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【一十口裏の「妄想危機一髪」】第1回 タコよ、ウニよ、諦めよ。

あんなにニュルニュルしてるのに。
あんなにヌメヌメしてるのに。
ああ、なぜ我々はタコを「タコ」と呼び、イカを「イカ」と呼ぶのだろう。

なんでか知らんが今朝ずっと、そんな事を考えていた。

例えばナマコは、ナマッとしていてコッとした、あの見た目の感じが名前によく表れている。
漢字表記については別として、和名は大抵、その物の感じをよく表している気がする。
うん。気がするだけ。他にいろいろと考察してみたりとか一切してない。
学術的にはどうだとかは、とりあえずどうでも良い。
ともかく、タコとイカにはそれが無い。

タコとイカの姿を思い浮かべ、タコのタコッとした所やイカのイカッとした所を見つけようとしてみても、なかなか実物と名前が重ならない。
ビョロ。ニュジャ。マヌノウ。
代わりのふさわしそうな名前が思い浮かぶだけだ。
絶対、マヌノウの方がいい。
この際、私だけでもマヌノウと呼ぼうかと決断しかけたその時、ふいに思った。

そうだ。焼いてみよう。

タコを焼いてみたならば、タコはまさに、「タコ」になる。
焼いたタコはとてもタコッとしている、
見た目も食感もとてもタコッとしているじゃないか。

肌に出来るタコと焼いたタコのどちらが先かは知らんが、しかしそのイメージはしっかりと重なり合う。
これはなかなか正解っぽい。
本当はどうだとか関係なく、とりあえず凄く正解っぽい。

ではイカはどうか。
イカも焼いたらまあまあ、「イカ」っぽいだろう。
筋とか硬めの弾力感とかがイカッとしているような気がしないでもない。
はい。ではこれ、正解。ということで。

つまり、タコは焼かれて初めて「タコ」となるのだ。

焼かれる前に名はなかった。
あんなにニュルニュルとしたグロテスクでオドロオドロしいものには、名をつけられる価値さえなかった。

海で見つかるも、うわっ、或いは、こわっ、もしくは、きもっ、と言われただけだったろう。
哀れである。
しかし、自由である。

人間に名付けられる前のタコは、人に捕まる心配はなかったろう。
しかも、全身を火で焼かれた上に切り刻まれるという屈辱的な食され方をされずにいたのだ。

それはウニもだ。
あれは明らかに、あのトゲトゲした外見ではなく、身体を無惨に真っ二つにカチ割られた、そのウニッとした中身に、付けられた名だろう。

ウニからしてみれば、屈辱的過ぎる仕打ちである。
立派な殻を纏った本来の自分の姿ではなく、それを容赦なくひん剥かれ、無理やり露にされた姿に名を付けられ、その名で呼ばれ続けるのだ。
これ以上の辱めはない。
俺は「ウニ」なんかじゃないと叫びたいだろう。そう。ウニ、お前はウニなんかじゃない、お前はトゲトゲの、そう、ブリボンだ。
私だけはお前をブリボンと呼ぼう。

本来の自分からかけ離れた名を付けられる。
世間からの勝手な呼び名や便宜上の呼び名を付けられることは、タコやウニに限らず、よくある。

例えば私の本名は苗字は先祖から名は親から付けられたものであり、世間においての呼び名はもう、状況によってどんどん変わり、呼び名は巡る。
私もあなたもタコもウニも、本来の自分が必要とされることなど稀有で、大抵は、世間における名で生きる。
焼かれてこそのタコ、剥かれてこそのウニ、◎◎されてこその自分、そういうもんだ。

それは、タコをタコと呼びウニをウニと呼ぶ世間に生きる以上、仕方のない事だ。仕方のない業だ。
名を付けられたら最後と思え。
そうだ、ごめんなさい、諦めよう。

タコよ、ウニよ、諦めよ。

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なんでか知らんが半日ずっと、そんな事を考えていた。
無駄なことで半日過ぎた。

以上。
誠に恐縮ながら、
そんなこんなの妄想的無駄コラムを、今後も展開していきたいと思っております、
わたくし、げんこつ団の一十口裏と申します。
タコの皆さん、ウニの皆さん、
タコでウニの一十口裏(イトグチ ウラ)を、
どうぞよろしくお願い申し上げます。

あ、ところでタコヤキ。
あれ、なんでわざわざ丸く焼こうとしたのか、
なんでメインの具材をタコに限ろうとしたのか、
ちょっと謎過ぎやしないか?

つづく。

 

 

一十口裏【著者プロフィール】
一十口裏
いとぐちうら○1991年、女子美術短期大学在学中にげんこつ団の名で、自身が脚本・演出を務める公演活動を開始。
意外性に満ちた脚本と痛烈な風刺、容赦ない馬鹿馬鹿しさが特徴。
また活動開始当初より映像をふんだんに盛り込んだ作品を作っており、現在は映像作家としても活動中。

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