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閉塞感に満ちた世界を照らす小さなラブ・ストーリー『アーリントン』上演中! 

KAAT神奈川芸術劇場で芸術監督の白井晃が演出する『アーリントン』〔ラブ・ストーリー〕が上演中だ。(31日まで)

この舞台は2018年春に草彅剛の主演で上演し、大きな話題を呼んだ『バリーターク』の作者、エンダ・ウォルシュが2016年7月に発表した作品で、当初は2020年4月に上演を予定していたが、新型コロナウィルス感染拡大の「緊急事態宣言」により、公演中止となり、改めて今回の上演が実現した。

時も所もわからない、ある待合室のなか。そこで自分の名前が呼ばれるのを待つ若い女アイーラと、隣の部屋でモニター越しにアイーラを見ている“若い男”。管理社会の恐怖と、そこに生まれた小さなラブ・ストーリーが描かれる。

【ストーリー】
高いビルのなかにある、待合室。
若い女“アイーラ”はそこでずっと、自分の番号が呼ばれるのを待っている。
隣の部屋では“若い男”がモニター越しにアイーラを見ている。
彼はきょうはじめてそこへ仕事にやって来た。
壁をへだてて、ふたりの心が静かにゆれる。
やがてアイーラは自分の運命を知る。
そして彼女の番号がきたとき、男はとほうもない決断をする。
それは…。

アイーラを演じているのは南沢奈央。閉じ込められた一室で、自分の運命を予測しながらも限られた一瞬一瞬にまっすぐに向き合う若いアイーラの命の輝きを見せてくれる。

“若い男”を演じるのは平埜生成。モニター越しに出会ったアイーラに次第に魅せられていく青年の揺らぎと、若さの持つ勁さをナイーブな感性で表現する。

劇中の1場面がダンサーで振付家の入手杏奈によって踊られるのだが、その動きは絶望に満ち、嘆きの声が聞こえてくるような壮絶な表現となっている。

また、声の出演として、川平慈英、霧矢大夢、那須佐代子、伊達暁が参加していて、この物語の背景となる社会の不気味さを増幅する。

3年前に『バリーターク』を上演して、エンダ・ウォルシュの不条理かつ摩訶不思議な世界に魅せられ、彼の作品の虜になったという白井晃は、今回の作品についてこう語っている。
「『アーリントン』の舞台となる密室の中には今という世界があります。孤立主義、全体主義の風潮が蔓延する中、人々は異質なものを排除しようとする。監視者と被監視者のいる部屋の存在は、あたかもこの間大きく変化してしまった世界を予見したかのようです。そして、そんな世界に生まれた小さなラブストーリーにこの上ない愛おしさを覚えるのです」

その言葉のように世界がパンデミックの恐怖に脅える今、この『アーリントン』で描かれる閉塞感や、逃げ場のない状況が、そのまま現実感を伴って迫ってくる。だが同時に、その中で出会ったアイーラと“若い男”の物語は、人が愛に出会うことで、絶望の中でも救われる魂があることを伝えてくる。

2人が見つけた〔ラブ・ストーリー〕は、この暗さの中でも消えない一筋の光であり、やがては世界そのものを照らす大きな光になるにちがいない。そんな祈りにも似た愛が心に残る物語である。

【公演情報】
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース
『アーリントン』〔ラブ・ストーリー〕
作:エンダ・ウォルシュ
翻訳:小宮山智津子
演出:白井晃
出演:南沢奈央 平埜生成 入手杏奈
声の出演:霧矢大夢 川平慈英 那須佐代子 伊達暁

●1/16~31◎KAAT神奈川芸術劇場<大スタジオ>
〈料金〉一般 6,000円  U24( 24歳以下)3,000円 高校生以下割引1,000円 シルバー割引 (満65歳以上)5,500円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
※U24、高校生以下、シルバー割引はチケットかながわの電話・窓口・WEBにて取扱い(前売のみ、枚数限定、要証明書)
〈上演時間〉2時間(休憩なし)
〈お問い合わせ〉チケットかながわ 0570–015 -415(10:00~18:00) https://www.kaat.jp
〈公式サイト〉https://www.kaat.jp/d/arlington2021

 

【文/榊原和子 舞台撮影/岡千里】

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