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新作ミュージカルいよいよ開幕!『怪人と探偵』フォトコール&初日会見レポート!

日本に探偵小説の歴史を拓いた江戸川乱歩が生み出した、大怪盗・怪人二十面相と名探偵・明智小五郎。この日本文学史上に燦然と輝く好敵手同志が華麗な対決を繰り広げる新作ミュージカル『怪人と探偵』が、9月14日KAAT神奈川芸術劇場で初日の幕を開けた(29日まで)

新作ミュージカル『怪人と探偵』は、日本を代表する作詞家であり、ミュージカル界でも顕著な活躍を示している森雪之丞が作・作詞・楽曲プロデュースを手掛け、その優れた演出力で常に高い評価を集め続ける白井晃が演出するオリジナルミュージカル。音楽にWEAVERの杉本雄治、テーマ曲に東京スカパラダイスオーケストラ、大怪盗・怪人二十面相に中川晃教、名探偵・明智小五郎に加藤和樹、二人の関係を変えていく存在となる元子爵令嬢リリカに大原櫻子他、魅力的で個性的なキャストが揃い、江戸川乱歩独特のミステリアスな世界を、極上のエンターテインメントに仕上げている。

そんな作品のフォトコールと初日会見が、14日KAAT神奈川芸術劇場で行われ、二つの場面の公開と、キャスト・スタッフが意気込みを語る会見により、作品がいよいよ公になった。

【フォトコール】

まず公開されたのは、第一幕冒頭のシーンから20分間ほどの場面。大東亜博物館の舞台中央にはガラスケースに入ったチベットの秘宝「シャングリラの雫」が飾られている。この秘宝を頂戴するという怪人二十面相(中川晃教)からの犯行予告に、警視庁捜査一課の中村警部(六角精児)、明智探偵団団長小林芳雄(水田航生)ら大勢が「怪人の襲来」を歌いながら厳重な警備に当たっている。個性溢れる六角の動きに独特の味わいがあり、キリリとシャープなな水田の動きとの対比が鮮やかで惹きつけられるオープニングだ。

いよいよ犯行予告時間を過ぎたが「シャングリラの雫」は無事だった!と喜ぶ中村警部たちの面前で、突如秘宝が消えた!?あわてふためく一同の前に、意表をついて明智小五郎(加藤和樹)が登場。怪人二十面相の仕掛けたトリックを看破すると、姿を現した二十面相は明智の頭脳の冴えが衰えていないことを喜び、再会を期して逃亡を図る。中川晃教の自由さが大胆不敵な二十面相に映え、加藤和樹のこれぞ明智小五郎の際立つスマートさとの対比が早くもゾクゾク感をかき立てる。

逃げる者と追う者入り乱れての格闘が、東京スカパラダイスオーケストラの音楽に乗せて、ある時は戯画的に、またある時はかなり本気のアクションで描かれる中、永遠のライバルの怪人二十面相と明智小五郎が絵のように決まると、舞台は昭和三十年代の街並みに。元子爵家の令嬢北小路リリカの大原櫻子が登場して「東京ランデブー」を歌う。どこか夢見がちなヒロイン像が、大原の愛らしさにピッタリで、続く展開は?と思わせたところで、公開場面は一区切りに。

転換があっての二つ目の公開場面は、風荒ぶ鉄塔の上に居並ぶ怪人二十面相と、ネコ夫人(高橋由美子)をはじめとした、二十面相の手下たちの会話に。さまざまな美しいものを手に入れてきた二十面相が「最近、一番綺麗なモノを手に入れていなかったことに気づいた」と告白して「世界で一番綺麗な宝石」を歌う。中川の豊かな歌声がここではどこかノスタルジックで、中川晃教という稀有な才能がミュージカル界に颯爽と現れた『モーツァルト!』で、姉弟役を演じていた高橋との邂逅も興趣をかき立てる。

そんな二つの場面で、この新作ミュージカルのテイストや目指すものが立ち上がり、続きを観たい!という想いが膨らんだところで、舞台は初日会見の場に。作・作詞・楽曲プロデュースの森雪之丞、演出の白井晃、怪人二十面相役の中川晃教、明智小五郎役の加藤和樹、北小路リリカ役の大原櫻子、中村警部役の六角精児、ネコ夫人役の高橋由美子が揃って、公演への意気込みを語った。

【初日会見】

 森雪之丞です。お忙しい中今日はありがとうございます。構想5年、そして色々な事情があったのですが音楽に1年半をかけて今日の日が迎えられました。音楽ひとつとってもこれだけ時間をかけて創られたものはないと思いますし、ミュージカルブームですけれども、日本のオリジナルミュージカルは少ないと思います。実際ゼロから今日に至るまで色々なことを経ていて、オリジナルミュージカルを創ることは大変ですが、日本語の美しさであったり、日本語の歌詞だから歌える歌を目指して、乱歩さんの力をお借りして『怪人と探偵』というこの作品を創ることができました。素晴らしいキャスト、スタッフ陣の力で今日を迎えております。今少しの場面をご覧頂きましたけれども、きっと続きを観たいなと皆様に思って頂けているのではないかと思います。是非お時間ありましたら全編を観て頂けたらと思います。どうぞこれからも『怪人と探偵』そして日本のミュージカルをよろしくお願い致します。

