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未来を選べない若者が、未来を夢見る切なさを『風博士』間もなく開幕! 林遣都 インタビュー

日本文学へのリスペクトを込めた人気シリーズ「日本文学シアター」。注目の第6弾は、坂口安吾の同名作品をヒントに北村想が書き下ろした新作『風博士』が、11月30日から世田谷パブリックシアターで上演される。(12月28日まで。大阪公演1月8日~13日、森ノ宮ピロティホールにて)

中井貴一、段田安則、吉田羊ら手練れの俳優が名を連ねる中、「日本文学シアター」初挑戦となるのが、俳優の林遣都だ。2016年に『家族の基礎~大道寺家の人々~』で初舞台。以降、コンスタントに舞台出演を重ねている林にとって、舞台に立つことはどんな意味を持っているのだろうか。演劇の世界でも輝きを発揮している若手実力派の声を聞いた「えんぶ12月号」インタビューを別バージョンの写真とともにご紹介する。

かけ離れた役なのでイメージを膨らませながら

──まずは北村想さんの台本を読んでみての感想から伺いたいと思います。

とてもユーモアに溢れた本だなと思いました。昔の話ですし戦争ものなんですけど、ところどころで現代の言葉が入っていたりする。ビジュアル撮影のときにキャストの方々とお話ししたのですが、皆さん「あの台本がどういう舞台になるんだろうね」と仰っていました。重いシーンもありますが、その中で会話が急に別の方向に進んだり、見ている人が飽きない面白さがつまっていると思います。

──モチーフになっている坂口安吾の『風博士』は読みましたか?

読みました。北村さんの書いた台本と違ったものだったので、そこはあまりとらわれずにやろうと考えています。

──林さんは若い兵隊の役を演じます。どんなキャラクターですか?

現代では考えられないような厳しい環境で育ってきた、まだ若い初年兵です。自分で自分の道を選択することもできず、兵隊になるしかなかったという役です。

──自身の境遇について、その少年は悲観しているのか、あるいはポジティブに受け入れているのでしょうか?

すごく物事を冷静に見ているところはある気がします。自分で未来を選べない若者にしかない感性の豊かさがあるというか。戦時下という状況に置かれながらも、「もし自分が違う生き方をしていたら」と、見たこともない未来についてあれこれ想像を募らせています。その姿がすごく切ないなと。自分とはかけ離れたキャラクターなので、イメージを膨らませて臨みたいと思います。

──いつも役に入る準備を大切にされている印象ですが、稽古までの間に、どんなことをしようと考えていますか?

戦争ものに出演した経験がそれほどないので、まずは当時のことを知ることから始めたいと思います。本を読んだり、人から話を聞いたり、できることは全部やって。所作についてもしっかり勉強したいです。

──主演の中井貴一さんとは、以前映画でも共演していますね。

あのときは直接絡むポジションではなかったのですが、中井さんが役をつくり上げていく過程を垣間見ることができたのが印象に残っています。中井さんは台本からは想像できないような膨らませ方をされるんです。それが僕にはすごく驚きで、ずっと現場では中井さんのことを見ていました。今回の稽古でも、中井さんが役をつくっていく過程を間近で見られると思うとうれしいです。

──共演者の中で役柄的に最も絡みが多いのはどなたですか?

趣里さんです。お芝居に対する情熱が溢れている方で、趣里さんのお芝居を見ると、いつも刺激を受けます。すごく小柄なんですけど、お芝居のスイッチが入った瞬間、一気に身体が大きくなるというか。そのたくましさには圧倒されます。趣里さんは舞台経験も豊富ですし、しっかりと同じ位置で向き合って、ふたりでより深いものを生み出せたらと思います。

舞台には新しい出会いと得るものが必ずある

──今年の頭に舞台『熱帯樹』があって、わりと短いスパンで、また今回の舞台となりました。林さんの俳優活動において舞台はどのような位置付けにあるのでしょうか?

舞台はこれからも続けていきたいですし、絶対に続けなければいけないものだと思っています。舞台は、全部が見えてしまう。自分がどれだけイメージを膨らませて、その空間にいれるかを本気で突きつめないと全部バレてしまうんです。まだ舞台は4本だけですが、いつも新しい出会いがあって、必ず得るものがある。4作品すべて自分のものになっている手応えがあります。

──映像作品の場合、撮影のスケジュールは不規則で、毎日いろいろな場所に行くと思います。舞台は稽古期間はだいたい同じ時刻に同じ稽古場に通う。このサイクルの違いが林さんにもたらすものは?

