまでさほど多くはなかったし、例えばその設定があったとしても、法を犯すに至るにはそれ相当のやむにやまれぬ理由があり、むしろ同情を集めるような流れになっていたことがほとんどだ。初演の柚希礼音、再演の蘭寿とむのダニーにも、こと細かく説明こそされていないが、天才詐欺師という生き方をせざるを得なかった何かがある、という心の捻れの表現は常に秘められていたと思う。けれども真風のダニーは実に清々しいまでの犯罪者で、己の才能に絶対の自信を持ち、スリルを楽しんで生きていて、これが作品の色を決定づける決め手になった。ダニーに「金庫破り」を持ちかけられた芹香のラスティ—が「人殺しだけはやめてくれ」と訴えるように、彼らは人さえ傷つけなければそれはあくまでゲームで罪ではないと思っている。最後に仲間に加える和希そらのライナスを「男にする」のが、ミッションのもうひとつの目的だとダニーは言うが、彼の言う「男にする」は地下鉄で一般庶民の財布を掏るようなケチな真似はせず、もっと大物の犯罪者になれという意味なのがなんとも象徴的だ。この天に恥じない詐欺師っぷりが、宝塚の『オーシャンズ11』を新たな境地に引き上げた。何しろ「天才犯罪者集団」の仕掛けたミッションなのだから、するすると物事が進むのは当たり前。そこにスリルを求めるよりも、宝塚でしかできない贅沢なダンスシーンやイルージョンを楽しみ、更にヒーローが如何にして運命のペアである妻の心を取り戻すか?にときめいて観ることが正解という、実に正しい王道宝塚歌劇の在り方に作品が飛翔していった様が、ダニー同様清々しい。思えば、当然ながら映画版から出発した柚希のダニーや、そこから発展させた蘭寿のダニーに「男にされた」ライナスを星組と花組で共に演じていた真風と芹香が「オーシャンズ11」のセンターにいるのだ。二人の表現の根っこが、映画版のそれではなく、宝塚歌劇100周年の華やぎを担った先人トップスターの背中だったことは間違いなく、この作品が宝塚で重ねた歴史が示した帰結が美しかった。

そんな主人公の天才詐欺師ダニー・オーシャンを演じた真風涼帆 は、前述したように天下に隠れない犯罪者っぷりの伸びやかさで魅了する。元々初演時から少年の未完成の塊であるライナスよりも、新人公演で演じたダニーの方が柄に合っていると思わせた悠揚迫らぬ個性に、トップスターとしての経験と大きさが加わってなんとも魅力的。テスを一途に愛する心根を訴える「愛した日々に偽りはない」の切々とした歌い上げも素晴らしく、この天才詐欺師が服役する羽目に陥ったのも、テスへの愛に心を取られいつになく力が入り過ぎたからだろうと思わせるのがたいしたもの。「FATE CITY」をはじめとしたスーツ姿のダンスも粋にキメて、トップスターとしてますます磨きがかかっている。

そのダニーが心から愛するテス・オーシャンの星風まどかは、テスが歌手であるという宝塚版の設定に歴代で最も説得力があった歌唱力が光る。おそらくもう数年あとに演じた方が、役柄に本人の持ち味がより適ってくるだろうと思うが、その中でも精一杯大人の女性に作った在りようが、テスのある意味の強がりに通じる効果にもなっていて、星風まどかのテスとして成立していたのが喜ばしい。ビジュアルにも様々な工夫を凝らしていて、トップ娘役たる矜持を示していた。

ラスティー・ライアンの芹香斗亜は、今回の宙組バージョンで、2014年の香取慎吾主演版で盟友山本耕史がラスティ—を演じるにあたって膨らませた設定が持ち込まれたことで、更に大役になったダニーの片腕としての役柄を、軽妙洒脱に演じてい進化を感じさせる。香取版で作られた「オーシャンズ10」が初めて宝塚版に登場したことで、二人のバディ感が更に鮮明になったし、花組バージョンで北翔海莉の独壇場になった医師に化けるシーンを、芹香が負けず劣らず大きな見せ場にしていたことが嬉しい。そこからラスティ—に戻った時の極めつけのカッコ良さも堪能でき、遥羽ららが抜群のプロポーションでキュートに演じる恋人ポーラへの、はぐらかしているようで実は本気の愛情もよく示していた。

彼らに立ちふさがるテリー・ベネディクトの桜木みなとは、どうしてテリーがこういう思考の人物になったかが描かれている、実はかなり宝塚らしい敵役であることを納得させる役作り。2幕冒頭のテスの夢の中での白ブラウスの王子様スタイルが、ヘビの拵えよりも遥かに似合っているのが、桜木の二枚目男役としての資質を示している。後半は「11」に翻弄されるが、鼻を明かされた悔しさはもちろん強烈なものの、ベネディクトの損害自体は本人にとってたいしたものではない、というこの作品の軽やかさによくあったベネディクト像だった。

そして、何しろ役柄が多いのがこの作品の最大の魅力のひとつだが、中でもやはりそれぞれが登場時点で大きな見せ場を担っている「11」メンバーに強力な布陣が揃ったことが宙組バージョンを後押ししている。分けても、大変残念ながらこの公演が退団公演となったフランク・カットンの澄輝さやとが、本来の貴公子的な持ち味からひとつ離れた、訳ありのディーラー役で食わせ物感を噴出させたのが退団公演にして新鮮だったし、同じく退団のバシャー・ターの蒼羽りくの明るい持ち味と、ダンス力の双方が活かされて輝いているだけに、惜別の念をより一層深めた。宙組の個性を形成する貴重な人材の二人が、相応の働き場を得て退団公演を飾ることができたのを何よりの餞として多としたい。