白井 本日はどうもありがとうございます。KAAT神奈川芸術劇場の芸術監督をしておりまして、5年前に森雪之丞さんから「怪人二十面相をテーマにしたミュージカルを創ってみたい」というお話を伺い、それは面白そうだと思いましたので、この劇場で初演させて頂くことを本当に嬉しく思っております。昭和の少年少女たちが心を躍らせた悪漢と言いますか、昭和の日本が生んだダークヒーローを、これまでなぜミュージカルにしてこなかったのかな?と不思議に思うくらい面白い題材を頂いて、5年間の時間をかけてやっと今日初日を迎えることができます。明智小五郎、そして怪人二十面相という永遠のライバルが奪い合うのが、この作品では世界の財宝を超えたものだ、というのがひとつのテーマになっていまして、それが今真ん中にいるリリカの櫻子さんだったりする、それが本作のとても面白いところだと思っております。先ほど雪之丞さんがお話になったように日本のオリジナルミュージカルというのはなかなか成立しにくい部分もあるのですが、今回頑張って皆の力で創っていて、非常に面白いものになっているのではないかと自負しております。どうぞよろしくお願い致します。

中川 皆さんありがとうございます。中川晃教です。怪人二十面相という役の話を雪之丞さんから伺った折に「色々な顔を持つ役を演じることができるんだ!」とまず興奮しました。そしてできあがってくる音楽、白井晃さんの演出と、一つひとつのピースがハマっていって、今日この初日を迎えるまでにしっかりと形になった。ここまで俳優としても個人としても携わることができた、この経験はこれまで僕が色々と経てきたミュージカルの中でも、なかなか味わうことのできないものだったとすごく思っています。新作のオリジナルミュージカルですから、本当に色々なことが毎日現場でおこっています。でも、あぁ白井さんの世界だ、雪之丞さんの世界だ、そして個性あふれる俳優たちの力がちゃんと実ってこの作品ができあがっている、あぁ観に来てよかった!とお客様に思って頂けることを目指して創ってきました。それがひとつのゴールであり、スタートであると信じて今日の初日の舞台に立ちたいと思っています。どうぞ皆様KAAT神奈川芸術劇場の舞台からはじまりますこの日本発のオリジナルミュージカルを、応援よろしくお願いします!

加藤 明智小五郎を演じます加藤和樹です。長い時間をかけて創り上げられた『怪人と探偵』の世界に、僕たちが乗っかって、みんなで気持ちを一つに、初日を迎えられるまで稽古を重ねてまいりました。その中で白井さんの指揮のもと、明智のイメージというのは本当にスマートで完璧な人だったのですが、そこに今回は「愛」というものがあって、人間の感情をすごく感じております。それは憎しみ、怒り、嫉妬であったり、怪人二十面相も明智小五郎も人間なんだという、人間ドラマのようなものがこの作品には、ただのエンターテインメントだけではなくきちんと描かれているのが見どころのひとつでもあると思います。そして個人的にはアッキーさん(中川)と2回目の共演ということで。またこうして、ライバルというか、相対する役を演じさせて頂くことが非常に光栄で、対峙する度ににやけてしまうというか(笑)、気持ちが高揚します。その他にもこの個性豊かなキャストが舞台上で様々な表情を見せるので、この『怪人と探偵』是非よろしくお願いします。

大原 リリカ役をさせて頂きます大原櫻子です。新作ミュージカルということで、オリジナルミュージカルってこんなに大変なんだなという実感があるのですが、白井さんをはじめスタッフの方々がすごくご苦労されている姿を感じつつ、こうやって初日を迎えられるのをとても嬉しく思います。オリジナルということで、今日初日ですが、千秋楽に向けてもどんどん変わっていくのではないかと思います。実際にお客様が入って演じることで、もっとこうしたら良いんじゃないか?ということも出てくるのかなと思います。ですから観に来てくださるお客様には、1回と言わず何回でも観に来て頂けたら、きっとこんなに変化のあるミュージカルはないんじゃないかな?と、今、私は思っています。是非たくさん観に来て頂きたいです。

