【松永玲子の「今夜もネットショッピング」】汚れ女優
皆様、ご機嫌よう。
ギリシャ悲劇 KUNIO15×KAAT『グリークス』(3本立てで計10時間)は、京都公演を終え、11/21~31、KAAT神奈川芸術劇場での7ステージに突入します。10時間後、俳優達がどうなったかというと、男優陣は疲弊。女優陣は妙なアドレナリンが出て元気。女強し。
(『グリークス』ヘカベ役のヘアメイク。)
チャコット“カラーバリエーション 628.ブラック”。税込1,320円。
第一部ラストの第3幕『トロイアの女たち』と、第二部始まりの第4幕『ヘカベ』は、トロイア戦争の敗戦国であるトロイアの女王ヘカベ(私)ほか、多くの女優が出演します。負けた直後と、そこから奴隷にされた彼女たち。こんな台詞があります。「着ている物は裂けてずたぼろ、身体じゅうべとべとに汚れきっている。」ということで、汚しをかけます。
そこで必需品がコレ。白い舞台セットに照明が当たると、並みの汚しでは、ハレーションで飛んでしまうのですが、このチャコット真っ黒はとても強力。
それまでのシーンで美しくメイクしていた女優たちが、3幕前になると、コレで己をガンガン汚していく様は、潔くてカッコイイ!
ギリシャ悲劇の女たちは男尊女卑の時代の女たちなのですが、負けても負けないのです。汚れ女の出る3幕4幕以降、ラスト10幕までご覧になると、「何をもって[負け]で何をもって[勝ち]なのか??」となるやもしれませぬ。[可哀想な人たちの身の上話]だから[悲劇]なわけではない、悲劇とはなんぞや、なんてことも、10時間続くド派手演出の先に見えてくるやもしれませぬ。
私の演じる女王ヘカベ様は、見た目も中身も行動も、強烈、です。今時の言葉を使うなら、ゴリゴリ、です。ゴリゴリ女王に変身するために、私のメイクはコレ一色で作ります。ので、減りが早い早いっ。
ちなみに、昨年のKERA・MAP『修道女たち』の白塗りメイクでも、皆、アイメイクはコレ使ってました。重宝してます!
【著者プロフィール】
松永玲子(ナイロン100℃)
まつながれいこ〇大阪府出身。94年にナイロン100℃に入団。同劇団の看板女優。 劇団外での外部出演も多く、映像やCMでも活躍。 落語家やエッセイストとしての顔も持つ。
「マツナガ宅」 http://stage-d.com/mr/
KUNIO15「グリークス」
編・英訳◇ジョン・バートン、ケネス・カヴァンダー
演出・美術◇杉原邦生
音楽◇Taichi Kaneko
振付◇白神ももこ
11/21~30◎神奈川芸術劇場 大スタジオ
https://www.kaat.jp/d/greeks
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