また、リヴィングストン・デルの瑠風輝が、思いっきりカリカチュアして作り込んだ役柄で、これまでのベストパフォーマンスと思える成果を見せたのも大収穫だし、 身体能力の高さで役柄を支えたイエンの秋音光、もうこうした役柄は軽々と演じていると思えるルーベン・ティシュコフの凛城きらの巧みさ、バージル・モロイの優希しおん、ターク・モロイの鷹翔千空の男兄弟らしいコミカルな動きと、それぞれが個性を発揮して楽しい。

更に特筆すべきがライナス・コールドウェルの和希そらで、真風、芹香と歴代のライナス経験者と共にいる舞台の中で、役柄の持つ屈折と、如何にも未完成な青年の愛らしさと頼りなさを見事に描き出していて、これは出色。長身の男役揃いの宙組で上背に恵まれていないことが、ライナス役にはむしろ打ってつけですばしっこい動きと共に魅了した。このライナスに「飛べ!」と背中を押すのが宙組の歴史を支え続けてきた寿つかさ演じるソール・ブルームであることも、なんとも言えない妙味を生んでいて、寿自身の一癖も二癖もあるソール像と相まって、大きな見どころになっていた。芹香を中心にした「JUMP!」も人生の応援歌としてミュージカル『オーシャンズ11』の華になっている。

そんな「11」がやはり作品の肝になっている分、歌唱力を買われての起用だったことは重々わかるが、マイクに回った留依蒔世が「11」にいないことが惜しまれるし、留衣を配役するのならばマイクのソロをもっと増やして欲しかったという想いも残るが、マイク役をある意味物足りなく感じさせるのは留衣の力量故で、更なる活躍を期待したい。 3ジュエルズの瀬戸花まり、華妃まいあ、天彩峰里のダイナミックなハーモニーも聞きものだった。

他にもテリーの配下のテーラー美月悠が見せる、誠実でかつ緻密な演技は宙組を観る愉しみのひとつだし、「NEVER GIVE UP!」でも活躍するリカルドの松風輝もますます味わい深さを増していて、テレサの花音舞とポーラの遥羽との家族芝居も楽しい。緑地再生を推進するNPO団体の代表者で、実は…があるウッズ夫妻の美風舞良と星吹彩翔。テリーの配下ベスの愛白もあ、チャールズの星月梨旺、ブルーザーの若翔りつがそれぞれ個性を発揮して作品を深めている。学生時代のテスを演じる夢白あやの美しさはやはり貴重で、ダニーが一目で恋に落ちたことに説得力与えていた。

特に、宝塚の『オーシャンズ11』オリジナルキャラクターである、ショースタークイーン・ダイアナの純矢ちとせは、彼女にしかできないだろうという思い切ったアクの強い演技で場を浚い続け、強烈に目を引き続けた。こうした濃い役柄から、静けさのある役柄、格のある役柄と、なんでもござれのオールマイティの娘役だった純矢の退団は寂しい限りだが、おそらく歴代で最も振り切っていて、かつ良い意味で哀愁のないダイアナの表出は、純矢の有終の美として長く記憶されるだろう。 ハロルドの春瀬央季、エディの実羚淳が振り回されっぱなしの可笑しみも、よく絵になった。

何よりも、小池修一郎が貫いたエンターティメント性が、太田健の名曲揃いのナンバーと共に宝塚歌劇の『オーシャンズ11』に結実したのが嬉しく、今後も再演を重ねて欲しい娯楽大作として作品自体の成長が見えたことが喜ばしい舞台となっている。

また初日を前に通し舞台稽古が行われ、宙組トップコンビ真風涼帆と星風まどかが囲み取材で公演への抱負を語った。

中で、真風が8年前の初演時に新人公演で演じたダニー・オーシャン役に再び挑戦するにあたり、本役の柚希礼音を手本に役柄を創っていった当時をベースに、トップスターとしての立場で新たに役作りを深めていった、とこれまでの経験に基ずく役柄の構築過程を披露。

一方の星風は、テス・オーシャンという大人の部分がある女性像を勉強しつつ、真風のダニーや宙組のキャストと共に創るものを役の中に落としこんでやっていると、宙組版の中のテスを意識していることを感じさせていた。

また宙組版ならではの見どころとして真風が8年前の新人公演から引き続いてのバディとなる芹香斗亜のラスティ—とのバディ感と、新曲「オーシャンズ10」を挙げると、星風も同様に「オーシャンズ10」と、新たにできたフィナーレナンバーの魅力を語るなど、宙組の『オーシャンズ11』にこめた思いが伝わる時間となっていた。

尚、囲み取材の詳細は、舞台写真の別カットと共に9月9日発売の「えんぶ」10月号にも掲載致します!どうぞお楽しみに!

【公演情報】
宝塚宙組公演
ミュージカル 『オーシャンズ11』
脚本・演出◇小池 修一郎
出演◇真風涼帆  星風まとが ほか宙組
●6/14~7/21◎東京宝塚劇場
〈料金〉SS席 12,000円 S席 8,800円 A席 5,500円 B席 3,500円 (全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東京宝塚劇場 03-5251-2001
http://kageki.hankyu.co.jp/

 

【取材・文/橘涼香 撮影/岩村美佳】

 

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