まず、ゆっくり自分を見つめる時間をとれるところがいいと思っています。この仕事でいちばん大変なのは生活リズムがバラバラなことだと感じていたのですが、初めて舞台に出たとき、稽古という時間を経験して、すごく自分の体に合っているなと思いました。映像の現場の場合、どうしても終わるのが遅いことも多く、次の日のことを考えたら寝るだけになることがあります。舞台だと夕方には稽古が終わることがあるので、そこから家に帰って今日やったことをじっくり振り返ることができるんです。おかげで気持ちも充実しますし、そうやって1日のことを反芻する時間がすごく大切で好きなんです。

──稽古に入るときや本番前に必ずするルーティーンなどありますか?

特に決まったものはないですね。というのも、僕は没頭すると肩に力が入ったり周りが見えなくなるタイプだとよく指摘されるので。前回、『熱帯樹』のときに演出の小川絵梨子さんから、「構えなくていい」と言っていただいたんですね。それで、あまり決めごとをつくらないようになりました。

──これまで『熱帯樹』と『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』の2本で小川さんの演出を受けていますね。やはり学んだものは大きいですか?

大きいです。とくに『熱帯樹』では、自分のことに必死になりすぎる癖が抜けなくて悩んでいたのですが、小川さんから「もっと周りを信じて」と声をかけてもらったんです。「共演者を信じて、お客様を信じてください」と何度も励ましていただきました。公演の中盤ぐらいからそこを心がけるようにしたら、見える景色が変わったというか。すごく良い集中で本番に入れるようになりました。

「作品を背負える俳優」という期待に応えたい

──映像の演技と舞台の演技、どんなところに違いを感じていますか?

映像はカメラ割りがありますけど、舞台は常にお客さんから全体を見られている。だから、ちょっとした動きひとつにも意味が生まれてしまうんです。そこが舞台の難しいところだなと感じています。もちろん映像でも自分の見え方は気をつけないといけないのですが、舞台はより理論的に考える力が求められると思っています。気持ちだけでは通用しないところがたくさんあるんです。そういう技術の部分は今後ももっと研究を積んで、自分の引き出しとして増やしていきたいです。

──舞台はずっと続けていきたいとおっしゃっていましたが、これからまた舞台経験を積み重ねた先に辿り着きたい場所があるとしたら、それは何ですか?

続けるにはいろいろな力が必要だと思いますが、そのひとつとして、お客さんに「観たい」と思ってもらえる俳優であることが大事かなと思います。ちゃんと力をつけて、皆さんから求められる俳優になりたいです。そして、これは舞台に限らないのですが、最近周りの方から、「いずれ作品を背負える俳優になってほしい」とありがたいことに言っていただくことが多くなり、その期待には応えたいですし、僕もそこを目指したいと思っています。

──そのために、今、自分に必要なものは何でしょう?

ひとつひとつ積み重ねていくだけだと思います。今すごく地に足がついているというか、自分のやっていることがちゃんと意味のあることにつながっている実感があるんです。これからも焦らず、見栄を張らず、人と向き合い、いろいろなことを吸収しながら、一歩ずつ進んでいきたいです。

はやしけんと○滋賀県出身。2007 年映画『バッテリー』で主演デビュー、同作にて新人賞を多数受賞。近年の出演作に、ドラマ『べっぴんさん』『火花』『おっさんずラブ』『リーガルV』大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』連続テレビ小説『スカーレット』(放映中)、舞台『家族の基礎~大道寺家の人々~』(作・演出:倉持裕)『子供の事情』(作・演出:三谷幸喜)『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』(作:トム・ストッパード 演出:小川絵梨子)『熱帯樹』(作:三島由紀夫 演出:小川絵梨子)などがある。

【公演情報】
シス・カンパニー公演
日本文学シアターVol.6【坂口安吾】
『風博士』
作◇北村想
演出◇寺十吾
音楽◇坂本弘道
出演◇中井貴一 段田安則 吉田羊 趣里 林遣都
松澤一之 内藤裕志 大久保祥太郎 渡辺えり
●2019/11/30~12/28◎世田谷パブリックシアター
〈お問い合わせ〉シス・カンパニー 03-5423-5906(平日11:00~19:00)
●2020/1/8~13◎森ノ宮ピロティホール
〈お問い合わせ〉キョードーインフォメーション0570-200-888(全日10:00~18:00)
http://www.siscompany.com/kazehakase/

 

【構成・文◇横川良明 撮影◇岩田えり】

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