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ユニット公演第二弾『神の子』まもなく開幕!田中哲司・大森南朋・赤堀雅秋インタビュー

田中哲司、大森南朋、赤堀雅秋による演劇ユニット公演の第二弾、コムレイドプロデュース『神の子』が、12月15日に本多劇場で幕を開ける。(30日まで。のち全国公演あり)

今から5年以上前、田中が光石研と舞台をやりたい、誰と何をやったら面白いか、そんな発想から企画はスタート。かねてから親交を深めてきた田中、大森、赤堀が、しがらみにとらわれず、俳優たちが真摯に物作りをできる場所を求めて一致団結。キャスティングも俳優同士で声を掛け合い、2016年2月に光石研主演、麻生久美子など豪華な顔合せで、舞台『同じ夢』の上演が実現した。今回の第二弾『神の子』はそこから約4年ぶりのユニット公演となる。

──世田谷の狭い道をフェラーリが走る。自転車の老人が「うるせぇな」と呟きアスファルトに唾を吐く。駅前のロータリーで無職の中年男がすれ違った会社員を傘で刺す。すれ違った際に会社員のカバンがぶつかったと言う。2千万円の腕時計をチラつかせながら芸能人が田舎の老婆に涙を流す。政治家がツイッターで独り言を呟き、女子高生は爪を見る。冷房の効き過ぎる喫茶店でヤクザが少年ジャンプを熟読し、5歳の子供が汗だくで歩道を走る。「冗談じゃねぇよ」と何度も呟きながら子供が走る。風俗嬢が引退を決意し、高校教師が下着を盗む。警察官は証拠の下着をブルーシートに丁寧に並べ、冷房の効き過ぎる喫茶店でヤクザがカフェラテを飲む。小惑星が地球に接近。皆、等しく神の子──

赤堀曰く、「ヤクザだろうが、子供だろうが、警察だろうが、老人だろうが、女子高生だろうが、みな等しく“神の子”」である」という意味からタイトルを付けた本作について、田中哲司、大森南朋、赤堀雅秋の3人に話してもらった。

赤堀雅秋・大森南朋・田中哲司

ゼロから一緒にやってくれる健全な関係のユニット

──約4年ぶりのユニット復活について、今どんな思いを持っていますか?

赤堀 ユニットをやっているという意識はあまりなくて、でも、前回『同じ夢』というのをシアタートラムで上演していたときから、このお二方と「またやりたいね」という話は出ていたんです。ただ、具体的にどうやるかということは話してなかった。それでぼちぼちやるかみたいな話になったのが、たまたま今回だったということですね。ですからユニット復活!みたいな大げさな気持ちはないんです。

田中 だいたいユニット名もないからね(笑)。

赤堀 そう。だからとりあえず僕の所属事務所のプロデュースと銘打って。でも一般の人は「コムレイド?何?」って感じだと思いますけどね(笑)。

──今回の具体的な話は何時頃から?

大森 前回の舞台の本番中から話は出ていたんです。だいたい呑んでて最後まで残るのがこの3人で。話してるうちに次もやりたいねとなりまして。そこから具体的に動き出したのは3年ぐらい前でした。

赤堀 全然計画的じゃないゆるい感じで。といっても僕自身すごく楽しみで、これがあるからここ数年生きてきた、みたいなところがあって(笑)。本当に素直に楽しみなんです。

──赤堀さんは色々なプロデュース公演に脚本や演出、俳優で参加していますが、このユニットへの思いは特別なのですか?

赤堀 ある意味、なんのしがらみもない関係だからいいというか、まだ台本もプロットもない状況で、まずお二方が出てくださることになって、さらに長澤まさみさんをはじめ名だたる俳優の方たちが参加してくれて、みんながゼロの状態から一緒にやってくれる。そういう健全な関係で、よけいなことに気を遣わないで、いわば劇団のようになんでも好きなものを書きなよと言ってくれる。それが作り手としてはすごくうれしいんです。

──田中さんや大森さんにとっても、前作が手応があったということですか?

大森 僕はただの一俳優として出ていただけなので、お客さんのリアクションとか手応えとかよく分からなかったんですが、ただ毎日楽しかった。作品もですがそこに乗れている自分が楽しかったですし、大先輩の哲さん(田中)と一緒に演じている、そういうところに毎日行けているのが楽しいですし、懐かしいといいますか。岩松了さんの芝居に出ていた頃に戻ったような、楽しさがありました。

田中 僕も楽しかったです。むしろ「楽しい」しかなかった。

──赤堀作品は内容的にはエグイものも多くて、『同じ夢』も刺さるところの多い作品でしたが、それでも楽しかった?