六角 どうも。中村警部役の六角です。初ミュージカルということで、普通の芝居よりスポーツに近い感じがします。たくさん皆さんご出演されているので、僕もその中に少し混ぜてもらっているような形で、こんなに体を動かすのは久しぶりだなという実感があります。考えてみたら、僕は57歳なんですけれど、昔うちの親父の頃は55歳で定年だった訳で、定年を迎えた奴が舞台上で踊ったり、歌ったりするっていうのは、令和の時代ならではのことなんでしょうね。もちろん市村さん(市村正親)とかすごい方はやっていらっしゃいますので、まぁ年の問題ではないと思うんですけど、自分自身は、精神的にも肉体的にも喝を入れられたような気持ちです。今回最年長になるんですが、みなさんとやっていると、やっぱり気持ちが新鮮になるのが僕の中で一番実感できたことですね。エネルギーのやりとりをもちろん舞台上でするんですけど、今日お客さんがここに入ってどんな感じに変わるのか。僕は本当に初めてなので、それを舞台上から感じることができるというのに、本当にワクワクしています。これから最終日に向かって、KAAT、兵庫の舞台、色々な形でその日その日に花咲く場面も多いんじゃないかなと思います。ですから一度観に来た人が、次観に来たら、全然違う印象の作品になっているかと思いますので、是非この辺も楽しみに観に来て頂きたいと思います。最後に、僕は子供の頃、少年探偵シリーズ「怪人二十面相」がとても好きで読んでいたんですけれども、こんな形で舞台に立つことができてとても幸せです。本日はありがとうございます。

高橋 完全なる個性的なコスチュームの高橋です(笑)。今回インパクトのある役を与えてくださったことにとても感謝しています。カンパニー自体もですけれど、スタッフさん、陰で支えてくれている方々、皆で一丸となって、この作品を創り上げました。今日スタートですけれども、毎回フレッシュな気持ちで頑張らせて頂きたいなと思います。六角さんも話されましたが、私もこんなに走る舞台は劇団☆新感線以来です(笑)。なのでいい感じでこのボディーラインがキープされればなと思います。そんなことはどうでもよくて(笑)、とても面白い作品、お子様が観ても面白い作品だと思いますので、ぜひお子様がいらっしゃる方はお子様もお連れになってご覧頂けたらなと思います。本日はありがとうございました。よろしくお願い致します。

──では最後に、皆様を代表して中川さんからお客様へのメッセージをお願いします。
中川 (挨拶で)全て出し尽くしてしまいました(笑)。江戸川乱歩の世界を、日本人なら誰もが知っているであろう原作をもとに、この強力なスタッフの皆様と、私たち全員で創って参りました。本当にドキドキしています。僕は東京文化会館小ホールでコンサートをやらせて頂いたときに、写真撮ったんですよ。そうしたら客席にスモークみたいなものがあって、怖い話しじゃないんですけど(笑)でも劇場の客席には必ず誰かが座っているんだと思ったことがあるんです!
白井 昔、大阪の近鉄小劇場というところで、夜中に警備員さんが扉を開けたら満員だったという話もありますね。
 この舞台には幽霊は出てこないから!(笑)


中川 はい(笑)僕は色んな様々な仮面をかぶって、二十面相を演じていくわけです。仮面ってもしかしたらですけれども、人間にとっては憧れ、例えば自分というものを否定したくなったり、本当はこうなりたいなという思いが、もしかすると仮面という形になって自分の中に出てくるのかなと思ったりもします。きっと観に来てくださるお客様それぞれの仮面といったものが、この物語から感化されたり、インスパイアされたりする。二十面相と明智小五郎とのバーサス、「愛」という形があるようでないもの、でも確かなもの、そういった一つひとつのキーワードが、KAATという劇場いっぱいにキラキラと、ギラギラと届くように最後まで頑張っていきたいと思っております。さっき言った目に見えないものというのは決して怖いもの、幽霊ではなくて、神様です。舞台の神様、そしてエネルギーを持って、この舞台を最後まで務めあげられるように精進してまいります。どうぞ皆様応援よろしくお願いします!本日は本当にありがとうございました!

期待の膨らむフォトコールと初日会見はここで終了。開幕が待たれる時間となっていた。尚大好評につき兵庫公演は既にソールドアウトの盛況だが、KAAT神奈川芸術劇場公演には当日券が各日程確保されているので、この公演は気になる!という方は、是非KAAT神奈川芸術劇場に足を運んで欲しい。

【公演情報】
新作ミュージカル『怪人と探偵』
原作◇江戸川乱歩
作・作詞・楽曲プロデュース◇森雪之丞
テーマ音楽◇東京スカパラダイスオーケストラ
作曲◇杉本雄治(WEAVER)
音楽監督◇島健
演出◇白井晃
出演◇中川晃教 加藤和樹 大原櫻子
水田航生 フランク莉奈 今拓哉 樹里咲穂  高橋由美子 六角精児 ほか
●9/14~29◎KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉
〈料金〉S席12,000円 A席8,000円
〈お問い合わせ〉パルコステージ 03-3477-5858(月~土11時~19時、日・祝11時~15時)
〈公式ホームページ〉 https://stage.parco.jp/web/play/kaijintotantei/
●10/3~6◎兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
〈料金〉12,000円
〈お問い合わせ〉芸術文化センターチケットオフィス 0798-68-0255(10時~17時、月曜休み・祝日の場合翌日)

 

【取材・文・撮影/橘涼香】

 

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