田中 はい。楽しかった。思い出したんですけど、歌うたうシーンで笑っちゃって。

大森 だれか間違えたんですよね。

田中 僕はこらえてたんですけど赤堀くんが笑い出して。お客さんもそれを観て楽しそうにしてて。そんな楽しかった記憶しかないです。

赤堀 多分、余計なストレスがないからだと思うんです。物を作るってことに純粋で、そのために集って没頭できるという現場が楽しいんだろうなと。もちろん作っていく途中では、いろいろ問題も出てきますけど、この二人がまずそういう人たちではないので、そういう意味では純粋にモノ作りが楽しい現場なんです。

「赤堀くんの舞台興味ある?」とメールで長澤さんに

──前回の稽古場の雰囲気はいかがでした?

赤堀 僕はどんな現場でも変わらずに粛々とやろうと思っていて、皆さんも、そうやっていたと思います。

大森 単純にお客さんに良いものを見せて、楽しいと言ってほしいだけなので。重い内容でも、作品に誠実に向き合って、「こうかもしれない」「こうしてみようか」とか、そういうことを粛々とやっていたから。

田中 楽しいしか言わなくて申し訳ないけど(笑)、楽しい稽古場でした。1点だけ、赤堀くんの世界観を大切にするという、そこさえ持っていれば役から外れることをやってもいいし。もし違ってたら、赤堀くんが「そういうのは必要ないですよ」って、優しく叱ってくれるので(笑)。

──ヒロイン役として、今回は長澤まさみさんが出演しますね。

赤堀 女優さんは出したいねと3人で話していたのですが、じゃあ、誰にしようとなったときに、満場一致で長澤さんになったんです。

大森 なんか中年の男が3人集まっていると救いがないので(笑)、誰かいないかなと思ったときに、パッと出てきたのが長澤さんで。

田中 とりあえず、聞いてみようってことになったけど、どう連絡するのかとなったとき、大森くんが知り合いだからって、メールで「興味ある?」って聞いてくれたんです。

大森 「最近、元気?」とか、ちょっと先輩っぽい前振りをしてから(笑)、「赤堀くんの舞台興味ある?」って聞いたら、興味あると言ってくれまして。

バカみたいなタイトルを考えていたら浮かんだ『神の子』

──今、脚本を書いているところだと思いますが(※取材は9月末)、作品のイメージは?

赤堀 漠然とですが、底辺の人たちがうごめいている雰囲気にしたいなと。それが今の世の中の空気感というか、そういう雰囲気が漂っている中で、その人たちがうごめかざるを得ないという、悲しみというか無常感になればいいなと思っています。

──お二人にとって赤堀さんの作品はどんなところが魅力ですか。

大森 同世代なので、生きてきた時代背景や、その中で感じてきたちょっとした絶望感みたいなものをえぐって書き続けてくれている。僕もなんとなく生き続けてきましたが、赤堀くんの世界に乗ったとき、そういうものをひけらかせることができますし、観ていてもそれを感じとれる。そういうやばいものの表現を観てるのが好きなんです。

田中 赤堀くんにしか書けないせりふが満載で、自分がそれをしゃべりたいっていう欲求があるので、台本をもらって覚えるのもスッと入ってくる。だからよけい楽しいんだと思うんですけど。彼の世界観が大好きです。

──赤堀さんからみて、田中さん、大森さんの俳優としての魅力は?

赤堀 人間の生々しさ、上っ面でない生々しさを晒してくれることですね。今どんなに人気者になっていたとしても、そこをモチベーションにして役者をやり続けている。そこが魅力的です。今回出てくれる方みんなそうだと思いますが、一番ダサい顔や人に見られたくない表情とか、そういう恥ずかしい顔って、カメラの前やお客さんの前ではなかなかできないものなんです。ちょっとコーティングしてコミカルに演じてみたりするけど、本当にダサい顔をしてくれる人ってなかなかいない。でもこの2人はそれをちゃんとやろうとしてくれる。もちろん、俳優にはいろいろな芝居の仕方があっていいし、いろいろな作品があってしかるべきですが、僕はダサい顔を見せてくれるのが好きなんです。

──最後に、タイトルの「神の子」ですが、どこからインスパイアされたのですか。

赤堀 バカみたいなタイトルを付けたいなと思って、「UFO襲来」とか「なんとか大作戦」みたいなものを考えていたんですが、そのときに「神の子」というのが浮かんで、バカっぽくていいなと。

──田中さんと大森さんは、タイトルを聞いてどんな印象がありましたか。

大森 なかなか大きく出たなと(笑)。赤堀くんらしい面白味やばかばかしさも感じますし、でも、名作っぽい印象もあります。

田中 僕は総合格闘家の山本KIDさんのことかと(笑)。いや、ちゃんと聞いたら「誰でもみんな祝福されて生まれてきた赤ちゃん、神の子だった」という意味だそうで。どんな内容にでも繋がっていくタイトルで、いいなと思いました。日常でちょっと腹立つなと思うとき、冷静になるために「この人も最初は赤ちゃんでよしよしってされて世の中に迎えいれてもらったんだよな」と思うようにしてるんです。そういうタイトルだなと。

赤堀 まさにそういうことですね。

赤堀雅秋・大森南朋・田中哲司

たなかてつし○1966年生まれ、三重県出身2005年に『城』で主演。2015年に『RED レッド』で第50回紀伊国屋演劇賞個人賞を受賞。近年の主な出演作に、【舞台】リーディングドラマ『シスター』『サメと泳ぐ』『ハングマン』(18)、『ザ・空気』(17)、『浮標(ぶい)』(11・12・16)、【映画】『新聞記者』『デイアンドナイト』(19)、『人魚の眠る家』『十年 Ten Years Japan』『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』『生きてるだけで、愛』(18)、【ドラマ】『やすらぎの刻~道~』(19・EX)、『あなたの番です-反撃篇-』(19・NTV)、『まんぷく』(19・NHK)、「『緊急取調室』シリーズ(19・17・14・EX)、など。20年2月に映画『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』、21年に映画『シン・ウルトラマン』が公開予定。

おおもりなお○1972年生まれ、東京都出身。1996年のCM出演をきかっけに本格的に役者としての活動を開始。01年に『殺し屋1』で映画初主演を務め、以降はテレビドラマ、映画、舞台、CMに多数出演。10年には日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。また17年には映画『アウトサイダー』でハリウッド映画デビューを果たし、NETFLIXで全世界向けに配信。さらにはロックバンド月に吠える。のフロントマンを務めるなど、活躍の幅は広い。近年の主な出演作に、【舞台】『市ヶ尾の坂』(18)、『不道徳教室』(13)、【映画】『初恋』(2020年公開予定)、『この道』(19)、『鈴木家の嘘』(18)、『アウトレイジ 最終章』『ビジランテ』(17)、【ドラマ】『サイン-法医学者 柚木貴志の事件-』(19・EX)、『居酒屋ふじ』(17・TX)、『コウノドリ1・2』(15,17・TBS)など。

あかほりまさあき○1971年生まれ、千葉県出身。劇作家、脚本家、演出家、俳優。1996年SHAMPOO HATを旗揚げ、99年THE SHAMPOO HATに改名。作・演出・俳優の三役をこなす。人間の機微を丁寧に紡ぎ、市井の人々を描くその独特な世界観は赤堀ワールドと称され、多くの支持を集めている。第57回岸田國士戯曲賞を『一丁目ぞめき』(上演台本)にて受賞。初監督作品『その夜の侍』(12年)では同年の新藤兼人賞金賞、ヨコハマ映画祭・森田芳光メモリアル新人監督賞を受賞。モントリオール世界映画祭(ファースト・フィルム・ワールドコンペティション部門)、ロンドン映画祭(ファースト・フィーチャー・コンペティション部門)、台北金馬奨映画祭などに正式出品され、各方面で話題になり、16年監督第2作目『葛城事件』では主演の三浦友和を数々の映画賞へと導いた。近年の主な作品に、【舞台】『美しく青く』『女殺油地獄』(19/作・演出・出演)、『睾丸』(18/出演)、『流山ブルーバード』『鳥の名前』『世界』(17/作・演出・出演)、【映画】『彼女がその名を知らない鳥たち』(17/出演)、【ドラマ】『60-誤認対策室-』(18・WOWOW/出演)、『監獄のお姫さま』(17・TBS/出演)など。

【公演情報】
コムレイドプロデュース
『神の子』
作・演出◇赤堀雅秋
出演◇大森南朋 長澤まさみ でんでん 江口のりこ 石橋静河
永岡佑 川畑和雄 飯田あさと 赤堀雅秋 田中哲司
●12/15~30◎本多劇場
〈料金〉8,500円 U-25 4,000円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈お問い合わせ〉プラグマックス&エンタテインメント 03-6276-8443(平日11:00~17:00)
●2020/1/7~9◎名古屋 ウインクあいち
〈料金〉8,800円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈お問い合わせ〉中京テレビ事業 052-588-4477320-9933[平日10:00~17:00]
●2020/1/13◎福岡 福岡国際会議場メインホール
〈料金〉8,800円 学生券 5,000円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈お問い合わせ〉スリーオクロック 092-732-1688[平日10:00~18:30]
●2020/1/16◎広島 JMSアステールプラザ 大ホール
〈料金〉8,800円 U-25 5,000円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈お問い合わせ〉TSS事業部 082-253-1010[平日10:00~18:00]
●2020/1/18・19◎大阪 サンケイホールブリーゼ
〈料金〉8,500円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈お問い合わせ〉ブリーゼチケットセンタ- 06-6341-8888
●2020/1/23◎長野 サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター)大ホール
〈料金〉8,500円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈お問い合わせ〉NBS長野放送 事業部 026-227-3000[平日10:00~17:00]
●2020/1/25・26日◎静岡 浜松市浜北文化センター 大ホール
〈料金〉8,800円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈お問い合わせ〉テレビ静岡事業部 054-261-7011[平日9:30~17:30]
〈公式サイト〉https://www.comrade.jpn.com/kaminoko/
〈公式Twitter〉https://twitter.com/comrade5

 

【取材・文/榊原和子 撮影/岩田えり】

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